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私は、住宅ローン月額支払い額の計算式に疑問を持つ。
住宅ローンの月額支払額は、一般的には元利均等償還金額で行われている。 毎月の返済額は一定で、決められた期間で借入金及び利息を返済し終える方法である。
1000万円の住宅ローンを年金利3.6%、240回払い(20年間)とすると、元利均等償還率は、0.005851114であることから、月額返済額は、
10,000,000円×0.005851114 = 58,511円
と求められるが、この住宅ローン月額支払い額の計算式に、私は疑問を持つのである。
その元利均等償還率の算式は、
r : 利率
n : 支払回数
w : 元利均等償還率
とすると、下記の式である。
元利均等償還率の公式は、
r
W =────────────
1 ・・・・・・@式
1−────────
(1+r)のn乗
である。
社団法人金融財政事情研究会発行の『新元利均等償還金テーブル』(日債銀総合システム株式会社著 株式会社きんざい発行 平成元年6月28日) によれば、ボーナス返済無しの場合、年利率3.6%で償還回数240回の賦金率は、0.005851114(少数10位以下切り捨て)である。
そしてこの際の月利率は、0.3%として計算している。
即ち、
年利率3.6%÷12ヶ月 = 0.3%
として、月利率を求める。
これを@式に入力して確かめると、
0.003
W =────────────
1
1−────────
(1+0.003)の240乗
0.003
= ────────
0.512722817
= 0.005851114
となり、月利率0.003の元利均等償還率は、0.005851114と証明される。
これから年利率3.6%の住宅ローンの月利率は、
年利率3.6%÷12 = 月利率0.3%
の算式によって、0.003(0.3%)の利率で求められているとはっきりと言いえるのである。
利息利率というものは、複利で行われるのが原則である。
毎月元利均等の金額で支払っているものであるから、その毎月の支払金額は月利率の複利計算で行われるものである。
年利率3.6%の月利率を求める。
月利率をXとする。
(1+X)の12乗 = 1.036
これを解けば、
X = 1.036の1/12乗−1
= 0.002951609
月利率は0.002951609と求められる。
この月利率で、支払回数240回の元利均等償還率を@式より求めると、下記の通りである。
0.002951609
W =───────────────
1
1−────────────
(1+0.002951609)の240乗
0.002951609
= ────────
0.507047655
= 0.005821166
年利率3.6%の月利率は、0.002951609で、その元利均等償還率は0.005821166である。
月利率を年利率の1/12として求める
3.6%÷12 = 0.003
の元利均等償還率は、0.005851114である。
同じ年利率3.6%でありながら、上記で求められた2つの元利均等償還率は、年利率の1/12の月利率で求められた方が高い。
その元利均等償還利率の差は、
0.005851114−0.005821166 = 0.000029948
である。
この元利均等償還利率の差より、現行住宅ローンの矛盾を考える。
1000万円の住宅ローンの借入金の場合、
10,000,000円×0.000029948 = 299.48円
月額299.48円の差である。
これが20年、240回払いでは、
299.48円×240 = 71,875.2円
である。
これは1000万円の住宅ローンの一つの場合の金額である。
1万件になった場合は、
71,875.2円×10,000 = 718,752,000円
である。
住宅ローンの件数は1万件程度の件数では無い。もっとはるかに多い。
これが100万件の住宅ローン件数となると、
7.18752億円×100 ≒ 718.7億円
となる。
718.7億円という巨額な金は何処に行くかと云えば、それは貸金する銀行・金融機関の懐に入るのである。
「たかが月額299.48円」と思っていると、その「たかが」が、積もり積もると718.7億円の金額になるのである。
住宅ローン借入者である消費者は、それだけの損失を被っている事になる。
逆に銀行・金融機関は、それだけの不当利得を得ていることになる。
この年利率と月利率の矛盾を指摘すると、銀行側は必ずこう云う。
「月利率=年利率÷12」で求めるやり方は、昔から行われてきた慣行であり、商習慣であると。
そしてこうも云う。
「元本×月数×年利率×1/12」での利息の請求の商習慣もあり、いずれも不当な行為では無いと。
しかし、商習慣は期間20年という長期間の貸借を前提にして作られた商習慣では無いであろう。
また一歩下がっても、それは商人同士での損得を互いに理解し了承しあった商売の世界で作られた商習慣であって、住宅ローンの借りる側は商人では無い。消費者である。
消費者保護の立場を銀行は考えるべきものでは無かろうか。
利息利率は複利で行うという原則で考えるのであれば、月額支払額も複利で考えるものではなかろうか。(年一回の支払であれば別に問題は無いが)
長くからの商習慣云々の主張は、金貸し側の得する身勝手な論理の主張であって、間違った商習慣を続けてきたままで、それをもって正しいと云うことは出来ないであろう。
コンピュータの時代である。
計算は簡単に出来る。
貸す側、借りる側双方に、公平な正しい商習慣に今後は改めるべきでは無かろうかと私は思う。
鑑定コラム1746)「平成元年の住宅ローン元利均等償還テーブル」
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