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55)名目国内総生産と当座預金残高

 名目国内総生産の計算はどの様にして行われるのであろうか。
 国内総生産とは、国内で一年間に生産された財貨やサービスの合計である。実質国内総生産と名目国内総生産がある。
 実質国内総生産とは、ある年を基準にして貨幣価値の変動を排除した実質価値の国内総生産である。名目国内総生産とは、その年の価格で評価した国内総生産をいう。名目国内総生産には貨幣価値の変動が含まれている。
 国内総生産は国内の財貨、サービスの合計という訳であるから、その計算は産業連関表とか数百の方程式を使って、複雑に計算されるのでは無いかと推定するが、実際にどの様にして求められるのか私は知らない。新聞で発表される名目国内総生産の金額を、そのままそういう金額なのかと受け入れているに過ぎない。名目国内総生産の金額を推定する術を持っていない。せいぜい過去の発表された名目国内総生産の金額より、時系列に変動率を求め、それから推測する程度である。

   ある経済記者がこんなことを述べている。
 「当座預金には面白い法則がある。年末の残高を20倍すると、その年の名目国内総生産(GDP)の金額にほぼ一致する」と。(日経2002.8.13)
 そして、1975年以降の当座預金残高と名目国内総生産の金額の相関グラフを示している。そのグラフを見ると、確かに当座預金残高と名目国内総生産とは近接し、同じ傾向で変動している。
 2001年12月の全国銀行当座預金残高は23兆7951億円である。
      23.7951兆円×20=475.9兆円
になる。政府発表の2001年の名目国内総生産は、500兆2170億円であるから、誤差は5.1%(500.2170÷475.9=1.051)である。

 こんなに簡単に名目国内総生産のおおよその金額を把握する方法が在ったのか。
 驚いている。
 もっと早く教えてくれよと言いたくなる。
 過去3年の当座預金残高と名目国内総生産とを比較してみると、下記の通りである。全国銀行当座預金残高は日本銀行の「金融経済統計月報」による。名目国内総生産は内閣府発表による。

    年            当座預金        その20倍    名目国内総生産
                     億円            億円          億円
 1999年     24兆8110    496兆2200       514兆3490
 2000年     23兆1933    463兆8660       513兆0060
 2001年     23兆7951     475兆9020       500兆2170
 全国銀行当座預金残高の20倍の金額と、名目国内総生産との開差割合を次のごとく求める。
   名目国内総生産÷全国銀行当座預金残高の20倍=開差割合
 上記式によって求められた開差割合は次の通りである。
                 1999年     1.036
                 2000年     1.105
                 2001年     1.051
 名目国内総生産は、当座預金残高の20倍で求められた数値より3〜10%高い水準にある。このことは当座預金残高の20倍の数値に1.06(上記開差割合の平均値)を乗ずれば、名目国内総生産の金額を求めることが出来るということである。

 当座預金残高を20倍すれば、当たらず遠からず名目国内総生産の額が分かるとは。
 誰がこの関係を見つけたのであろうか。
 どんな分野でも分析する人はちゃんと居て、経済法則性を見いだそうとしている。その分析能力に敬服する。

 名目国内総生産を知ってどうするのだということになるが、バブル経済の時には名目国内総生産を使って土地価格を説明する論文が多かった。政府の白書も日本銀行の説明にもそれが使用されていた。私も落ちこぼれで利用したことがある。
 土地価格が大幅に下落した現在は、そうした論文は見当たらなくなった。土地価格の下落ほど名目国内総生産は下落していないために説得力を失ったためである。
 逆に地価の下げ過ぎを名目国内総生産との開差で説明する論文が出てきた。
 バブル経済の崩壊で土地価格は大幅に下落した。日本経済そして行政担当者は土地の持つ経済産業への奥深い影響力を甘く見て、対処方法を間違えてしまった。その為に現在痛い目に遭っている。土地価格から日本経済を論ずることはタプー的状況にある。しかし、土地の上に人間、居宅建物、工場、ビル等は存在し、産業活動は行われ、物は動いている。経済活動と土地は切り離して考えられない。経済変動の総枠である名目国内総生産を無視して、不動産価格を見ることは出来ない。

 2001年5月の当座預金残高は20兆3768億円である。一年後の2002年5月のそれは22兆2890億円である。対前年同月比では、
   22.2890兆円÷20.3768兆円=1.093
である。9.3%の金額アップである。過去名目国内総生産の変動率は、プラスマイナス1〜2%である。これから年率9.3%の上昇と考えることは危険が大きすぎる。1/4とする。即ち一年のうち9ヶ月は変動率0と考える。変動率は2.3%である。
 今年(2002年)の名目国内総生産は、
     500兆円×1.023=511兆円
と予測出来る。
 数ヶ月後にも同じようにして、発表当座預金残高の対前年同月比の変動率を求め、今年の名目国内総生産を予測する。こうした作業を3ヶ月位行えば、ほぼ今年の名目国内総生産を予測出来るのでは無かろうか。
 一ヶ月や三ヶ月程度の当座預金の変動から軽々しく断定すべきではないというおしかりは充分承知している。しかし、来年(2003年)3月頃しか今年(2002年)の名目国内総生産の金額が政府発表されなく、それまで分からないものが、現時点で自分でそれなりの根拠で、おおよそ知ることが出来るということは愉快ではないか。


 国内総生産についての記事に、下記の鑑定コラムがあります。
  鑑定コラム339)「GDPは500兆円」

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