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430)一つの巨大産業が成長の峠を越えた

 どの産業でも成長し隆盛を極め、我が世の春を謳歌するが、いつかは産業の成長の峠を越えて、成熟の時期を経て衰退の道を歩む。

 過去の日本の石炭産業、繊維産業、鉄鋼業、造船業等を見ても、その盛衰が伺える。

 日本の経済を支え、最先端を走り、日本の産業を代表するごとくの巨大産業が峠を越えようとしている。

 それは自動車産業である。

 自動車産業が峠を越えたと云うとは何事かと叱声をくらいそうであるが、一つのデータが冷徹にもそれを推定させる。

 日本の自動車の保有台数が減少し始めた。
 第2次世界大戦後、日本の経済の好不況にも全く動じず、関係無いごとく自動車の保有台数は増加し続けた。

 国内の自動車の保有台数が増え続ける事は、それはその産業の拡大、増大を意味する。即ちその産業の成長を意味する。

 自動車の保有台数が、去年2007年9月の7968万台をピークにして、その後8ヶ月経っても、2007年9月に記録した保有台数を超す事が出来ない。減少している。

 このことは何を意味するのか。

 自動車産業は、産業としての成長の峠を越えたと判断せざるを得ないのでは無かろうか。そして成熟の域に入ったと言えよう。

 過去の自動車保有台数を、国土交通省、財団法人自動車検査登録情報協会発表の数値を下記に記す。それによって、凄まじい自動車産業の発展と成長の度合が分かるであろう。

 平成18年までは各年3月末の数値である。万台未満切り捨て。単位万台。

年       保有台数万台
昭和41年 1966 812
昭和42年 1967 963
昭和43年 1968 1169
昭和44年 1969 1402
昭和45年 1970 1652
昭和46年 1971 1891
昭和47年 1972 2122
昭和48年 1973 2386
昭和49年 1974 2596
昭和50年 1975 2787
昭和51年 1976 2914
昭和52年 1977 3104
昭和53年 1978 3296
昭和54年 1979 3517
昭和55年 1980 3733
昭和56年 1981 3899
昭和57年 1982 4083
昭和58年 1983 4268
昭和59年 1984 4455
昭和60年 1985 4636
昭和61年 1986 4824
昭和62年 1987 5022
昭和63年 1988 5264
平成元年 1989 5513
平成2年 1990 5799
平成3年 1991 6049
平成4年 1992 6271
平成5年 1993 6449
平成6年 1994 6627
平成7年 1995 6810
平成8年 1996 7010
平成9年 1997 7177
平成10年 1998 7285
平成11年 1999 7368
平成12年 2000 7458
平成13年 2001 7552
平成14年 2002 7627
平成15年 2003 7689
平成16年 2004 7739
平成17年 2005 7827
平成18年 2006 7899
平成19年1月 Jan-07 7947
平成19年2月 Feb-07 7955
平成19年3月 Mar-07 7923
平成19年4月 Apr-07 7931
平成19年5月 May-07 7932
平成19年6月 Jun-07 7943
平成19年7月 Jul-07 7950
平成19年8月 Aug-07 7952
平成19年9月 Sep-07 7968
平成19年10月 Oct-07 7963
平成19年11月 Nov-07 7949
平成19年12月 Dec-07 7937
平成20年1月 Jan-08 7938
平成20年2月 Feb-08 7943

 平成19年3月以降保有台数の増減を繰り返しながら、平成19年9月の7968万台をピークにして、下落し、再度一進一退を繰り返している。

 今後7968万台を越える事があれば、それは喜ばしいことであるが、過去のごとく毎年保有台数が増加していくということは望めないであろう。

 私が自動車を購入したのは、昭和45年で、トヨタカローラであった。その時の日本の自動車保有台数は1652万台である。

 自分が初めて自動車を購入した年を想い出して、その頃の日本の自動車保有台数は何台であったか数字を見て、近いいにしえを想い出して見るのも気持ちの一服になるのでは無かろうか。

 しかし、残念に思う。
 昭和45年頃、トヨタ自動車の株式を1000株購入し、現在まで持ち続けていたとしたら、相当の財産の増大がはかられたであろうに。買っておけばよかったとつくづく思う。

 周囲にトヨタ自動車株を買って持ち続けろとアドバイスしてくれる人がいなかったのは、自分の人徳不足と能力不足の証しか。

 自動車産業は今後とも成長すると主張する人は必ずいるであろう。私はあえて反論はしない。

 つい最近の2008年5月8日にプレスリリースとして発表された、平成20年3月期のトヨタ自動車の決算書は次のごとくである。連結決算の数値である。

   決算期           売上高      営業利益
 20年3月期     26.2兆円     2.2兆円
 19年3月期     23.9兆円     2.2兆円

 トヨタ自動車の20年3月期までの売上高は伸びている。
 だが、翌期である平成21年3月期の予想売上高、営業利益について、トヨタ自動車は下記のごとくの数字を示す。
    売上高    25兆円
    営業利益   1.6兆円
である。

 売上高で1.2兆円の減(▲4.6%)、営業利益で0.6兆円の減(▲27.3%)である。

 自動車産業は峠を越えたと言えるのでは無かろうか。

 とはいえ、今後自動車産業は衰退するのかと云えば、それは企業の経営の方針で、国内販売から海外、特に中国、インド、ロシア等の経済成長が期待される国々への販売にシフトすれば、成長は持続出来るのでは無かろうか。

 国内ではもう自動車販売は増加しないと判断出来よう。
 しかしよくまあ人口12773万人(平成20年4月1日現在概算値、総務省)の所に、7968万台という車を日本国民に売り込んだものだ。
 人口の数値に対して0.624の台数である。
      7968÷12773≒0.624

 中国の人口がいかほどか知らないが、仮に13億人とすれば、
      13億×0.624≒8.1億台
8.1億台の自動車の保有が予測されることになるが。
 

 トヨタ自動車の決算に関して、下記の鑑定コラムに記事があります。

   鑑定コラム493)「トヨタ2.2兆円利益からマイナス利益に激直下」

   鑑定コラム586)「自動車保有台数7968万台を超えられない」

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