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546)ジョイント・コーポレーションが倒産した

 東証株式上場会社の不動産会社の株式会社ジョイント・コーポレーションが、2009年5月29日に、東京地裁に会社更生法適用の申立を行った。

 申立は受理され、東京地裁は、財産の保全命令を即日出した。

 ジョイント・コーポレーションは、倒産した。

 ジョイント・コーポレーションの倒産で、私がとっさに思い、心配したことは、次のことであった。

 ジョイント・リートという上場リートがある。
 ジョイント・コーポレーションは、ジョイント・リートという上場リート会社の親会社である。親会社が倒産したのであり、こんなことが続いていては、日本のリート業界、リート制度は、信用を無くし、ますます駄目になってしまうということであった。

 5月28日の深夜、ホームページの鑑定コラム545)に、不動産業への国内銀行新規貸出は縮小し、土地価格は下落、不動産業者の倒産は続くであろうと書いて、コラム記事アップしたばかりであった。

 コラム記事アップして、5月29日早く新幹線に飛び乗り、中部地方にある不動産の不動産鑑定の調査に行った。29日の新聞の朝刊そして夕刊を新幹線で読んだが、ジョイント・コーポレーションの倒産記事はいずれにも載っていなかった。

 ジョイント・コーポレーションの倒産は、東京に帰った29日夜遅く知った。

 ジョイント・コーポレーションの5月29日付のホームページのプレスリリースによれば、負債総額は、関連会社の株式会社ジョイント・レジデンス不動産の204億円と併せて、1680億円という。

 そして同ホームページは、会社更生法適用の申立理由の要旨について、次のごとくいう。

 1.平成17年3月期から平成20年3月期まで、経営業績は順調に推移した。
 2.平成20年3月期の営業利益は、過去最高を記録した。
 3.サブプライムローン問題による金融危機によって、不動産関連市況は悪化し、低迷した。
 4.それに伴い、不動産の投資家が市場から撤退した。

 5.不動産流動化事業の売上高が、急激に悪化した。
 6.それらから、信用力の向上と資金調達のために、オリックスグループに総額約100億円の資本参加をしてもらった。
 7.しかし、平成21年3月期の不動産流動化事業の売上高が、前期より78%減少し、財務状況及び資金繰りが急速に悪化した。
 8.この現状では、自助努力による会社再建は困難なため、法的な会社更生法の適用申請を行った。

 ジョイント・コーポレーションの連結の売上高、営業利益は、次の通りである。(単位 百万円)

                       売上高     営業利益
   平成19年3月    168,526      24,043
   平成20年3月    187,785      27,555
   平成21年3月    119,583     ▲48,091

