○鑑定コラム


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577)国は一体いくらまで借金するつもりなのか

 不動産の価格形成要因として、不動産鑑定評価基準は、一般的要因、地域要因、個別的要因を挙げる。

 そして一般的要因は、自然的要因、社会的要因、経済的要因、行政的要因の4つに区分する。

 私は、自然的要因は一般的要因から切り離すべきと思うが、そのことについては、下記鑑定コラムに記したから、興味ある人は読まれたい。

 鑑定コラム361)「自然的要因は独立した不動産の価格形成要因である」
 
 不動産の価格形成要因の一般的要因に属する経済的要因の中で、鑑定基準は8つの要因を挙げ、その2番目の要因として、次の要因を挙げている。

   「財政及び金融の状態」

 財政の状態とは、国家の財政を言い、予算、国家の借金、外貨準備高等の状態のことを言う。

 鑑定基準に挙げていることは、それは不動産の価格形成に影響を及ぼす要因であることを示している。

 つまり、日本国の借金の状態を不動産鑑定評価に携わる人は、知っておかなけれならないと言うことである。

 平成21年(2009年)6月末の日本国の借金(正式名で言えば「国債及び借入金」である)は、8,602,557億円と財務省は発表した。この数字では読みにくい。
 860兆円の借金である。

 よくまあ借金を作ったものだ。

 平成21年度の国家予算は、885,480億円である。分かり易く書き直せば88.5兆円の予算規模である。

 860兆円という日本国の借金は、国家予算に対して、

       860兆円÷88.5兆円 = 9.7

9.7倍である。

 88.5兆円の国家予算の内訳を見ると、税収は46.1兆円である。
 あとは、その他収入と公債金である。
 公債金が33.3兆円ある。

 公債金とは、国債発行による借金のことである。

 公債金の国家予算に占める割合は、

       33.3兆円÷88.5兆円 = 0.376

37.6%である。

 分かり易く言えば、日本の国家予算は、その約38%は借金で賄われていると言うことである。

 本当の国家税収による予算額は、46.1兆円しかない。

 税収が無いにもかかわらず、毎年国債を発行して借金を作り、その借金で国家予算を組み立ててきた。

 その国債の発行による借金が積もり積もって、860兆円になったと言うことである。既発行の国債の元本及び利子を払うために、新しく国債を発行して元本利子支払を賄っている状態である。

 税収46.1兆円に対して、日本国の借金は860兆円である。

       860兆円÷46.1兆円 = 18.65 ≒19.0

 税収の19倍の借金を背負うことになる。

 年収500万円の人が、

       500万円×19 = 9,500万円

9,500万円の借金を背負っていることに相当する。

 借金であるから、返済しなければならない。
 借金をするからには、返済計画が無ければならない。

 年収500万円の人が、銀行に9,500万円の借金を申し込んだら、銀行は果たして貸してくれるのであろうか。

 返済計画を持ってきなさいと言われる。
 それなりの返済計画を一所懸命考えて作って持って行っても、100%の確率で貸してもらえないであろう。
 
 どの様な見栄えの返済計画を立てても、収入500万円の人に対して、19倍の9,500万円の借金返済は無謀と判断される。

 個人の借金と国家の借金とは違うと言うであろうが、それは詭弁にしか過ぎない。

 身の丈に合わない借金は、するべきものでは無かろう。

 アメリカ政府は、今回のサブプライムローン問題解決の為に、多大な政府保証等をして国家債務が増大してしている。
 その金額がGDPの56%になろうとしていることに対して、批判が集まっている。

 日本のGDPは、平成20年度末で実質GDPは544兆円である。

 アメリカの国家債務がGDPの56%になることに対して、アメリカ国内で批判されているが、その割合が国家債務の限界割合と考えて、その割合を日本のGDPに当てはめ、日本の国家債務即ち借金の限界を考えると、

       544兆円×0.56 ≒ 305兆円

の水準である。

 旧大蔵官僚・財務官僚は、官僚の中でも優秀な官僚である。官僚の中の官僚とも言われる。
 その優秀な官僚が、何故、税収の19倍、860兆円もの借金をこしらえてしまったのか。

 財務省が発表した平成8年からの国家の借金を、下記に記す。

 
    平成8年6月現在     334.1兆円
    平成9年6月       362.5兆円
    平成10年6月       400.1兆円
    平成11年6月       460.1兆円
    平成12年6月       502.3兆円

    平成13年6月       557.1兆円     平成14年6月       627.3兆円     平成15年6月       643.7兆円     平成16年6月       729.2兆円     平成17年6月       795.8兆円
    平成18年6月       827.7兆円     平成19年6月       836.5兆円     平成20年6月       848.4兆円     平成21年6月       860.2兆円

 平成8年の借金は334兆円である。
 それが平成21年には860兆円にふくれあがった。13年間で2.6倍である。
 野放図と言って良いほどの借金の増大である。良く作ったものだ。

 さあ、どの様にしてこれだけの借金を返済するのか。

 ハイパーインフレとデノミを行って、860兆円を8兆円の価値にしてしまうか。

 所得3倍増論をぶち上げるか。
 13年間で借金を2.6倍にしたのであるから、所得3倍増論は無茶な論とは批判出来ないであろう。

 それともGDP3倍論をぶち上げるか。

 今後80年間かけて返しますと言う様な返済計画は、まともな返済計画とは言えないであろう。それは返済のあての無い借金作りだったと言うことになろう。

 もし返済のあても無く借金860兆円をつくり、これからも増えて1000兆円の借金になった場合、その行為は、かって生きて帰ることが出来ないという無謀な特別攻撃隊を立案し、実行させた海軍軍令部の将校と同じことを、平成の御世に行っていることになる。

 日本国借金の特別攻撃隊は止めてくれ。

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