○鑑定コラム
フレーム表示されていない場合はこちらへ
トップページ
田原都市鑑定の最新の鑑定コラムへはトップページへ
前のページへ
次のページへ
鑑定コラム全目次へ
ヤマハ株式会社は、リゾート事業の6施設のうち4施設を売却した。(同社HPプレスリリース 2007年3月23日)
売却する4施設は、
キロロ 北海道余市郡赤井川村
鳥羽国際ホテル 三重県鳥羽市
合歓の郷 三重県志摩市
はいむるぶし 沖縄県八重山郡竹富町
である。
購入者は三井不動産である。
売却価格は、同HPによれば、不動産譲渡価格28.7億円、子会社株式譲渡価格5.2億円、子会社債権6.6億円で合計40.5億円である。
各施設の平成18年3月期の売上高は同HPによれば、
キロロ 47.03億円
鳥羽国際ホテル 27.07億円
合歓の郷 31.04億円
はいむるぶし 19.45億円
合計 124.59億円
である。
ヤマハ株式会社は、楽器部門を中心にして、大半を売却するリゾート事業を含むレクリエーション部門、AV-IT、電子機器・金属、リビング、その他の6事業部門を持つ。
2007年3月期の売上高は、5503億円であり、営業利益は276億円である。
営業利益率は、
276億円÷5503億円≒0.050
5.0%である。
この6事業部門のうちレクリエーション部門のみが赤字である。
赤字の金食い虫のリゾート事業の大半を手放す経営方針にしたのである。
売上高124.59億円の事業部門会社を、40.5億円で売却するのである。
売上高に対する売買価格の割合は、
40.5億円÷124.59億円≒0.33
0.33である。即ち売上高の1/3が売買価格ということになる。
売買価格は安いのでは無いのかと思われる人がいるかと思われるが、かなりの赤字事業であり、40.5億円で売却出来るのであれば、売主は「吉」と考えるべきではなかろうかと私は思う。
一方、4施設を購入する三井不動産は、リゾート事業のノウハウを持っているとはいえ、リゾートホテルの利益率はもともと薄いものであり、相当の営業努力を必要とすると思われる。
40.5億円のうち6.6億円は債権であるから、この債権は全額回収されるものと考えると、純投下資本は、
40.5億円−6.6億円=33.9億円
である。
この投下資本を何年で回収することが出来るか。
三井物産が手放した相模湖ピクニックランドを購入した富士急行の投下資本の回収期間は、12年と私は判断した。
レジャーランドとリゾート事業とは、事業内容は異なるが、不動産という施設を利用して利用者からフィーをもらうという商売形態には変わりはない。
と考えると、投下資本の回収年は12年と考えても良いではなかろうか。
1/12=0.0833
還元利回りは8.33%となる。
投下資本33.9億円を12年で回収するとすれば、年間の営業利益は、
33.9億円÷12=2.825億円≒2.9億円
となる。
事業は経営事業体が交代した場合には、一時的に必ず売上高が減少する。それは顧客離れが生じる為である。
これによる売上高の修正を、
124.59億円×0.9≒112億円
とする。
営業利益は2.9億円と予想されていることから、営業利益率は、
2.9億円÷112億円=0.0258≒0.026
2.6%の営業利益率である。
リスクある事業としてみると、2.6%の営業利益率は低い。
三井不動産の経営力を持ってすれば、5年間で営業利益率を5%に持って行くことは充分可能では無かろうか。
5年後営業利益率を5%にして、売却するとすれば、
5%÷2.6%=1.92
5年後には1.92倍の価格で売却することが出来る。
年間の利益率は、
(1+X)の5乗=1.92
X=0.1393≒0.14
14%の利益率である。
これだけの利益率が得られるとなれば、事業として購入する値はあるのでは無かろうか。
上記利益率については、購入者の三井不動産から楽観的過ぎるというお叱りを受けるかもしれないが。
もう一つ、恐らく購入者の三井不動産も全く考えていないであろうが、二酸化炭素の排出権の存在要因がある。
合歓の郷の土地面積は300万uの広大な山林を含んだ土地である。
この土地の二酸化炭素の吸収量を無視することは出来ない。
山林1haの二酸化炭素の吸収量を3.4トンとすると、300haでは、
3.4トン×300=1020トン
年間1020トンの二酸化炭素の吸収量となる。
これは逆の面で考えると、それは二酸化炭素の排出権となる。
二酸化炭素の排出権の価格を1トン当り1,000円とすれば、
1,000円×1020=1,020,000円
年間102万円の排出権の価格となる。
20年間では、
102万円×20=2,040万円
の金額となる。
三井不動産は多くの貸ビルを持ち、エネルギーを多く消費している。
そうした企業としては、二酸化炭素の削減を当然考えなければならないであろう。二酸化炭素の排出権を考えなければならない。
貸ビルを持つ大手不動産業者が、現在どこまで二酸化炭素の削減の問題を考えているのか、私はその知識を持ち合わせていない。
全くその問題を考えずに、貸ビルをドンドン建てていたら、いつの日か貸ビルを建てる不動産業の経営者は、投資家を含めた社会から、二酸化炭素の削減の問題を突きつけられるのでは無かろうか。
「企業として利益追求することは良いであろう。しかし、それ相応の環境に対する配慮と負担をすべきではないのか。」
と、いつの日にか企業としての社会的責任を問われるのでは無かろうか。
もっとも、そんなことは、当社には関係ないと主張する企業も当然あろうが。
鑑定コラム814)「ウィキペディア「鳥羽国際ホテル」に鑑定コラム378)が」
▲
フレーム表示されていない場合はこちらへ
トップページ
田原都市鑑定の最新の鑑定コラムへはトップページへ
前のページへ
次のページへ
鑑定コラム全目次へ