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32)企業収益還元法

 企業収益還元法とは収益還元法であるが、一般的に収益還元法というと賃貸ビル、賃貸マンション、アパートの賃料収益を資本還元して求める価格分析手法を指す。

 これに比し企業収益還元法は、工場等の企業収益から不動産価格求める手法である。
 賃料収益からの賃貸ビル等の収益還元法とは分析手法が異なることから、あえて区別するために先頭に「企業」をつけて、差異を明確にしているのである。
 この呼び方が不動産鑑定業界で定着している訳ではない。私が勝手に便宜的につけたに過ぎない。

 企業収益は不動産、資本、労働、経営の協働によって得られたものである。
 不動産収益(不動産配分利益)は、企業収益より資本に属する資本配分利益、労働に属する労働配分利益そして経営に属する経営配分利益を控除して残ったものが不動産配分利益と『鑑定基準』はいう。

 労働配分利益は労働者の賃金として既に配分し終わっている。
 資本配分利益は資本投下した株主の利益である。これは法人企業の資本配当率の統計データより求められる。

 問題は経営配分利益をどのように求めるのかである。

 この経営配分利益の明確な求め方が無く、かつわからない為に企業収益還元法は有用性を認めながらも、ここ30年余放置され殆ど使用されてこなかった。

 しかし、民事再生法適用企業の不動産価格を求めるには、企業収益による土地建物価格の把握がどうしても必要であり、企業収益還元法の分析手法は難しいからと言って、いつまでも放置されていることは許されなくなってきた。
 特に、不動産価格評価の専門家としてのプロの職業家であるにもかかわらず、「出来ません」、「わかりません」といって世間で通用するものではない。

 経営配分利益にこだわっていては、いつまで経っても解決はつかない。先に進めない。

 不動産配分利益とは賃料である。
 とすれば工場家賃を統計的に先に求めて、企業収益より資本配分利益、不動産配分利益を控除した残りの全てのものを経営配分利益として考え、とりあえず1つの経営配分利益を求める。
 そして同じ分析方法で企業の同一業種の平均値を求めれば、その数値はそれなりの根拠のある数値であるから、その数値を経営配分利益とすれば良いのでは無いかと私は考えた。

 一次的には、
     経営配分利益=企業収益−法人税等−資本配分利益−不動産配分利益
によって経営配分利益を求めるのである。

 これで求められた経営配分利益率は0〜32%であった。
 業種によりかなりのぱらつきがあった。
 経営配分利益率の平均は16.2%である。

 資本配分利益率の平均は13%である。

 これら数値から企業収益還元法の不動産配分利益は、企業収益(営業利益)を100%とし、法人税等を企業収益の50%とすると、次の式で求められる。

 不動産配分利益=企業収益−(法人税等+資本配分利益+:経営配分利益)
         = 100−(50+13+16.2)
         = 20.8
         ≒ 21
不動産配分利益は企業収益の21%ということになる。 (『賃料<家賃>評価の実際』 p429 清文社)

この不動産配分利益は工場企業にあっては、機械設備装置等の償却資産も含めた利益である。

 機械設備装置等の償却資産に配分される割合を20%とすると、
     21%×(1−0.2) = 16.8%
が土地建物に配分される利益である。
 この利益を資本還元すれば、企業の土地建物価格は求められる。
但し、資本還元する利回りは4〜5%の低い数値では無く、平均18.7%程度の利回り(グロス利回り)である。

 企業収益還元法は 『民事再生法と資産評価』  p71〜223に詳細に分析論証されている。

 実際に日本全国に散在する十数工場に企業収益還元法を適用して、土地建物の価格を求めたが、そのうちの一つを具体例として『Evaluation 』4号「企業収益還元法の具体的分析」p81(清文社)として説明している。
 そちらを参照されたい。


  鑑定コラム2)「都企業純収益の10%を賃料」

  鑑定コラム17)「洞察力に脱帽・不動産配分利益」

  鑑定コラム154)「不動産の利回り(割引率とターミナルレート)」

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