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不動産業及び不動産価格にとって、「10兆円」という金額は一つの屈折点を示す金額では無いかと思われる。
どういう要因の「10兆円」かというと、国内銀行の不動産業への年間新規貸出額10兆円という要因のものである。
バブル経済といわれるのは、昭和62年〜平成2年(1987年〜1990年)である。
その時の国内銀行の不動産業への新規貸出額と総貸出額に占める割合は、次の通りである。千億円未満切り捨て。
1987年(昭和62年) 7.6兆円 17.9%
1988年(昭和63年) 8.1兆円 18.6%
1989年(平成元年) 10.4兆円 18.3%
1990年(平成2年) 9.3兆円 16.4%
今迄に不動産業への新規貸出額が10兆円を超えたのは、平成元年(1989年)の10.4兆円である。
新規貸出額が10兆円を超えた途端に土地価格は暴落した。
そして地価下落が続くと共に、不動産業への年間新規貸出額も減少した。その金額は6兆円まで減少した。
平成16年(2004年)頃より、再び不動産業への新規貸出額が増加し始めた。(直近の数値は、後日変更される場合があります。以下同じ)
平成15年(2003年) 68,132億円
平成16年(2004年) 77,841億円
平成17年(2005年) 93,978億円
平成18年(2006年) 91,591億円
平成19年(2007年) 100,859億円
平成19年以降、各四半期毎の金額を記す。
平成19年(2007年)1月〜3月 29,654億円
平成19年(2007年)4月〜6月 22,311億円
平成19年(2007年)7月〜9月 24,939億円
平成19年(2007年)10月〜12月 23,955億円
平成20年(2008年)1月〜3月 30,365億円
平成20年(2008年)4月〜6月 18,122億円
平成15年以降、不動産業への新規貸出額が増加し始めると、それに歩調を合わせるごとく東京の土地価格は上昇し始めた。
平成17年から平成19年の前半までは、暴騰といえる地価上昇を示した。
一部東京の商業地の一等地は、平成元年のバブルの地価を越える価格水準までになった。
しかし、平成19年7月を境にして、地価は値下がりし、現在は暴落の状態にある。
平成19年の地価暴騰そして暴落現象を何と呼ぶか定かでないが、「平成不動産ファンドバブル」という名称で仮に呼ぶことにする。
平成不動産ファンドバブルは、平成19年(2007年)に生じた。
その平成19年の不動産業への国内銀行の新規貸出額は、10.08兆円である。
平成元年のバブルの時は10.4兆円であり、いみじくも同じ10兆円と云う金額は同じである。
平成20年6月直近1年間の不動産業への国内銀行の新規貸出額を、再記すると、下記の通りである。
平成19年(2007年)7月〜9月 24,939億円
平成19年(2007年)10月〜12月 23,955億円
平成20年(2008年)1月〜3月 30,365億円
平成20年(2008年)4月〜6月 18,122億円
計 97,381億円
平成19年1年間は10.08兆円であるが、平成20年6月の直近1年間では9.7兆円である。10兆円を切っている。
現在の不動産価格の暴落、マンション価格の低下、不動産会社、建設会社の倒産等を考えると、銀行の不動産業への新規貸出額が増加するとは予測しがたい。
とすると、10兆円を超えることは無いと判断される。
平成不動産ファンドバブルは、平成19年の10.08兆円の不動産業への新規貸出額の数値を記録して、土地価格が暴落したと云うことになる。
平成元年のバブルは10.4兆円、平成不動産ファンドバブルは10.08兆円と、10兆円と云う貸出額の金額を記録して土地価格は暴落に向かった。
経済行為の自律能力か、不動産業年間新規貸出額「10兆円」という金額は、不動産業及び不動産価格にとって無関係では無く、大きな変動を与える数値ということを、2つの経済現象が教えてくれた。
上記の記事に関係するコラムは、下記にあります。
鑑定コラム291)「バブル時に迫る銀行の不動産業への新規貸出額」
鑑定コラム515)「2008年の不動産業新規貸出額8.4兆円」
鑑定コラム609)「資産バブルの4指標」
鑑定コラム1172)「リートバブルに向かって 9.5兆円の貸出」
鑑定コラム1235)「不動産新規融資10兆円を前に足踏み状態」
鑑定コラム1279)「10兆円を越えなくてよかった」
鑑定コラム1313)「不動産業新規融資額が10兆円を超えた」
鑑定コラム1543)「不動産業新規貸出額と推移」
鑑定コラム1544)「リートバブルの終焉は近いか」
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