○鑑定コラム
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地主が取得する場合の当該借地権の価格について、鑑定コラム966)「名儀書替料を地主が借地人に支払うというおかしな鑑定」で論じた。
その際算定例として『「借地非訟事件における財産給付額等算定事例集」第5集』(最高裁判所事務総局編 財団法人法曹会 昭和59年9月25日発行)を引用した。
その算定例集を見ていたところ、借地権価格の求め方として殆どの算定例が借地権価格割合を更地価格に乗じて求めている。
そうした中で唯一差額地代からの手法による借地権価格を求めていたものがあった。
同算定例集P363にある。
その唯一あった借地権価格の求め方を、下記に転載紹介する。
次のごとくの求め方である。単位はu当り円である。
「経済地代 291,000円(更地価格) × 0.06(利回り) =17,460円
現行地代 月32,900円×12ヶ月÷289.97u(面積)=1,361.52円
差額地代 17,460円−1,361.52円=16,098.48円
(u当り借地権価格)
16,098.48円×11.4699(年6%・20年の年金現価率)=184,647円」
経済地代は、適正な実質地代をいう。
算定例の経済地代の6%の利回りについては、少し疑問を感じる。
経費を含めた地代利回りで経済地代を求めるのも間違いではないが、純地代に公租公課を加算して経済地代を求めたほうが良いと私は思うが。
差額地代による借地権の価格は大要上記のごとく求める。
この求められた借地権価格は、真の借地権価格であり、これに名儀書替料として10%の金額を加えたものが、第三者に譲渡する場合の借地権価格である。
更地価格に借地権価格割合を乗じて求められた借地権価格と対比検討されるものは、10%の名儀書替料を加えた差額地代の借地権価格である。
不動産鑑定評価基準では、差額地代からの求め方について、次のごとく記述する。
「賃料差額のうち取引の対象となっている部分を還元して得た価格」
この記述から云えることは、差額の全部が借地権価格を形成するのでは無く、取引の対象になっている部分の差額の還元の価格である。
上記算定例は、差額の全部を還元して借地権価格を求めているが、これは全部の差額で借地権価格が形成されていると認めて求められたものと解釈する。
上記算定例では、差額全部が取引の対象として100%の修正としているが、実務の評価に在っては、「取引の対象となっている部分」は、差額の100%(全部)なのか90%なのか70%なのかを適正に把握することは難しい。
鑑定評価基準は、「取引の対象となっている部分」を具体的にどの様に把握すべきか判断の基準となる指針を示していない。
この点においても、不動産鑑定評価基準はあやふやである。
それ故、不動産鑑定士の判断の違い、力量の差により、求められる価格にかなりの差異が生じることになり、果たしてこれが評価基準足り得る鑑定評価基準といえるものなのか。
鑑定コラム966)「名儀書替料を地主が借地人に支払うというおかしな鑑定」
鑑定コラム369)「定期借地権に借地権価格は発生するのか」
鑑定コラム133)「借地貸ビルと所有地貸ビルで賃料に差があるのか」
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