○鑑定コラム
フレーム表示されていない場合はこちらへ
トップページ
田原都市鑑定の最新の鑑定コラムへはトップページへ
前のページへ
次のページへ
鑑定コラム全目次へ
新潟の湯沢のリゾートマンションの価格を調べて見た。
その調査の中の2つのデータについて述べる。
1つは、上越新幹線越後湯沢駅より徒歩3分に建つリゾートマンションの売り価格の推移である。
平成2年に建築されたSRC造17階建てで、300戸程度の居室を持つリゾートマンションである。平均居室面積は43uである。
このリゾートマンションの2005年から2013年までの売り物件の平均価格は、下記である。
u万円 件数 標準偏差 変動係数%
2005年 11.5 7 0.449 3.9
2006年 13.9 12 3.453 24.8
2007年 12.8 24 2.347 18.3
2008年 11.6 36 1.236 10.7
2009年 11.0 14 1.739 15.8
2010年 10.2 41 1.703 16.7
2011年 9.5 70 2.492 26.2
2012年 9.9 45 1.986 20.1
2013年 8.6 21 1.835 21.3
変動係数とは、
標準偏差
────── × 100
平均値
で求めた数値である。平均値に対する標準偏差の割合である。
2013年は1月〜8月までの売り物件の平均である。
湯沢のリゾートマンションは、平成2年〜4年の平成バブルの時に建設された時の分譲価格が最高値であり、それ以後は価格は大幅に下落している。
新築分譲時の価格の10〜15%の価格にまで落ち込んでいる。
上記分析したマンションの価格を見ると、
2005年 u当り 11.5万円
2006年 u当り 13.9万円
2007年 u当り 12.8万円
の価格推移が見られる。
下落していた価格が、2006年、2007年で一時反発して値上がっている。
これは、不動産ファンドバブルの影響ではなかろうかと推測する。
不動産ファンドバブルがはじけてから、再び価格下落の傾向になり、2013年8月現在では、u当り8.6万円になり、坪当り30万円の価格を切った。
u当り8.6万円は、新築分譲時の価格から見れば、甚だ安い価格である。
ではその価格で売れるかいうと、それは保証出来ない。
それは購入者よりも圧倒的に売却物件が多く、激しい下値競争が生じているためである。2011年に同じ1棟のマンションから70件の売り物件が出ている事実からそれが伺えよう。
東京にあっても一つのマンションから1年で70件もの売り物件が出た場合、それに全て購入者がつくということは甚だ困難であり、あり得ない。当然価格は暴落する。
もう1つの調査については、湯沢のリゾートマンションの競売落札価格についてである。
湯沢町の裁判所管轄は、新潟地方裁判所長岡支部である。
新潟地裁長岡支部の南魚沼郡のマンションの競売物件を調べて見た。
南魚沼郡のマンションと言っても、実質的には湯沢のリゾートマンションの競売物件ばかりである。
競落された湯沢町全体のリゾートマンションの件数は、
平成25年1月〜8月 28件
平成24年 39件
平成23年 36件
である。
今年(平成25年)1月〜8月に競落された物件のうち、上越新幹線越後湯沢駅から1kmの範囲の物件を選び、最低売却価格、落札価格等について、下記に記す。
所在
|
新幹線越後湯沢駅
|
最低売却価格円
|
落札価格円
|
面積u
|
築年
|
湯沢町大字湯沢
|
900メートル
|
10000
|
108000
|
26.89
|
平成2年
|
湯沢町湯沢二丁目
|
150メートル
|
40000
|
40000
|
19.34
|
昭和55年
|
湯沢町大字湯沢
|
900メートル
|
10000
|
150000
|
38.95
|
平成2年
|
湯沢町大字湯沢
|
600メートル
|
10000
|
350000
|
42.58
|
昭和54年
|
湯沢町大字湯沢
|
270メートル
|
1020000
|
1121000
|
37.83
|
昭和63年
|
湯沢町大字湯沢
|
900メートル
|
290000
|
232000
|
24.16
|
昭和62年
|
湯沢町大字湯沢
|
900メートル
|
10000
|
8000
|
38.95
|
平成2年
|
最低売却価格とは、裁判所が評価人不動産鑑定士に依頼して決めた価格で、この価格が競売の基準となる価格である。
上掲の最低売却価格として、10,000円のものが多い。
10,000円の価格?
