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497)『方丈記』と不動産

 「行く川のながれは絶えずして、しかも本の水にあらず。よどみに浮ぶうたかたは、かつ消えかつ結びて久しくとゞまることなし。世の中にある人とすみかと、またかくの如し。玉しきの都の中にむねをならべいらかをあらそへる、たかきいやしき人のすまひは、代々を經て盡きせぬものなれど、これをまことかと尋ぬれば、昔ありし家はまれなり。」

 鴨長明の『方丈記』の有名な書き出しである。
 そこには、今から800年前、西暦1200年初めの頃の鎌倉時代の京の都の姿が述べられている。

 人生の流転を、川の流れとすみかの移り変わりに見立てて書かれている。

 800年前に世の姿を描くに、不動産を利用して描写する。
 その言葉は「すみか」、「むね」、「いらか」、「すまひ」、「家」である。

 「すまひは、代々を經て盡きせぬもの」と『方丈記』はいう。
 「すみか」・「すまひ」即ち不動産は、いつの時代にあっても重要な物であり、その時代を語る時に欠かせないものということが、『方丈記』の記述によって明らかにされている。

 現在の日本にあって、不動産を小馬鹿にするクセがある。
 「たかが不動産では無いのか」とか、「不動産など何ら大したものでない」とか言って不動産をないがしろにする。
 それは産業界でも、経済界でも、官庁でも、法曹界でも、学会でもしかりである。

 この小馬鹿にする意識がとんでもない間違いであることが、さっぱり分かっていない。なお悪いことに未だ理解しようとしない。

 寝るには家が必要である。その家は土地が無ければ存在出来ない。
 工場も土地が無ければ生産活動が出来ない。
 企業の建物、役所の建物も土地あっての建物である。

 土地建物の不動産の存在を無視するごとくの経済政策、金融政策をするが故に、地価暴騰が生じ、その地価暴騰・暴落が日本経済を狂わしてしまった。

 挙げ句の果てに住宅ローンを原因とするサブプライムローン問題という世界金融・経済恐慌を引き起こしてくれた。

 サブプライムローン問題は、アメリカの住宅ローンと金融工学が原因であって、日本は関係無いと主張する人がいるであろうが、サブプライムローンのかなりの金の出所は、日本と中国であり、日本はサブプライムローン問題と関係無いと言うものでは無い。大いに関係があるのである。

 日銀の長い間の低金利政策と金融超緩和政策が、円キャリーを生み出し、大量のドルをアメリカ金融市場にあふれさせたのである。

 日銀の無定見な金融政策の誤りが、サブプライムローン問題を引き起こしたとも言える。

 不動産は重要なものである。 重要なものであるという認識を、よりしっかりと持つべきである。ないがしろにしてはいけない 。
 不動産を小馬鹿にして扱うととんでもないしっぺ返しを食らうということを、もういい加減に分かって欲しい。

  鑑定コラム1076)「木賊葺(とくさぶき)
 

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