○鑑定コラム
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ある賃料鑑定書の継続賃料のスライド法で求めている賃料を分析すると、敷金の運用益率は32.6%であった。
それ故、継続賃料のスライド法の賃料の求め方は間違っていると、指摘したところ、当該賃料鑑定書を書いた不動産鑑定士が、求めているスライド法の賃料は適正であると反論してきた。
敷金の運用益率が32.6%の賃料鑑定書が適正であるのか?
適正であるという回答を得て、私は唖然とした。
敷金の運用利回りは、通常1.5%〜2%である。
その運用益が賃料の実質賃料を形成する。
敷金運用益率32.6%となると、実質賃料は高くなり、支払賃料も理不尽な高さになる。
その鑑定書を書いた本人の不動産鑑定士は、間違いであることが分からず、自分の求めたものは正しいんだと盲信してしまっている様である。それともメンツがあって虚勢を張って正しいと主張しているのか。
他人から間違っていることを指摘される事に対して、自尊心を傷つけられたのか知らないが、全て自分の賃料鑑定書は適正であると、「適正」、「適正」、「適正」・・・・・と反論する。
敷金運用益率が32.6%となることなどあり得ないが、現実にはあり得てしまった。
何故そうなったかは、当該賃料鑑定書のスライド法の求め方が間違っているためである。
継続賃料のスライド法の賃料は、
従前賃料の純賃料×スライド法の変動率+価格時点の必要諸経費+敷金運用益=スライド法実質賃料 ・・・・・・@式
と求める。
当該賃料鑑定書は、スライド法の変動率を1.30とする。
そして、
支払賃料+敷金運用益(敷金×0.02)=実際実質賃料
実際実質賃料×1.30(スライド法変動率)=スライド法実質賃料
と上記のごとくの求め方をしたためである。
敷金運用益の利回りは2%としている。
これを実際実質賃料に含めてしまい、その実際実質賃料に1.30の変動率を乗じたのである。
敷金運用益に1.30という変動率を乗じるというダブルカウントをしてしまったのである。
敷金運用益は、敷金運用益率0%とすると、その割合は1.0となる。2%の運用益率とすると、その割合は1.02となる。
当該敷金運用利益率は実質的に、
1.02×1.30=1.326
と成り、32.6%の敷金運用益率ということになる。
支払賃料は、
実質賃料−敷金運用益=支払賃料
と求めている。
この時の敷金運用益は、
敷金×0.02=敷金運用益
の数値である。
ということは、
1.326−1.02=0.306
30.6%という架空の運用益金額が、支払賃料に上乗せされることになるのである。
(32.6%でなく、30%ではないのかという反論が出されるかもしれないから、スライド変動率30%と敷金運用益率32.6%の関係が同じであることを、下記に説明しておく。
1.326÷1.02=1.3
であり、スライド変動率の場合は30%(1.30)の変動率を乗じることであり、敷金運用益率32.6%とスライド変動率30%とは同じことを言っているのである。)
上記@式の計算に従えば、敷金の運用利益は2%である。
この2%が正しい。
32.6%の敷金運用益率は間違っていることは、今更言わなくても良いであろう。
この間違いが分からず、自分のスライド法の賃料が正しいと主張する不動産鑑定士の存在には、あきれて私の堪忍袋の緒も切れる。
このスライド法の不動産鑑定士が陥り安い間違いについて、拙著『賃料<地代・家賃>評価の実際』P6(プログレス 電話03-3341-6573 2005年 )で、
「スライド法の場合、実質賃料で行うと保証金の運用益等が実質賃料に含まれ、運用益等に賃料変動率を乗じることになり、利益の二重加算をしてしまう可能性がある」
と記して、注意を喚起し、そうした事を行わないように警告を発している。
当該鑑定書は、私が著書で述べているやってはいけないことをやってしまって、その求められた賃料をあろう事か、「適正」であると主張しているのである。
この様な賃料鑑定をやっていると、当該不動産鑑定士、鑑定書発行の鑑定事務所は、相手側等これは不当だと思う国民から、国交省に不当鑑定で訴えられてしまうょ。
国交省地価調査課は、まさか、こうしたスライド法の求め方を適正であると判断して、或いは間違いに目をつぶって無処分にはしないであろう。何らかの処分をするであろう。そうでなかったら正義が保たれない。
鑑定コラム646)「自らの間違いを正当であると主張する不動産鑑定士がいるいる」
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