ホテルオークラ神戸の土地建物が、アメリカの金融保険会社AIGの関連会社に165億円で売却された。(日経 2002.4.18)
ホテルオークラ神戸は賃借して営業を続けると云う。
云ってみればリースバックである。
ホテルオークラ神戸の売上高がどれ程かは、新聞は報じない。
インターネットでサイト検索したところ、2000年度の同ホテルの売上高は86.19億円で、ホテル売上順位37位であった。(NIKKEI NET 日本経済新聞社)
ホテルの固定資産回転率は1.0(標準偏差0.7)で、観光地帯は1.3である。
固定資産回転率1.0とすれば、ホテルオークラ神戸の土地建物の価格は、売上高と同じの86億円である。
しかし、神戸という観光地帯にあり、日本のホテルとして極めて知名度の高いホテルオークラというブランド力を考えて、標準偏差1倍のマイナス修正を行うと、
1.3−0.7 = 0.6
の固定資産回転率となる。
売上高÷固定資産額=固定資産回転率
である。
固定資産の中に償却資産も含めるものと考えれば、
86.19億円÷0.6 = 143.6億円 ≒ 144億円
と求められる。
この数字から見ると、165億円の土地建物価格は高い売買価格と思われる。
それはホテルオークラのブランド力を強くみたと解釈すべきか。
あるいはリースバックという特殊な契約形態が影響した結果によるものなのか。
よく考えてみると、厳しい目でビジネスを見る外資が、固定資産回転率0.52(86.19÷165=0.52)でホテルを買ったという行為そのものに大変驚いている。
本当であろうかと疑いたくなる。
何故その様な高い価格で購入しょうとしたのだろうか。どうもよく分からない。
これを新しい土地価格の上昇の兆しとみるか。
それとも神戸の土地価格や事務所は現在土砂降りで、それは特異な買い進みの売買例だょと言ってすませるか。
東京の表参道通り、青山通り、骨董通りを結ぶいわゆるZエリアの土地価格の最近の急上昇は、外資が引き金になっている。
日本人の今迄の発想、考え方とは違う価値判断で物の価値を見てくる人々がアメリカ等にはいる。
近い過去に、外資は都市銀行の不良債権を極めて安い価格で買いたたき、不良債権をファンド化して、ここで投下資本を一度回収する。
一方、その不良債権のうち企業再建の道をつけられるものは、再建の道順等をつけて売り払う。
その売払企業不動産を、高い価格でご丁寧にも日本の会社や日本人がまた購入している。
不良債権で最終的に処分に困った債権は、当該債権担保不動産の競売の申し立てをして、債権の回収を確実に行う。
こうして投下資本は2度、3度の大きな利益を得て確実に回収されている。
日本にはこうしたビジネスのやり方、考えは全く無かった。
では、その外資が買う日本の銀行の不良債権の購入資金はどこから出ているのかと云えば、日本の国民から日本の銀行・生命保険会社等が預金として集めた金を、その銀行等が資金運用のためと称して、馬鹿の一つ覚えのごとく購入しているアメリカ国債に支払っている金が、まわりまわって外資の投資運用資金になっているのである。
日本人には既成概念のフイルターがある為に見えないだけであって、日本には儲けるビジネスチャンスがいっぱいあると見ている外資はいるのではないだろうか。
こうした背景で神戸のホテルの外資の今回の購入を考えると、どうなるか。
ホテルについての鑑定コラムに次ぎのものがあります。
鑑定コラム211)「ある都心一流ホテルの投下資本売上高倍率は0.43」
鑑定コラム1067)「売上高の2.8倍のホテル価格」
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