2010年の4月の中頃、提出期限が遅れていた不動産鑑定書を、遅れを恐縮しながら、ある会社に届けた。
会社のロビーに入ると、「本日入社筆記試験」の案内立て看板が出されていた。
来訪者の受付カウンターの後ろに座る若い二人の女性に、来訪の目的と面会者の名前を告げた。
応接室に案内してくれる女性に、
「今日は、来春卒業の大学生の入社試験ですか?」
と尋ねたところ、
「そうです。」
という返事が返って来た。
「どうですか。未来の旦那様候補はいましたか?」
と問うたところ、
「いえ、歳が若いですからダメです。」
と軽くいなされた。
なかなか女性の目は厳しい。
企業の担当部長と課長に鑑定書の内容の説明を終えた。
「ところで、もう来春卒業の入社試験ですか。
新年度の大学の授業が始まったばかりですが、随分と早いですね。」
と、話題を入社試験に切り換えた。
「そうです。年々早くなりまして、4月中半の今日、筆記試験をしています。
他の会社も行っていますので、止むを得ないです。」
と企業の部長はいう。
大学4年生になった途端に、1年後の入社の学生の試験をするとは。
それは当該会社だけでなく、日本の多くの企業がそうらしい。
私は、ある大学の法学部の3年生を対象に、不動産鑑定評価の講義を行っているが、去年の秋以降、講義を受けている学生が、就職活動のため講義に出られませんという学務課が証明する欠席届の提出を随分と受け取った。
それは、私が知らなかっただけで、4年生早々の企業の入社試験を受ける為の企業廻りの為の講義欠席届であったのである。この日私が遭遇したごとくの入社試験を受ける為に。
大学3年、4年は最も知識欲があり、物事の存在・真理について深く思考出来る絶好の時期である。
その大切な時期を、それらをすること無く、就職の為に時間が費やされることは、社会にとっても、本人にとっても不幸であり、損失である。
日本の企業はもう少し、大学生の人生を考えて、就職試験の時期を考えてくれないものか。
学生に、大学で勉強出来る時間を与えてくれないだろうか。
とはいえ、いずれ大学を卒業すれば、社会に出て働くことになる。
今の時代の大学卒業生の初任給はいかほどであろうかと、少し興味を持ったため、ネットで調べてみた。
ネットにやはりその情報はあった。
2010年入社大学卒の給料を統計的に調べたサイトがあった。
財団法人労務行政研究所という機関が調査し、発表していた。
高校卒業の給与も記してあった。大学卒と高校卒と給料にどれ程の差があるのか、その差を知る事が出来ることから、それらを記す。
いつの日にか、2010年の新入社員の給与はこれぐらいであったと振りかえって見た時に、この情報は役にたつであろう。学科専門によって給料は異なっているであろうが、一律の金額を表示する。
大学卒 205,641円 大学院修士卒 223,384円 大学院博士卒 245,115円 短大卒 172,160円 高専卒 182,254円 専門学校卒 173,166円 高校卒 160,996円 中学卒 調査していない