梶原一騎の漫画「タイガーマスク」の主人公である伊達直人名で、児童養護施設の新一年生になる子へのプレゼントとして、新しいランドセルが届けられた。
この噂を聞いて心ある善意の人々が、続々と各地の児童養護施設に、「伊達直人」の名前でランドセルが送り届けられた。
ある意味で、これはタイガーマスク・伊達直人現象と云ってよい社会現象であろう。
今迄にはそうした現象はなかった。
昨年より今年にかけて、その現象が生じた。今なおその現象は続いている。
この現象が出現したことは、現在の社会、経済、政治、行政状況がその背景にあり、それらが必ず影響している。そして行動する人の思想も反映された結果である。
この伊達直人の名前によるランドセルのプレゼントについて書いた2つのコラムが目についた。
著者及び掲載した出版社の許可を得て、そのコラム記事を紹介・転載する。
一つは、この鑑定コラムで度々紹介している山口県周南市の不動産鑑定士の墨崎正人氏が書かれ、地元の経済誌である旬刊誌『山口経済レポート』(山口県防府市 代表者出穂誠一)に掲載された「幸福へのヒントがある」という題のコラム記事である。
下記に転載する。
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昨年の暮れから漫画「タイガーマスク」の匿名「伊達直人」名で全国の児童養護施設へランドセルを中心に寄附行為が続いている。群馬県前橋でのプレゼントが発端となっているが、またたく間に全国に波及し、当然ながら山口県にも「伊達直人」が登場した。
▼漫画のタイガーマスクは、プロレスラーになった後、匿名で施設にランドセルを送り続けていたが、今回はファンが伊達直人を名乗り、善意の寄附行為を行っている。この行為は、厳冬の上、閉塞感が覆う日本中に心温まるニュースとして人々の心をなごませている。久々のいいニュースだ。
▼今回の現象は日本人の気質を浮き彫りにしている。どこかの国のように、人のものは自分のものとばかり、強欲で傲慢な生き方は日本文化には元来なかったものである。人に寄附するのに匿名、或いは漫画の主人公名でする行為は、日本人の照れ、しゃれ、奥ゆかしさであり、日本のよき伝統、文化でもある。
▼西欧には寄附が日常化しているのに加え、税金の優遇措置もあって、寄附文化が定着している。一方、日本は貧しさ故、自己の生存を優先した過去のDNAから、寄附文化が定着化しなかったとする説があるが、GDPは最近まで長く世界2位を維持し、国民所得も一時はアメリカを凌いで世界1位になったこともある。しかし、競争社会で生き抜き、物質的に豊かになっても、心貧しい民の多い社会では、余りにも寂しい…。
▼困っている人の役に立とうとする心温まる善意の行為は、「人間の幸福」とは何かを示唆するヒントにもなっている。伊達直人現象を単なるブームで終らすことなく、寄附文化が日本に定着し、幸福を実感出来る社会になるよう、官民一体で知恵を出す必要がある。
(不動産鑑定士 キャリア・コンサルタント 墨崎 正人)
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もう一つは、平成23年2月15日に発行されたある雑誌の「編集後記」として書かれた編集後記氏のツイッター的つぶやきである。ツイッターは140字であるが、それよりも60字多い200文字のつぶやきである。
下記に転載する。
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伊達直人の名前によるランドセル10個が前橋の児童養護施設に届けられた。その話が伝わると次々の日本全国の児童擁護施設にランドセルが、伊達直人の名前で届けられた。
ノート、現金、果ては金の延べ棒まで届けられる様になった。
伊達直人とは梶原一騎の原作の漫画「タイガーマスク」の主人公の名前である。1967年〜1971年頃に発表された漫画である。
菅内閣の金持ち、大企業優先、弱者切り捨ての政策に対する、弱者への助け合い精神を見せつけた行為ではなかろうか。助け合って生きてゆこうとする日本人の心の美しさに感動を覚える。
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(追記)2011年3月4日
タイガーマスク・伊達直人現象によって、子供育成基金の存在が多くの人に知れ渡り、寄付金が例年の倍になったという記事を、2011年3月4日の新潟日報が伝える。下記のごとくである。
「柏崎市の「かしわざき子ども育成基金」の存在がクローズアップされ、新規の寄付があった。これで寄付金は例年の倍近くに。」
鑑定コラム907)「「タイタニックに見る日本と欧米の違い」 不動産鑑定士墨崎正人」