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1074)収益分析法の純収益は営業利益ではないのか

 企業収益より賃料を求める手法を収益分析法というが、その収益分析法に使用する純収益は、営業利益と私は思っていたが、最近、そうでない鑑定評価書にお目にかかった。

 その賃料鑑定書は、純収益を次のごとく求めていた。

              売上高            A
              原価及び一般管理費            B
              営業利益  C=A−B           C
              営業外利益          D
              経常利益(純収益) E=C+D     E

 経常利益を本件企業の純収益とし、これに経営配分利益を控除して、不動産配分利益を求め、求めた不動産配分利益から収益賃料を求めていた。この求め方の途中一部にも少し問題があるが、今回はそれについては述べない。

 営業外収益とは、本業の営業以外の収益で、預金利息、株式配当等をいう。

 営業外費用とは、銀行の借入利子等をいう。

 営業外利益とは、

     営業外収益−営業外費用=営業外利益
   
をいう。

 経常利益とは、

          営業利益+営業外利益=経常利益

をいう。

 収益分析法は、本業の儲けである営業利益で考えるものであり、本業以外で儲けた利益である営業外利益を含めては考えない。

 収益分析法の純収益は、本業の儲けである営業利益を云うのであって、経常利益を云うのではない。

 不動産鑑定評価基準は、

 「収益分析法は、一般の企業経営に基づく総収益を分析して対象不動産が一定期間に生み出すであろうと期待される純収益を求め、これに必要諸経費を加算して求める」

という。

 純収益がどういう性格のものかについては、鑑定評価基準は言及していない。

 価格を求める収益還元法においては、賃貸以外の事業に供する不動産にあっては、総収益は売上高とすると鑑定評価基準は云う。

 総費用は売上原価、販売費及び一般管理費等とすると同基準は云う。

 純収益は、

      総収益−総費用=純収益

と同基準は云う。

 鑑定評価基準が、純収益の定義について、総収益から総費用を控除した金額を純収益とするという甚だアバウトな定義をしているため、それは営業利益なのか経常利益なのか分からない不動産鑑定士が出現し、経常利益を純収益として収益分析法を行う鑑定書が、賃料紛争の一方の当事者から証拠書類として提出されてくるのである。

 これでは紛争を混乱させるだけである。
 とても専門職業家の適正な判断であり意見であると云えるものでは無い。

 不動産鑑定評価基準が、評価基準足り得ない部分が、ここにも見受けられる。

 それとも、不動産鑑定評価基準は、経常利益を純収益と認識する不動産鑑定士が出現することなど無いであろうと思って明示しなかったのであろうか。

 経常利益が純収益であるとする不動産鑑定書が、堂々と主要中央大通りを我が物顔して闊歩しているのである。

 そのうち、営業利益が純収益であると主張する私の方が悪く、間違っているとされ、

 「鑑定評価基準は、営業利益を純収益にせよとは云っていない。
 営業利益が純収益であると決めつける田原鑑定士の考えの方が間違っており、田原鑑定士の方が鑑定評価基準違反である。
 当方の鑑定評価は、鑑定評価基準に則って行っており、適正である。」

と主張する当該不動産鑑定士の反論書と、ほぼ同じ内容の相手側代理人弁護士の準備書面を読むことになろうか。


  鑑定コラム1071)
「収益分析法についての1つのコメント」

  鑑定コラム1068)「実質賃料、新規実質賃料、実際実質賃料」

  鑑定コラム32)「企業収益還元法」


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