○鑑定コラム
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読みにくく、甚だ分かり難い不動産鑑定書に時々出会う。
不動産鑑定士の責務として、5つの項目がある。
今更それを言われなくとも分かっていると反論されるかもしれないが、その分かっていることが行われていないことが多い。
その5項目の要点のみ再確認の意味で、下記に記す。
1.不断の勉強と研鑽
2.鑑定評価の結果を分かり易く説明する
3.公平妥当な態度
4.専門職業家としての注意
5.自己能力を越えた鑑定を引き受けてはいけない
この5つの責務の中に、不動産鑑定書は分かり易く書かなければならないというものがある。
これは、依頼者に対しても、又鑑定書は第三者が読むこともあるため、その人々が鑑定書を読んで分かる様に書かなければならないということである。
その分かり易さも、科学的な根拠に基づいた合理性あるものでなければならないことは云うまでも無い。
土地価格の取引事例比較法(求められる価格は比準価格という) の記載で、下記の様に記載する不動産鑑定書があった。
(地域要因の修正)
接近条件・道路条件・環境条件・行政的条件
135
──────
100
事例地の地域は対象地の属する地域よりも35ポイント優れる。
(個別的要因の標準化)
画地条件等
110
─────
100
事例地は角地等で標準画地よりも10ポイント優れる。
とする。
ここで上記地域要因、個別的要因の分数の数値の位置を良く見ていただきたい。
分子が135、110になっていることに注目して頂きたい。
これら要因検討を経て、比準価格一式計算として、次のごとく計算する。
事情 時点 標準化 地域格差 方位
100 103 100 100 104
210,000円×── ×── ×── ×── ×─── ≒ 151,500円
100 100 110 135 100
方位を見るべきかについては、私は異論を持って居るが、それについてはここでは触れない。
上記一覧計算式の標準化、地域要因格差の分母の数値に注目して頂きたい。分母の数値が110、135である。
地域要因の修正の検討においては、修正率は135/100である。
それが比準価格の一式計算では、同じ地域要因が100/135となって記載され、計算される。
どうして分子、分母が逆になるのか。
不動産鑑定書の同一頁に、分子、分母が逆になって使用されている事を目にすれば、まず殆どの人が驚く。
裁判官などは、間違い無くびっくりする。
そして何故逆になるのかと疑問を呈する。
135/100=1.35
100/135=0.741
で、計算値は異なる。
同じでは無い。
同じになるには、1.35の逆数、即ち1/1.35にならなければならない。
しかし、何ゆえに逆数にしなければならないのか。
それは数学的に合理的に成りたつ理論なのか。
それが、さっぱり私には分からない。
個別的要因の標準化においても、分子、分母が逆転している。
比準価格の一式計算が正しいとするならば、事例地の地域が対象地の地域よりも、評点で35ポイント優れると言うのであれば、地域要因の修正率の検討の段階で、100/135とすればよいのである。
個別的要因の標準化も、事例地は角地等の要因を持ち標準画地よりも10ポイント優れた画地条件にあるのであれば、100/110にすれば良い。
そのようにすれば、数学的にもすっきりして、整合性がとれる。
わざわざ読む人を戸惑わせ、理解不能な状態にさせ、挙げ句の果てに不動産鑑定書は分からない、難しいものだという気持ちに読む人を陥らせる必要は無かろう。
逆数で計算すれば、結果は同じだから正しい求め方とか、良いではないのかという主張が当然あるであろうが、そう言う主張は詭弁である。
詭弁を弄する不動産鑑定書を書くべきではなかろう。
それは不動産鑑定書の信頼を失うだけである。
他人が書いた分子、分母が逆転している不動産鑑定書について、
「田原さん、分子、分母がどうして逆になって計算されるのか分からないが、教えて欲しい。」
と相談がある。
その様なことは、
「鑑定書を書いた不動産鑑定士本人に聞いてくれ。」
と言いたいのだが、仕方なく、説明してやっている。
どうして私が、分かりにくい鑑定書を書いた不動産鑑定士に代わって説明してやらなければならないのかと、いささか怒りがあるが、これも不動産鑑定士としての信用を維持する為にはやらなければならないと思い対処している。
分子、分母が逆になる鑑定書の作成は止めて頂けないものか。
鑑定コラム646)「自らの間違いを正当であると主張する不動産鑑定士がいるいる
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