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778)平成23年のホテル業界は震災により厳しい経営環境に

 帝国ホテルの平成23年(2011年)3月期の決算が発表された。

 売上高、営業利益は、下記の通りである。

                    売上高       営業利益        営業利益率
 23年3月期        50,915百万円    1,785百万円    3.5%
 22年3月期        50,117                709              1.4

 客室稼働率は、本社ホテルでは、

      
            23年3月期     75.8%
            22年3月期     71.8%

である。

 帝国ホテルは、日本経済の落ち込みによる宴会の減少、新型インフルエンザの流行、菅政権の尖閣諸島沖の中国漁船に対するお粗末な外交対応処理による観光客減より何とか立ち直ったかと思ったら、今度は東北大震災による地震と東京電力福島第一原子力発電所の損壊の放射能の放射によって、それまでの業績回復傾向は、一気にご破算になってしまった。

 帝国ホテルが、平成23年5月12日に発表した平成23年3月期決算短信で、平成23年のホテル業界について、次のごとく述べている。

 「訪日外国人の大幅な減少による宿泊需要の低迷、企業の宴会利用の減少や電力需給対策に伴う営業活動の一部縮小など極めて厳しい経営環境となると思われます。」

 同じ帝国ホテルが4ヶ月前の決算短信(平成23年3月期第3四半期 平成23年1月28日発表)では、次のごとく述べている。

 「ホテル業界においては、年度前半頃より中国を中心とするアジアからの訪日外国人が増加したことなどにより、客室稼働率に改善傾向が見られました。」

 帝国ホテルの平成23年1月の決算短信と平成23年5月の決算短信において、僅か4ヶ月しか時間の経過は無いにもかかわらず、ホテル業界の著しい経営環境の悪化への変化を知る事が出来よう。

 平成23年3月11日の東北大震災及び東電福島第一原発の損壊による放射能の放射のホテル業界に与えた影響は、甚だしいものである。

 3月11日以前は、中国を中心とするアジアからの訪日外国人が増加して、ホテル業界は業績回復して来た。

 しかし3月11日以後は、訪日外国人の大幅な減少による宿泊需要の著しい低迷が生じた。

 では、どれ程の訪日外国人の人数が減少したのか。
 具体的減少数を、日本政府観光局(JNTO)発表の数値で見てみる。
 下記の通りである。23年4月、5月及び23年1月〜5月の総計は推計値である。

               平成22年    平成23年     伸び率
 1月     640,346人    714,099人     11.5%
 2月     664,982人    609,398人      2.2%
 3月     709,684人    352,666人    ▲50.3%
 4月     788,212人    295,800人    ▲60.5%
 5月     721,348人    358,000人    ▲50.4%
  小計    3,524,572人      2,400,000人

 平成23年2月までは+の増加であったのが、翌月の3月以降の訪日外国人客数は、一気に対前年同月比で▲50%を越える減少である。

 平成23年4月の対前年同月比の訪日外国人客数は、▲60.5%である。
 同月の帝国ホテルの客室稼働率は、日本経済新聞社の調査によれば33.8%であると日経は報じる。平成22年4月の帝国ホテルの客室稼働率は、83.7%であるから、

              33.8%
           ─────= 0.403                                      
             83.7%

▲60%の減少である。
 訪日外国人客数の減少割合と軌を一にしている。

 帝国ホテルは、3月11日の東北大震災及び東電福島第一原発の損壊の放射能の放射による売上高の影響は、約10億円という。

 この約10億円という損失の金額を、帝国ホテルの発表決算短信より検討してみる。

 平成22年12月末の第3四半期までの売上高は、38,986百万円であった。
 この時の平成23年3月期の予想売上高は、帝国ホテルは52,800百万円と言っていた。

 このことより平成22年12月末においての23年1月〜3月の3ヶ月の予想売上高は、

      52,800百万円−38,986百万円=13,814百万円

である。

 1月〜3月の日数は、

            1月     31日
            2月     28日
            3月     31日
            計      90日
 
である。

 一日当りの予想売上高は、

      13,814百万円÷90日=153.48百万円

である。

 1月1日〜3月11日までの日数は、70日である。

 平成23年1月〜23年3月11日までの70日間の予想売上高は、

      153.48百万円×70=10,744百万円

である。

 平成23年3月期の実際の売上高は、50,915百万円であった。

 平成23年1月〜3月末の実際売上高は

      50,915百万円−38,986百万円=11,929百万円

である。

 このうち、平成23年3月11日迄の予想売上高は、10,744百万円であるから、3月12日〜3月31日までの売上高は、

      11,929百万円−10,744百万円=1,185百万円

である。

 この間の得べかりし売上高は、

      153.48百万円×20日=3,070百万円

である。

 損失額は、

      3,070百万円−1,185百万円=1,885百万円

である。

 帝国ホテルは、約10億円の売上高損失というけれども、私の計算では18.85億円の損失と計算される。

 3月12日〜3月31日の20日間の売上高は、1,185百万円と求められた。

 一日当りの売上高は、

      1,185百万円÷20=59.25百万円

である。

 それ以前の一日当りの売上高は、153.48百万円であるから、

                59.25百万円
             ───────  = 0.386・・・・・・▲61.4%           
               153.48百万円

である。

 3月12日以後の売上高は、それ以前の売上高の▲61.4%ダウンである。
 その売上高減の状況が、翌4月以降も続いているということと推定される。
 
 平成23年のホテル業界は、業績がやっと立ち直って来たと思っていたが、3月11日の東北大震災及び東電福島第一原発の損壊による放射能の放射によって、厳しい経営環境に陥ってしまったといえよう。


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