○鑑定コラム
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駅から遠い場所にある土地の推定価格の求め方について述べたい。
駅を地域の中心地と考える。
具体的な求め方として、御殿場の土地で考える。
対象地は、御殿場市の中心であるJR御殿場駅より約8kmにある土地とする。
御殿場市にある地価公示価格(2002年1月) と静岡県基準地価格(2001年7月)を10数件ほど選び、価格と御殿場駅距離との関係を見る。
地価公示価格、静岡県基準地価格より、以下のデータを選択したとする。
御殿場駅距離順に記す。
価格平方メートル 御殿場駅距離
当り千円 km
基準地2 135.0 0.25
公示地9 120.0 0.88
公示地3 114.0 1.2
公示地4 97.1 1.5
公示地6 110.0 1.5
公示地7 102.0 1.7
公示地2 96.5 2.2
基準地10-1 80.3 3.0
公示地10-3 74.0 3.2
基準地10-2 82.1 3.3
公示地10-1 75.0 3.9
基準地10-4 74.0 4.2
グラフの縦軸に土地価格、横軸に御殿場駅距離をとって、上記データをグラフに図示してみる。面倒臭がらず、実際にグラフ用紙を取り出しやってみて頂きたい。或いは白紙に適当に目盛りを刻んで、データを図に落としてみていただきたい。実際に手を動かして、体験しなければ実感出来ない。土地価格は御殿場駅より遠ざかるに従って下落していることが伺える。
上段グループと下段グループとは御殿場駅2.5kmを境にして、右下がりの勾配が異なっていることに気づく。
上段グループ、下段グループの価格のおよそ中央を通る斜線をグループそれぞれに引く。2つの右下がりの斜線が引ける。
この斜線から、御殿場駅からのおおよその価格を推定する。
御殿場駅駅距離0.5〜2.5kmまでの部分は、
1km 11.8万円
2km 9.8万円
御殿場駅駅距離2.5km以遠は、
3km 8.0万円
4km 7.5万円
とグラフより価格を読みとる。
厳密な数値を知るには、回帰分析による線型関数の一次方程式を求めれば得られるが、そこまで行う必要はないであろう。(回帰分析の具体的な求め方に付いては、『鑑定コラム』102)の
「データから方程式をもとめる」
という記事に詳しく書いてある。これを読めばデータから方程式をどの様に求めるのか具体的に分かり、応用出来る。)
御殿場駅0.5〜2.5kmの地価逓減は、
9.8万円÷11.8万円=0.830
で、1km当り17%の逓減である。
御殿場駅2.5km以遠の地価逓減は、
7.5万円÷8.0万円=0.937
で、1km当り6%の逓減である。
対象地は御殿場駅より8kmにある。
対象地に最も近い距離にあるデータは、静岡県基準地の10-4で、御殿場駅より4.2kmの74,000円である。
そのデータと対象地の距離は、
8km−4.2km=3.8km
である。
前記より御殿場駅2.5km以遠の土地価格は、1kmあたり−6%の逓減であった。
これより3.8kmの逓減率は、
(1-0.06)の3.8乗で0.790
である。
御殿場駅距離4.2kmの土地価格は74,000円である。御殿場駅距離8kmの土地価格は、4.2kmの価格の場所より3.8km御殿場駅より遠去り、その価格逓減率は0.790であるから、
74,000円×0.790=58,460円≒58,000円
である。
御殿場の土地のうち、御殿場駅8kmの土地の推定価格は平方メートル当り58,000円と求められる。
土地の個別的要因の修正はこの価格の後に行う。
対象地が大規模画地であれば、大規模画地による要因修正を、道路幅員が8メートルあれば、道路幅員による修正を行い対象地の価格を求めることになる。
上記求め方によって、御殿場の土地の推定価格が平方メートル当り58,000円と求められれば、御殿場の現地調査では、現地の状況と仮説条件を見比べ、推定価格を証明する取引事例を捜すことになる。
取引事例データが、例えば平方メートル当たり40,000円程度のものが多ければ、仮説はどこで間違っていたのか検討する。そして適正評価額にたどり着くことになる。
この仮説推定価格と実際の価格との間に誤差が生じている場合、この誤差がどうして生じたか、その原因を突き止め、その土地価格修正経験を次回の同じような土地評価の際に生かす。
こうしたいくつもの土地価格修正経験で得たノウハウを再度検証しながら積み重ね、身に付けることによって、的確な鑑定評価の分析力が会得されるのでは無かろうか。
上記分析では2.5kmを境にして、2.5kmまでの土地価格逓減率は1km当り17%、2.5km以遠の土地価格逓減率は1km当り6%であった。両者の間には、
6%÷17%=0.35
の関係が認められる。即ち2.5km以遠の土地価格逓減率は2.5kmまでの0.35倍であるという一つのデータが得られたのである。こうしたデータを蓄積していくのである。蓄積されたデータを分析する。そうするとデータの数値に、あるパターンがあることが分かってくる。そのパターン化の原因が何かを探し求める。何に原因するのかがある程度分かってくれば、土地取引事例が無くとも土地価格の推定が出来るようになる。
土地取引事例は仮説を実証するためのデータにしか過ぎなくなる。
3つの土地取引データによる取引事例比較法による比準価格の求め方など、馬鹿馬鹿しくてやっていられなくなるが。しかし、これは少し言い過ぎです。鑑定書には3つの取引事例からの取引事例比較法で比準価格を求めて、評価手法の正当性を得るために『不動産鑑定評価基準』に従って、ちゃんと価格査定して価格表示しています。
『不動産鑑定評価基準』は、鑑定評価には「豊富な経験」が必要と云う。その経験は「秩序だった経験」であることが必要である。「無秩序な経験」はいくら豊富にあっても鑑定には何の役にも立たない。「秩序だった経験」こそが有益な経験で必要であろう。
上に述べた「土地推定価格の求め方」は、「秩序だった経験」の実践の一つになるか。
鑑定コラム920)「国交省公表の土地取引価格データより土地価格を求める」
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