○鑑定コラム



フレーム表示されていない場合はこちらへ トップページ

田原都市鑑定の最新の鑑定コラムへはトップページへ

前のページへ
次のページへ

鑑定コラム全目次へ


67)転借権が付着する借地権譲渡承諾料

 東京地裁の借地非訟事件に携わる鑑定委員会の研修会が年に数回開かれるが、そのうちの一つのケースメソッドの研修会が開かれた。東京地裁の主催であり、地裁では「研修会」といわず、「協議会」という。裁判官と鑑定委員が共に課題の借地非訟案件を一堂に会して討議して、共通の解決方法を共有しようという意味が込められているであろうか。

 借地非訟とは何かというと、語句のごとく、借地の訴訟でない事件ということである。
 借地紛争のうち、借地人が借地上の建物の増改築したいが、地主がその許可を与えてくれないために、裁判所が地主に変わって増改築の許可を認めてくれるよう求める事件とか、他人に借地を売却したいが、地主が譲渡許可の承諾をしてくれない案件や、木造から鉄筋コンクリート造に変更する場合の借地条件変更承諾を地主に変わって裁判所が認めてくれという案件の紛争処理である。裁判所が許可を与える場合には、それに伴う金銭的対価がどの位かの付随処分が当然伴う。
 地代の増減額に伴う地代訴訟は取り扱わない。それは本裁判で争えということである。

 一つの事件に鑑定委員は不動産鑑定士、弁護士、有識者の三人がチームを組み、案件を現地調査し検討して、裁判官に報告書を提出する。裁判官は提出された鑑定委員会の報告書を参考にして最終的には自分の判断で決定をくだす。訴訟でないから裁判官の決定に不服の場合には、本訴訟で争う道が残されている。

 今年(2002年)の初秋に東京地裁の鑑定委員協議会は開かれた。出席者は200人程度であった。数問の課題について討議された。現在の経済事情を反映して、金融機関の不良債権処理によって引き起こされる案件が多かった。裁判所が現在判断に悩み、どう解決しようか迷い鑑定委員に意見を求める課題が一つ提出された。年々裁判所提出の案件課題は難しくなってくる。今年の提出課題は次のものであった。

 『XはYからその所有する土地(以下「本件土地という。)を建物所有目的で賃借し、建物を建築しているが、本件土地の一部をさらに申立外Aに転貸し、Aも転借部分に建物を建築している。
 Xは、本件土地全体部分の賃借権をX所有の建物と共に第三者Bに譲渡することとし、Yを相手方として土地賃借権譲渡許可を裁判所に申し立てた。なお、Yは、上記申立に対して、土地賃借権の譲受け(介入権) を申し立てている。
 1.譲渡承諾料の算定の基礎となる借地権価格を算定するに際して転借権価格を控除すべきか。
 2.介入権価格の算定の基礎となる借地権価格を算定するに際して転借権価格を控除すべきか。
 3.転借権価格はどのように算定すべきか。』

 案件は討議されたが結論は出ず、正解は示されなかった。私も正解は分からない。

 地主の介入権が実行されたら所有権と借地権の混同が生じ、転借権は借地権の地位になるのか否かの考え方の整理も必要であるが、今迄に転借権の地代評価、転借権が付着する借地権の地代評価を経験したことから考えると、地代で考えれば課題の解決の糸口が見つかるのではないかと思うが、しかし、断定は出来ない。
 各自解法を考えられたい。


 借地権譲渡承諾料ついては、下記の鑑定コラムに記事があります。

  鑑定コラム233「借地権譲渡許可承諾料」


  鑑定コラム1260)「寺の貸地の地代は公租公課の3倍以下」


フレーム表示されていない場合はこちらへ トップページ

田原都市鑑定の最新の鑑定コラムへはトップページへ

前のページへ
次のページへ

鑑定コラム全目次へ