湯沢のリゾートマンションが1万円で買えるのかと、1万円の価格を奇異に思われる人がいると思う。
これは、競売の適正な価格よりも管理費の滞納額が多く、滞納額を適正価格より差し引くとマイナスの価格になってしまう。
マイナスの価格を競売の最低売却価格とする訳には行かない。
備忘価格として、1万円の金額を付けているのである。
競売だから債務は全て無くなるのでは無いのかと思われるかもしれないが、管理費は優先債権であり、滞納管理費は競売によって債務ゼロの対象にはならない。落札者に請求が行く。
マンションの適正金額と管理費の滞納額の関係は、具体的には次のごとくである。
当該リゾートマンションの売買の適正価格は、
8.6万円×0.6≒5.2万円
とする。
8.6万円とは、前記の売り物件の平均価格を採用する。
0.6は、売り価格に対する実際の取引価格の修正割合である。益々市場は悪くなっていることから、0.8程度の修正では市場性を得ることは出来ないと思われ0.6の修正とする。
建物面積を30uとする。
5.2万円×30u=156万円
この価格が市場の取引価格である。
競売は強制的な換価であり、通常の不動産取引の価格とは市場が異なるとして、競売要因としての価格修正が行われる。
この修正率は0.6の競売修正が多いようである。
いわば早期売却要因といってもよい要因修正である。
この修正は、前記の売り価格の取引価格の修正とは異なる。
0.6と同じ割合になっているが、たまたま同じ割合になっただけである。
156万円×0.6=93.6万円
競売の基準価格は93.6万円である。
ここで、当該マンションの管理費の滞納は、下記のごとくであったとする。
管理費 月額20,000円 滞納額 960,000円(4年分)
修繕積立金 月額2,000円 滞納額 96,000円(4年分)
温泉使用料 月額200円 滞納額 9,600円(4年分)
町内会費 月額200円 滞納額 9,600円(4年分)
小計 1,075,200円
損害金 管理費等滞納額の損害金である。計算が複雑であることから
次の計算の金額とする。
1,075,200円×0.15=161,280円
管理費等の金額は、
1,075,200円+161,280円=1,236,480円
である。
先に当該マンションの競売基準価格は、936,000円と求めた。
競売基準価格と滞納管理費等の金額とを比較すると、
競売基準価格 936,000円
滞納管理費等の金額 1,236,480円
で、滞納管理費等の金額の方が高額である。
競売売却価格を、▲300,480円とする訳には行かない。
止むを得ず備忘価格として、10,000円の金額を最低売却価格として表示されるのである。
10,000円の金額がついているのは、上記の理由からで、逆に10,000円の最低売却価格がついていたら、滞納管理費等の金額が競売基準価格を上回っていると考えてよい。
なお、最低売却価格10,000円であるのに、8,000円で落札している物件がある。290,000円が最低売却価格で、232,000円で落札しているものもある。
これは、最低売却価格の2割引(8掛け)価格までは落札可能価格とされているためである。
10,000円×0.8=8,000円
290,000円×0.8=232,000円
この2割引まで落札可能にすることに、競売の法律改正に際して、一人の不動産鑑定士が尽力した。
最高裁判所・法務省の官僚が勝手に法律で決めたのではない。
2割引まで落札可能決定は、一人の不動産鑑定士の献身的な努力によって法律化されたのである。
このことについて、多くの評価人不動産鑑定士が知らないことは残念である。
鑑定コラム373)「越後湯沢のリゾートマンション価格は新築時の12%(2007年夏)」
鑑定コラム43)「熱海・湯沢のリゾートマンション」
鑑定コラム251)「早期売却価格」
▲
フレーム表示されていない場合はこちらへ
トップページ
前のページへ
次のページへ
鑑定コラム全目次へ