東京プリンスホテルパークタワーが、プリンスホテルとして53番目のホテルとして開業した。(2005年4月11日 日経夕刊)
西武鉄道グループが、ガタガタと新聞等の報道で世間をにぎわしている中での、地上53階、客室数673室の巨大なホテルのオープンである。
総工事費は約300億円で、開業初年度の利用客数150万人、売上高約129億円という。
これらの数値は、ホテル業のプロのはじく数値である。
とすると、総工事費としての300億円に対する都心ホテルの売上高129億円という数値は、信頼出来ることになる。
総工事費300億円に土地代が含まれているかどうかは不明である。
土地代が含まれていないとすると、金額は変更することになるが、定期借地権の設定と考えれば、土地価格は考える必要が無く、総工事費には変更は無い。
総工事費を投下資本と考えると、投下資本に対する売上高の倍率は、
129億円÷300億円=0.43
0.43倍ということになる。
甚だ投下資本に対する売上高倍率は低い。
神戸のホテルオークラの売買価格について、本鑑定コラム44)
「ホテルオークラ神戸の売買価格」
で記事に書いた。
ホテルオークラ神戸の売上高は86億円で、売買価格は165億円である。
売買価格、即ち投下資本に対する売上高倍率は、
86億円÷165億円=0.52
である。
このホテルオークラ神戸の倍率0.52と、今回の東京プリンスホテルパークタワーの倍率0.43とで考えると、都心の高級一流ホテルの場合の投下資本に対する売上高倍率は0.5倍前後であるのだろうか。
粗利回りを考える。
鑑定コラム85)
「ホテルの経営配分利益割合」
で、売上高約5億円のホテルの売上高に対する家賃割合は17%と分析した。
この家賃割合を売上高100億円を超えるホテルに適用することは出来ない。
売上高が多くなれば、家賃の占める割合は低下すると予測される。
この修正を0.8とする。
17%×0.8=13.6%
東京プリンスホテルパークタワーの家賃割合を13.6%とする。
同ホテルの家賃は、
129億円×0.136≒17.5億円
と予測される。
賃料収入÷投下資本=粗利回り
とする。
東京プリンスホテルパークタワーの投下資本を総工事費の300億円とすれば、
17.5億円÷300億円=0.058
粗利回りは5.8%である。
公租公課等の必要諸経費率を控除した還元利回りは、この数値よりなお低率となる。
粗利回り5.8%は高い利回りでは無い。
しかし、賃料として確実に入ってくる収入とあれば、これを支払源とするSPCを設立して、東京プリンスホテルパークタワーをSPCに売却し、投下資本の300億円を回収する方法は充分考えられる。
プリンスホテル側はその様なことを考えていないかもしれないが、300億円という投下資本を眠らせておくよりか、現金化して身軽な経営に転じた方が良いのでは無かろうか。
東京プリンスホテルパークタワーの不動産証券化をもくろむ投資銀行・信託銀行はいるのではなかろうか。プリンスホテルの不動産証券ならば購入する人はいるであろう。
もつとも生き馬の目を抜く東京である。既に東京プリンスホテルパークタワーの証券化などは行われているかもしれない。私が考える様なことはとっくに行われているかもしれない。
鑑定コラム 44)「ホテルオークラ神戸の売買価格」
鑑定コラム 85)「ホテルの経営配分利益割合」
鑑定コラム1067)「売上高の2.8倍のホテル価格」
鑑定コラム1949)「東京等のビジネスホテル宿泊料金の分析を終えて」