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640)立体的に土地が最有効使用されていない場合の基礎価格

 下記の写真は何処の写真か。


日本銀行札幌支店



 北海道札幌に住んでいる人は、何処の建物か分かるであろう。
 札幌の不動産鑑定士であれば知りませんと言えない。知らないと言えば、余程不動産鑑定の仕事をしていないか、札幌のことについて知らない不動産鑑定士と言うことになる。

 上記写真の地域は容積率600%の地域である。
 周辺には8階建等の建物利用が多い。
 しかし、写真の建物は2階建利用である。

 この建物の賃料を求めるとする。

 土地の更地価格をA円とする。
 建物の価格をB円とする。

 土地建物の価格は、

     A+B=C円
 
である。

 このC円を、積算賃料を求める場合の基礎価格にするのか。

    C円×期待利回り+必要諸経費=積算賃料

と求めて鑑定書に書くのか。

 現実にはこうした賃料の鑑定書が甚だ多い。

 更地価格A円は、最有効使用の状態の土地価格である。  容積率600%の地域にあっては、容積600%の建物利用を前提にして土地価格A円は形成されている。
 建物で言えば8階建程度の土地利用である。

 写真の建物は、2階建である。
 敷地面積に対する建物延べ床面積の実際利用の容積割合を、仮に150%とする。

 更地価格A円は、8階建容積率600%に対応する価格であり、その土地利益を2階建容積率150%の建物の家賃に全部負担させて良いものであろうか。

 もしそうすると、本来3階〜8階の建物が負担すべき土地利益を、2階建の建物が全て被ることになる。

 それは理不尽なことでは無いのか。
 それを行ったら、2階建の建物の家賃がとんでもない高い家賃になってしまう。

 ではどうすれば良いのか。

 土地価格のうち、2階建容積率150%の建物の家賃が負担すべき部分は、建物の効用が各階同じとすると、

        150
             ──── = 0.25                                      
        600

0.25Aの土地価格相当となる。

 上記写真の建物の積算賃料の基礎価格は、

      0.25A+B=D

ということになる。

 これが、立体的に土地が最有効使用されていない建物の場合の積算賃料の基礎価格の求め方である。

 この立体的要因考察を無視して、前記Cの価格を基礎価格にして、積算賃料を求めている不動産鑑定書が大変多い。
 間違いを指摘すると、それだけ贅沢に土地利用しているのであるから、その分高くても良いではないかと反論してくる不動産鑑定士及び代理人弁護士も居る。

 又中には、立体的に土地が最有効使用されていない要因を、建付減価が原因と勘違いして、建付減価によって修正している賃料鑑定書も見受けられる。

 建付減価修正の土地価格と基礎価格とは概念が異なる。

 上記建物写真は、札幌の日本銀行札幌支店である。
 去年(2009年)の11月頃に札幌に行った時、目にとまって撮った写真である。
 今頃(2010年3月)は雪に覆われていることであろう。


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