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463)ゴルフ場の鑑定評価に、収益還元法は昭和53年に既に使用されていた

 最近、妙な裁判の判決を目にした。
 ゴルフ場に関係する裁判において、ゴルフ場の価格を求める鑑定評価について、「収益還元法が評価の実務で定着したのは、平成10年以降であったのである。」
という判決である。

 それ以前は、原価法の積算価格によってゴルフ場の価格は求められていたというのである。
 この判決による鑑定評価の手法の断定には、一寸待って欲しい。

 ゴルフ場の価格を鑑定評価する場合には、平成10年以前でも充分収益還元法は使用されていた。

 昭和53年に、既にゴルフ場の鑑定評価に収益還元法は適用されていたのである。

 社団法人日本不動産鑑定協会東京支部(現社団法人東京都不動産鑑定士協会)が、昭和53年3月23日付研修資料(第24号−(2))として『ゴルフ場の鑑定評価について』という研修資料を出している。

 著者は、新堀不動産鑑定所の不動産鑑定士新堀鑛麻治氏(故人)である。
 新堀鑛麻治氏は東京会の会長を務められた人である。
 そして新堀氏は多くのゴルフ場の評価をされた人と聞く。

 その新堀氏が書かれたゴルフ場評価の研修資料では、原価法の価格を約23億円と求める。
 収益還元法の価格を概略下記のごとく求める。

 
 @ 総収益         366,000,000円
   プレーフィー、会費等
 A 総費用         254,000,000円
   売上原価、販売費及び一般管理費
 B 純収益    @−A  112,000,000円
 C 還元利回り       6.8%
 D 収益価格   112,000,000円÷0.068≒1,640,000,000円
  
 収益還元法による収益価格を16.4億円と求める。

 そして評価当時の当該ゴルフ場の一口会員権価格に、当該ゴルフ場の適正会員数を乗じた金額を考慮して、ゴルフ場の価格を23億円と求めている。

 ゴルフ場への収益還元法の適用は、既に昭和53年には現東京会の研修資料として発表されていた。それは実務で行われていたことを意味する。

 判決が云う「収益還元法が評価の実務で定着したのは、平成10年以降であったのである。」という判決文は、明白な事実誤認で間違いである。

 事実誤認の判決文というと、恐らく間違いなく裁判官は、
 「なにを云う。代理人弁護士がそれを証拠として出さず、かつ主張しなかったのが悪いのであって、自分は出された証拠に基づき、当事者の主張を充分検討して判断したのであって、自分の判決は正しいんだ。」
と、あたかも悪いのは証拠を出さず、主張しなかった代理人弁護士が悪いと責任転嫁のごとく云うであろう。しかし、そんな裁判の考えで良いのであろうか。

 ゴルフ場の価格評価に全く疎い裁判官が、責任転嫁のごとくどの様に主張しようとも、「収益還元法が評価の実務で定着したのは、平成10年以降であったのである。」と断定する判決文は、明白な事実誤認で間違いである事には変わりがない。

 そのおかしな判決は、結論として積算価格を妥当と判断している。
 そして平成6年以前は、積算価格をゴルフ場の価格としていたと判決は述べる。

 その点について付け加えれば、積算価格は、評価時点当時の当該ゴルフ場若しくは同程度のゴルフ場の会員権相場の価格に、当該ゴルフ場の適正会員数を乗じた金額が上限として修正されるものである。

 ゴルフ会員権価格の下落時には、特にこの要因修正が大切である。

 それはゴルフ場開発業者の立場に立って考えれば、ゴルフ場築造工事費等は会員権売却による入金で全て賄う訳であるから、会員権が売れなければゴルフ場の築造費等の回収は出来ないことから、ゴルフ場開発は行われないという経済合理性に基づくものである。

 判決が重要視した積算価格は、果たしてこの会員権相場価格が反映された積算価格であったか否か。
 

 鑑定コラム 933)「ゴルフ場クラブハウス固定資産税価格58%の需給事情修正を認める判決」


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