 約1年前の平成20年3月期には、売上高1878億円、営業利益276億円をあげていたのである。

 それが1年後の、平成21年3月期には、売上高1196億円、営業損失481億円の計上となる。

 売上高が30%減じたら企業は倒産の危険域、若しくは倒産の可能性が高いと云われている。

 ジョイント・コーポレーションの売上高減は、

     119,583÷187,785=0.637

である。30%以上の減である。倒産の危険域に入り、そして倒産してしまった。

 先人の経験則の言葉は、無視出来ない真実の言葉であった。

 3月期の決算の税務署への税務申告届出は、5月末までであることから、決算の数値はその1週間若しくは10日前までには固まっていることになる。

 会社内部では、もっと早く決算数値が分かっており、経営をどうするか議論されたものと思われる。

 東京地裁への会社更生法適用申請は、5月末ギリギリの5月29日金曜日の夕方に行われたのでは無かろうか。

 裁判所への申請、そして申請受理がなされたことを受けて、会社は記者会見し、会社更生法の適用申請による会社倒産の発表という段取りの様だ。

 その行為は、翌日が土曜日、そして翌々日は日曜日であることを折り込んでの倒産記者会見である。

 それは、土曜日・日曜日は株式市場が休みであることを認識した行為である。

 上場企業が、会社更生法適用等の企業倒産を発表する時によく使う手段である。

 その手段を当事者は、株式市場の混乱を避けるためと、投資家に冷静な判断をする時間を与える投資家保護のためという大義名分を主張する。

 しかし、果たしてそれは、投資家側に立った本当の投資家保護のやり方であろうか。私は甚だ疑問に思う。

 株式が混乱するのは、土・日曜日の空けた月曜日だって同じである。
 その混乱で、東証の株式売買の機能が麻痺するという論理など、それは昔のことであって、現在の東証の取引システムは、一つの上場企業が倒産したからといって、取引システムが麻痺するという様なヤワなシステムでは無い。

 土・日の2日間の市場取引の空白時間を作ることの方が、投資家に対するアンフェアなやり方である。

 株式市場は、全世界がマーケットである。

 日本が、土・日曜日で2日間休みだからといって、株式市場が開いているところは、地球の裏側にはある。

 そもそも、一般的に、企業情報を発表後2日間の時間経過の後、株式売買を許すというようなことをしているのであろうか。

 企業情報の発表は、金曜日の午前中までに行うべきであろう。
 意図的と思われる金曜日の午後3時以降での、企業倒産発表は中止させるべきであろう。
 それは、当然に、新聞の金曜日の夕刊の原稿締め切り時間に間に合わないと云うことも計算に入れた記者発表である。

 今回のジョイント・コーポレーションの会社更生法適用申請のプレス報道時間を調べてみた。

 私は、5月29日(金曜日)の早朝、先に述べたごとく新幹線で中部地方にある不動産の鑑定評価の調査で、東京を発った。

 新幹線の中で読んだ日本経済新聞・読売新聞の朝刊には、ジョイント・コーポレーションの倒産の記事は全く出ていなかった。

 夕方遅く、名古屋駅で日本経済新聞を買って読んだが、その夕刊にもジョイント・コーポレーションの倒産の記事は載っていなかった。

 29日の夜、東京の自宅に帰り、自宅に配達されている日本経済新聞と読売新聞の夕刊を見たが、いずれの夕刊にも、 ジョイント・コーポレーションの倒産の記事は載っていなかった。

 パソコンに向かい、到着しているメールを見、返信すべきメールに返信メールを送った後、帝国データバンクのホームページの倒産情報を見て、そこで初めて、29日本日、ジョイント・コーポレーションの倒産を知った。

 それからジョイント・コーポレーションのホームページにアクセスしたところ、前記のプレスリリースを知った。

 翌日5月30日になって、少し疑問に思い、各新聞、通信社のホームページを閲覧した。

 ジョイント・コーポレーションの倒産記事の発信が次々となされている。

 私が調べられる範囲で、各プレスのインターネットによる記事の発信時刻を調べてみた。次のごとくである。

 16時間前(時刻不明)、2009年5月29日 日本経済新聞がコメント無しで、ジョイント・コーポレーションのプレスリリースを転載配信。
 16時間前、2009年5月29日  17:56   ロイター
 2009年5月29日  18:05   ブルームバーグ
 2009年5月29日  18:46   マネーザイン
 2009年5月29日  19:23   共同通信
 2009年5月29日  19:38   日本経済新聞・再配信
 2009年5月29日  19:48   時事通信社
 2009年5月29日  19:51   データマックス
 2009年5月29日  20:01   毎日新聞
 2009年5月29日  21:06   産経新聞
 2009年5月29日  21:21   朝日新聞

 上記各プレスの記事発信時刻から、ジョイント・コーポレーションの倒産発表は、東証の株式取引市場終了後の、午後5時頃に行われたことが推定される。
  
 上記インターネットによる記事発信時刻は、私の出来る範囲での調査によるものであり、より早く伝えていた発信会社があったかもしれない。もしあったとすれば、その発信会社に謝ります。


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