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431)新丸ビルの店舗の月間売上高は坪当り45万円

 東京駅の中央口前、皇居側にそびえ立つ新丸ビルが開業してから2008年4月27日で1周年を迎えた。

 新丸ビルを所有する三菱地所が、新丸ビルの1年間の来場者数等を発表した。(三菱地所HP 2008年4月28日)

 それによると次のごとくである。

        来場者    2500万人
        店舗売上高    260億円
        店舗数    153店舗

 また、日経新聞の2008年4月29日は、新丸ビルについて、
        延べ床面積   20万平方メートル
        総工事費    約900億円
と報じる。

 これらデータより新丸ビルに関して分析してみる。

 建築工事費は、
     900億円÷20万平方メートル=45億円
1万平方メートル当り45億円である。

 1平方メートル当りに換算すれば、
     4,500,000,000円÷10,000=450,000円
である。
 坪当りでは、
     450,000円×3.30578=1,487,601円
              ≒1,500,000円
  150万円の工事費である。

 地下4階を持つ38階建ビルで20万平方メートル規模を持つビルの建築工事費は、坪当りおよそ150万円かかるということである。
 建物の鑑定の具体的データの一つになるであろう。

 新丸ビルに入居する店舗は153店舗で、店舗面積は16,000平方メートルである。
 店舗面積の表示の場合、通路やバックヤードを含める事もある。
 発表された16,000平方メートルの店舗面積は、売場部分のみの店舗面積なのか分からないため、それを確認してみた。

 ホームページに載せられている153店舗の各階の配置図から、一つづつ店舗部分の面積を座標計算で求め、それを当該店舗階全体に占める割合を求める。

 階の面積の修正を他の技法とデータを使用して修正する。
 そうした方法で店舗配置図から求められた店舗部分の面積は、15,720平方メートルであった。

 座標分析から求められた店舗面積15,720平方メートルと、発表されている店舗面積16,000平方メートルと大差無い。

 このことから、三菱地所発表の店舗面積は、通路を含めない営業店舗面積と分かった。

 店舗のある階の建物の建築面積に占める店舗面積の割合は、およそ35%程度である。
 通常50%程度が店舗面積であるのが多いが、新丸ビルの場合は通路等共用部分が甚だ多く、それは店舗建物のある階の建築面積の65%を占める。
 随分と贅沢な、余裕ある店舗階の設計である。

 店舗面積16,000平方メートル 、店舗数153であるから、1店舗当りの平均面積は、
     16,000平方メートル÷153≒105平方メートル
である。

 坪当り月間売上高は下記の通りである。
     260億円÷12ヶ月÷16,000=0.001354億円
1平方メートル当り0.001354億円、即ち135,400円である。
 坪当り売上高は、
     135,400円×3.30578=447,603円≒450,000円
45万円である。

 新丸ビルの店舗の月間坪当り売上高は45万円と分かった。

 ではこの売上高は高いのか安いのか、他のデータで分析比較する。

 経済産業省調査による最近発表された平成19年商業統計調査(速報値)によれば、千代田区の小売業の統計データは次のごとくである。
     店舗数        3,048店
          店舗売り場面積        371,536平方メートル
          年間商品販売額    887,170百万円

 上記データから、1店舗あたりの売場面積は、
     371,536平方メートル÷3,048≒1220平方メートル
である。

 1平方メートル当りの月間売上高は、
     887,170百万円÷12÷371,536=0.1989百万円
である。即ち、198,900円である。

 千代田区の店舗の平均月間売上高は、1平方メートル198,900円(坪当り65.8万円)である。

 新丸ビルの店舗の売上高は、千代田区の平均店舗の売上高よりも低い。
 まさか。
 私は新丸ビルの店舗の坪当り売上高の方が、はるかに高いのでは無かろうかと思っていた。しかし、計算結果は逆である。
 どうも信じがたい数値結果である。(文末「注」追記参照)

 2008年5月24日の日本経済新聞は、東京の西の郊外都市である町田市のJR町田駅のターミナルビルに直結する地上8階建・地下2階建の旧東急ハンズを改装して、「ミーナ町田」という都市複合施設が2008年5月23日オープンしたという記事を載せる。

 その記事によれば、延べ床面積は約2万平方メートルで、店舗面積は1万平方メートルである。

 核店舗は「ユニクロ」で31のテナントが入り、年間40億円〜50億円の売上高を予想する。

 この「ミーナ町田」の店舗の記事より、同店舗の坪当り月間売上高を求める。
 予想売上高は高い水準の50億円を採用する。
 次のごとくである。

     5,000,000,000円÷12ヶ月÷10,000=41,667円
     41,667円×3.30578=137,742円≒140,000円

 坪当り月間売上高は14万円である。

 新丸ビルの売上高は坪当り45万円である。
 「ミーナ町田」の14万円より見れば、坪当り45万円の売上高は、新丸ビルの立地・知名度を確かに反映した売上高と言える。

 東京駅前と町田駅との違いを考えると、もっと売上高に差があっても良いのではなかろうかと私には思われるが。

 しかし、そんなことを云うと、
 「商売をやってみて分かるが、店舗の売上はそんなに容易く伸ばせるものではないよ。」
というお叱りの言葉があるかもしれない。
 

「注」 2008年5月27日追記
 鑑定コラムのある読者から鋭いアドバイスを頂きました。
 原因は単純平均によるものであり、千代田区の坪当たり販売額が高いのは、主に秋葉原と日比谷の家具・ 家電小売の売上額割合が大きいのが影響しており、それによって千代田区の小売店舗の平均売上高が高いのではないかと、商業集積地の売上高データを添えての指摘がありました。

 私もなるほどと思いました。アドバイスをして下さった鑑定コラム読者のO氏に感謝致します。


  鑑定コラム823)「ある超高層事務所ビルの建築費」

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