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779)帝国ホテル(本社)の宴会部門の売上は客室部門の1.6倍

 都市ホテルにとっては、売上高収入は、客室部門、レストラン部門、宴会部門に分かれる。

 賃貸部門を持つホテルもあるが、それはホテル業務とは業務内容が異なることから検討対象外とする。

 それぞれの部門の売上高の割合は、どれ程であろうか。

 帝国ホテル(本社)を例にして、分析してみる。
 平成23年3月期の決算書で考える。

 客室稼働率は75.8%である。
 各部門の売上高と割合等は、下記のとおりである。割合等の計算は筆者の計算による。

 部門の売上高は、下記の通りである。単位百万円。

    客室部門    7,093
    食堂部門    5,916
        宴会部門    11,584
          計     24,596

 全体売上高に対する部門の構成割合は、

    客室部門    28.8%
    食堂部門    24.1%
        宴会部門     47.1%
          計     100.0%

である。

 客室部門を評点100とした場合の各部門の比率は、

    客室部門    100.0
    食堂部門     83.4
        宴会部門     163.3

である。

 宴会部門は、客室部門の1.6倍の売上高である。

 先の帝国ホテルについての鑑定コラム778)の記事において、「日本経済の落ち込みによる宴会の減少」がホテルの売上に大きく影響を与えると記した。

 上記の分析で証明されたごとく、都市ホテルにとって宴会収入は、客室の収入よりはるかに大きいことから、宴会の減少は都市ホテル経営には大きく影響を与えるのである。

 日本企業が、社長交代による新社長就任の披露宴を、日本経済の景気が悪いから今回は止めとこうというムードは、都市ホテルにとっては大敵である。

 春秋の叙勲に伴う祝賀宴会は、都市ホテルにとって確実に収入として数える宴会であろう。

 帝国ホテル(本社)の分析で見られる宴会部門の売上高が、客室部門の売上高の1.6倍という現象は、帝国ホテルのみに見られる現象であろうか。他のデータで検討する。

 『銀行法務21別冊 旅館・ホテル経営の再生と実務』(株式会社経済法令研究会発行 2004年)という雑誌がある。

 その雑誌のP11に、株式会社KPMGエフエーエフの吉岡雅博氏の「事業としてみた旅館・ホテル経営の特徴とその違い」という課題の論文がある。

 その論文の中で、吉岡雅博氏がユニフォーム・システム(米国ホテル統一会計基準)による都市ホテルの例を発表している。(同誌P16)

 それによると、客室500で、客室稼働率84%の条件のホテルの売上高を以下のごとく記す。割合等は筆者の計算による。

                     売上高千円          構成割合   客室を100として
   客室部門    3,066,000           23.2%           100.0
   食堂部門     4,500,000           34.0%           147.0
      宴会部門     5,660,000           42.8%           185.0
        計           13,226,000          100.0%

 ユニフォーム・システムのホテル例では、宴会部門の売上高は、客室部門の売上高の1.8倍である。

 これから見ると、帝国ホテル(本社)の宴会部門の売上高が、客室部門の1.6倍という数値は、特別に高い売上高であるとは言えない。


  鑑定コラム778)
「平成23年のホテル業界は震災により厳しい経営環境に」

  鑑定コラム936)「平成24年4〜6月の帝国ホテルの業績は著しい回復」


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