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817)分譲マンション土地には地積大の減価は行わない

 ある不動産鑑定書がある。超高級分譲マンションを評価した鑑定書である。

 都市の高級住宅地に所在する2000uの規模の土地に立つ超高級分譲マンションがある。

 その分譲マンションの価格を求めるのに、原価法を使用して求めている。
 原価法で求めた価格を鑑定評価額として採用していた。

 分譲マンションの価格を求めるに原価法の手法を採用することは間違いではない。
 原価法は、土地建物価格より当該マンションの価格を求める手法である。

 標準規模画地の面積を450uとし、取引事例の土地面積は300u前後の事例を使用して当該地の標準価格を求めている。

 個別要因として、地積大の要因で△10%減額している。

 その理由として、

 「規模が大きいことより、需要者が限定されることによる市場性の減退を勘案」

と述べる。

 この求め方は適正であろうか。
 地積大の減価を施した不動産鑑定士は、自分の求め方は正しいんだと当然主張し、そう思っているから地積大の減価を行ったのであろう。

 しかし、地積が標準画地の規模より大であれば、常に地積減価を行えばよいと言うものでは無い。

 税法は、相続財産の広大地土地の減価をなかな認めないようになったのは何故か。
 高い土地価格にした方が、相続税を多く取れるからという理由を挙げる人も居るであろうが、その様な理由で広大地減価を認めないということはない。

 地積大、広大地の土地は、小規模土地に比すれば確かに地積大であるが、その土地の効用を考えた場合、地積大であることによって土地の効用が増大する場合がある。

 土地の効用が増大する場合も、土地減価する必要があるのか。
 土地効用増というプラスの要因を何故考えないのか。検討してもよいのではないのか。

 土地の効用が増大することが充分予測出来る地積大の土地には、広大地の土地価格減価を認めないという考えがあることから、税法は広大地減価を地積大の土地に全て無条件で認めていないのであろう。

 ここで間違えないで欲しい。
 賃料の基礎価格の土地価格で、当該土地上の建物が、容積率で建築基準法違反で延床面積の建物は大きく法定容積率を超過している建物の土地価格を、収益増即ち土地効用が向上するといって土地価格に建付増加修正をしていたとんでもない不動産鑑定書があったが、この様なものとは異なることを。

 国土交通省は、マンション用地等の大規模画地の場合、国土利用計画法の地積大による修正は行わないという価格指導がなされている。

 『国土利用計画法一問一答価格評価論』(地価調査研究会編著、大成出版社、1999年)P76で、

        ○マンション等の敷地の基礎価格となる土地価格

についての国土交通省の回答は、次のごとくである。

 「(マンション等)の土地価格は、当該マンション等の敷地の存する近隣地域または同一需給圏内の類似地域の中の標準地もしくは基準地の価格から土地価格比準表を用いて比準を行うことにより求めるものとするが、この場合の比準にあっては土地価格比準表の画地条件は比較しないで行うこととしている。」(注)上記のかっこ書は筆者記入。

 土地価格の比準表の画地条件とはどういうものかといえば、
   a,地積・間口・奥行き・形状等
   b,方位、高低等
である。

 マンションの土地の場合、地積大の土地の価格減の修正は行わないということである。

 超高級分譲マンションは、高級住宅地にある。
 地積が大きく、緑等環境が良いことが必要条件である。
 超高級分譲マンションは、中級分譲マンションの価格よりも遙かに高い。

 超高級分譲マンションの土地に、地積大であるからといって土地価格減が必要なのか。

 超高級分譲マンションの土地が面積大として価格減価するとしたら、マンション価格は安くなってしまう。下手すると中級マンションの土地価格になってしまう。
 それはおかしいであろう。
 超高級分譲マンションとしての効用増が存在しているであろう。

 超高級分譲マンションは、建物が超豪華であるから超高級分譲マンションであると言うものでは無い。

 上記のある不動産鑑定書は、下記のごとく求められていた。

 土地価格は、土地面積が大であるからといって土地価格減をする。
 建物の再調達原価を、延床面積当りの建築単価を専有面積に乗じて求めている。
 つまり共用面積部分の建築工事費が全く考えられていない。
 共用部分はゼロ円で作られたと考えているのか、或いは建設会社、分譲マンション会社が無償寄付してくれたと考えているようである。
 42%通達の要因も全く考えない。

 こうして求められた分譲マンションの価格は、とても超高級分譲マンションの価格とはいえない。否、分譲マンションの適正な価格を評価していることすらいえない。

 超高級分譲マンションの価格が、中級分譲マンションの価格程度或いはそれ以下に求められていた。

 この様な分譲マンション価格の求め方が適正な不動産鑑定だといって、大手を振って罷り通っている。大手を振って罷り通ってもらっては、甚だ迷惑する。
 止めてくれないだろうか。

 
  鑑定コラム803)
「超高級マンションの価格」

  鑑定コラム790)「分譲マンションの再調達原価には分譲業者の利潤等が加算される」


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