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698) 売れないドルを買ってどうするのだ

 民主党政権の日本政府は、2010年9月5日にドルに対して円が高すぎるということから、1ドル=82円に入った時点でドル買い、円売りを行った。

 それまで円高が進んで来たが、財務相のいう言葉は毎回同じで「断固たる処置をとる」という言葉であった。首相も同じ発言である。

 いわゆる口先介入である。

 やっと2兆円程度のドル買いを実施した。
 6年振りの市場介入と新聞は報じる。
 2兆円程度のドル買いで円高のうねりが収まると思っているのであろうか。

 一応日本政府の為替市場介入で、1ドル=85円程度まで円安になったが、それも長くは続かなかった。

 数日も経たない間に、1ドル=82円になってしまった。
 9月8日のニューヨーク外国為替市場は、1ドル=81円72銭になったとロイター等は報じる。

 一体、日本政府はなんの為にドル買い介入を行ったのか。
 2兆円の円を国際金融資本にタダでプレゼントしたのか。

 これからも円高は日本産業に悪い影響を与えるという理由で、円を買い支えるのか。
 2兆円、3兆円、5兆円の金を出してドル買いをするのか。

 国家予算を立てる時、金が無い、金が無いと云って、総選挙で約束した政策の実行をやろうとしないにもかかわらず、ドル買いの時には、一言もそれに触れず、あたかも無尽蔵のごとく知らぬ間に、ドル買いの金が出てくる。
 おかしな国政運営である。

 円高になれば日本政府が買い支えてくれると分かれば、国際金融資本はドル売りに加速をかけるであろう。

 2兆円程度のドル買い介入で円高が止まると思っている政府関係者の考えそのものが間違っている。

 日本政府が現在の国際金融資本を向こうに回して、円高を止める大勝負などして勝てるものでは無い。国際金融資本は、ケタ違いの巨額な金額を持ち、動かしている。

 日本政府はドルを買って、その買ったドルをどうするつもりなのだ。

 一般的に考えれば、円安になった場合、その時にドルを売れば、その分儲かるから良いではないかという発想が当然なる。金融自由主義であるから、日本も持っているドルを自由に売ることが出来るのであるから、何をおかしなことを言うと思う人がいるであろう。
 日本人の大部分の人は、必ずそう思う。

 しかし、哀しいかな日本は、ドル介入して得たドルを市場で売ることは出来ない。それは法律で決まっているわけでは無い。事実として出来ないのである。

 いつだったか、橋本龍太郎が首相の時に、アメリカのクリントン政権が、「日本版の金融ビッグバン」に伴い、「超低金利政策」を行えと要求してきた。

 橋本龍太郎が首相になったのは1996年である。平成でいえば平成8年である。
 その時は、平成のバブルがはじけて、地価の大幅下落、日本経済が平成の大不況に突入していた時である。

 日本経済が大変苦しい時に、アメリカ政府は橋本龍太郎に無理難題をふっかけてきたのである。

 橋本首相は、アメリカの要求に対して、
 「あまり無理なことを言うと、日本は持っている米国債を売りますよ」
と云った。

 これに対して、アメリカから、
 「売るなら売ってみろ、日本の安保体制はどうなるか考えて見ろ」
の類の脅しを逆にかけられて、橋本首相は米国債を売ることが出来なかった。

 日本の保有するドルは殆ど米国債で保有されており、米国債の売りはドル売りと同じである。

 橋本内閣のその時の財務省事務次官、財務官、国際金融局長の職にあった人は、誰であるか私は知らないが、この事実は知っているであろう。事実で無いと云うのであったら、その旨連絡いただきたい。

 つまり日本政府はドルを買い、そのドルで米国債を買って保有しているだけである。売ることが出来ない。日本国の首相が米国債を売ると発言しただけで、脅されてしまい橋本首相はシュンとしてしまったのである。

 売れないドルを買ってどうするつもりなのだ。

 ドルなど買わずに、円が強ければ、それを利用すれば良いのではないのか。

 銀行は貸出先が無いという。企業は円高では外国に工場をだして日本を離れざるを得ないという。

 ならば、政府の政策銀行が中心となって、融資先の無い銀行、海外進出を考えている企業に資金を出してもらって海外進出投資ファンドを作り、海外の企業を買収し、そこで生産活動をすれば良いのではないのか。

 いくつも海外進出投資ファンドを作り、海外企業を買収し事業拡大すれば良いではないのか。

 1ドル=120円の頃を想い出せ。
 今は1ドル=80円である。35%安で企業を取得出来るのである。

 法人税の減税などという情けないことを企業家は言うな!

 現在の企業を作り上げた創業者の創業精神を自ら味わってみよ。
 それが真の企業家、事業の経営者であろう。

 財務省が平成22年10月7日に発表した日本の外貨準備高(平成22年9月末現在)は、下記の通りである。

     外貨準備高         1,109,591百万ドル
              外貨                    1,051,474百万ドル
                そのうち証券          1,031,682百万ドル

 上の金額を説明すれば、2010年9月末の日本の外貨準備高は1兆1095億ドルで、その内、証券即ち米国国債が1兆316億ドルと云うことである。
 
 1兆ドルの外貨を日本は持っているが、これを売ることが出来ない。

 中国の外貨準備高は、2兆4000億ドルで世界一の保有国になった。
 日本の円高が続けば、日本の産業が衰退すると云うことが明白になれば、中国が豊富な外貨準備高を使ってドル売り、円買いをやったらどうなるであろう。 中国がドル売りをしても、アメリカは日本に対して行ったような圧力脅しをかけることは出来ない。中国は、その様なアメリカの要求ははねつける。

 中国は円高を政策的にやろうと思えば、いつでも出来ることになる。
 そうした時、日本政府、日本の財界はどう対応するのか。

 「不動産鑑定評価基準」の不動産の価格を形成する要因として、経済的要因の項目のトップに、
    「貯蓄、消費、投資及び国際収支の状態」
の項目が記載されている。

 不動産の価格には、国際収支の状態は関係あるのである。
 不動産鑑定士が、
 「わしゃ国際収支・外貨準備高の状態など知らない、そんなのは地方の不動産価格には関係無い」
と云ってもらっては困るのである。

 中国の資本が、例えば福岡の商業地のビルをバカ高い価格で購入した時、その原因が分からなくてどうする。不動産価格評価の専門家であろう。

 なお橋本内閣は参議院選挙で敗北し、その後を小渕恵三内閣が出来た。
 小渕内閣は84兆円の国債を発行し、日本の借金は540兆円にまでになり、自らが「世界一の借金王」と自嘲気味に云った。
 このことは何故であろう。何を意味するのであろうか。


  鑑定コラム1577)「中国の外貨準備高 3兆0516億ドル」

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