464)ゴルフ場の売上高を還元利回りで除すとゴルフ場の収益価格が求められるのか
下記は、あるゴルフ場に関係する裁判で、ゴルフ場の価格を192億円と積算価格で求めた鑑定評価額(本件鑑定評価額)に対して、裁判官が下した判決の判決に及ぼした判決文の主要部分である。
よく読んで頂きたい。
「むしろ収益価格を算出するとするならば、本件鑑定の価格時点に最も近い平成10年度の売上高7億5951万円(K鑑定参照)を通常の還元利回りである8%をもって資本還元(逆算)して算出すれば、94億9387万円と試算され、これに競売手続における評価額が原価法による積算価格で131億円余と評価されていることも併せて考慮すれば、本件鑑定の積算価格は、収益価格との間で、一審原告らの主張するような大きな乖離は生じないのである。
したがって、本件鑑定の評価額とK鑑定の評価額との乖離を理由として、本件鑑定の算定額が専門家として委ねられた合理的な裁量の範囲を逸脱したものとは認めることができない・・・・・・」
上記判決決定の主要部分を述べる文章の、どこがおかしいか分かるであろう。
裁判官が「むしろ」と云って、ゴルフ場の収益価格の計算(この計算式が大問題である)し、その得られた収益価格が競売の評価人の積算価格131億円余と大差ないと云って、本件鑑定評価額(積算価格による評価額である)は、専門家として委ねられた合理的裁量の範囲を逸脱していないと判決する。
では、裁判官が試算して求めた収益価格の求め方を見て頂きたい。
ゴルフ場の売上高7億5951万円を還元利回り8%で資本還元して、94億9387万円と求める。
つまり下記の求め方である。
売上高7億5951万円÷還元利回り0.08=収益価格94億9387万円
数値をハズして算式で示せば、
売上高÷還元利回り=収益価格
の求め方である。
上記算式が成り立つであろうか。
ゴルフ場の売上高を還元利回りで除したら、ゴルフ場の収益価格が求められるのであろうか。
裁判官の求めた94億9387万円という金額はどういう金額であろうか。
判決文を書いた裁判官は、この金額をゴルフ場の収益価格であると得意然のごとく主張し、その後の論理展開の核の数値に採用している。
売上高と云うのは原価、販売管理費等を含めたものである。
売上高−(原価+販売管理費)=純収益
この純収益で価格を考えるべきものであろう。
この事が裁判官は皆目分かっていない。
分かっていなくて、分かったごとく判決文を書く。その判決は強制力を持つものであるから始末に負えないし、恐いものである。
ゴルフ場の場合、キャッシュフローで考えると売上高に対する営業利益率(純収益率)は、20%を超えるものは優良若しくは超優良なゴルフ場である。
通常の場合、経営努力しても10〜15%である。
15%とすると、
7.5951億円×0.15≒1.14億円
である。
これが本件ゴルフ場の純収益である。
しかしこの純収益は、ゴルフ場という企業の純収益であって、この純収益からゴルフ場経営に配分される利益を控除しなければならない。
企業経営配分を考えないと、本社経費が宙に浮くことになり、またゴルフ場という企業経営が出来なく、売上高7.5951億円という売上高も生じない。
この経営配分利益を純収益の12%とする。
1.14億円×(1−0.12)≒1.0億円
この外に、借入金利を考えなければならないが、これを考えると計算が複雑になることから、ここでは考えないことにする。
1.0億円が不動産に配分される利益(不動産に属する純収益)とする。
これを還元利回り8%で除せば、
1.0億円÷0.08=12.5億円
である。
つまり、ゴルフ場の収益価格を求める算式は、
純収益÷還元利回り=収益価格
である。
本件ゴルフ場の収益価格は、12.5億円である。
本件ゴルフ場の収益価格が12.5億円であるにも係わらず、裁判官は本件ゴルフ場の収益価格は94億9387万円と計算して主張する。
裁判官の試算する収益価格は間違いも甚だしい。
ゴルフ場の売上高÷還元利回り=ゴルフ場の収益価格
という算式は成立しない。
上記算式そのものに合理性は全く無い。
合理性も無く、算式として成立し得ない式で求めた馬鹿高い収益価格が、裁判官は正しく適正と考え、「本件鑑定の積算価格は、収益価格との間で、一審原告らの主張するような大きな乖離は生じないのである」と勝手に判断し、「本件鑑定の算定額が専門家として委ねられた合理的な裁量の範囲を逸脱したものとは認めることができない」と判決する。
この裁判官の判断こそ、根本的に間違っている。
上記の様な論理が裁判では罷り通る事こそが、異常である。
3人の裁判官は、自分達の収益価格算出がおかしいと気づかなかったのか。
気付いておれば、堂堂と判決文に書かないであろうから、間違っていることに全く気付いていない。
つまり、不動産価格の求め方についての知識はゼロと云ってよいだろう。
その様な人が、不動産価格に絡む事件を担当し、強制力を持って誤りも著しい、トンチンカンといえる判決文を書いてもらっては困る。
裁判官及び裁判所よ。
冷静に考えて、本件判決の論理をおかしいと思わないのか。
私は恥ずべきおかしい誤判断の判決と思うが。
裁判官の求めた収益価格の算式は間違いも甚だしいものであり、それによって判断された判決は、恥ずべきおかしな誤判断の判決と分かったら、さてどうする。
裁判の社会正義はどうなる。
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