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1137)地代評価で収益分析法は有用な手法である

 最近どういうことか分からないが、地代の鑑定が多くなった。

 訴訟中の地代の鑑定書が手許に4件ある。

 いずれの鑑定書も収益分析法を行っていない。

 やらない理由が記してある鑑定書もあるが、最有効使用の状態にないから適用しないという理由のものもある。

 契約減価が存在しているのに、最有効使用でないから収益分析法を行わないという理由はないであろう。

 契約減価が発生していることを全く知らないようである。

 地代評価の収益分析法というのは、評価対象地に、土地賃貸借契約が許す範囲内の賃貸建物を想定し、その家賃収益より地代を求めるものである。

 企業収益から地代を求める手法も収益分析法と云うが、経営に配分する利益、資本に配分する利益の把握が難しく、その配分利益割合の理論的確立が未だなされていないことから、あまり行わない。

 賃貸建物の家賃からの分析の場合、経営、資本の配分利益を考える必要がないことから、利用しやすい。又、信頼性も高い。

 地代評価では、賃貸建物を想定した収益分析法からの地代分析は有用な手法である。

 宅地の地代は何故発生するのか。

 この命題に対する最良の答が得られるのは、家賃収益からの分析による地代発生論である。

 私は、地代評価にあっては、収益分析法が最も信頼出来る分析手法ではないかと思っている。

 収益分析法を行っていない地代の鑑定書を見ると、鑑定書を書いた人は、果たして当該土地の産み出す収益をどれ程正しく理解、把握して地代を求めているのであろうかという疑問が生じる。

 前記した4件の地代鑑定書も収益分析法を行っていないことから、同様な疑問を持った。

 賃貸建物を対象地に想定することによって、借地権の問題点、知らなければならないものが分かってくる。

 対象地にRC造の堅固な建物を建てることが出来るか、或いは非堅固の建物しか建てることが出来ないということが最初に分かってくる。

 それに伴い、4階建の建物が建てられる土地価格を、基礎価格に採用して良いものかと疑問が生じてくる。

 周辺には4階建の建物が建っている。

 4階建の建物が建つことを前提にした比準土地価格は、最有効使用の土地価格である。土地賃貸借契約によって、非堅固の2階建建物しか建てることが出来ないとなると、それは最有効使用では無い土地利用となる。とすると土地価格に減価が生じるのではないのか。

 即ち、「契約減価」の問題にぶつかる。

 建物の賃料はいかほどかという知識も必要になる。

 得られた純賃料から家賃利回りがどれ程かが分かる。

 この家賃利回りと地代利回りの関係はどうなんだろうかと云う疑問も生じる。

 家賃利回りが分かれば、5%の地代利回りなどあり得ないということが分かろう。

 家賃利回りに近いとか家賃利回りを越える地代利回りなどあり得ないと云うことも分かろう。

 収益分析法をやらないため、或いはやった事がないためか、契約減価で木造2階建しか建たない土地であるにも係わらず、4階建の建物が建つ土地の価格(更地価格)を基礎価格にして、その基礎価格に、5%或いは4%の期待利回りを、根拠も示さずに乗じて純地代を求めるということを行う。

 5%の期待利回りを更地価格に乗じて地代を求めたら、無茶高な実質地代が求められる。

 その無茶高な実質地代から求められた差額配分法の地代は、甚だしく高い地代となる。

 その甚だ高い差額配分法の地代は、借地権者が有する借地権価格の一部が削り取られて、地代として土地所有権者の懐に入ることになるのである。

 土地所有権者は大喜びである。

 借地人は人が良いということより、そのことなど全く分からない。

 借地権者の権利価格である借地権価格の一部が削り取られて、地代として土地賃貸人に渡っていると云うことを、知ってか知らずか、その求められた地代が適正であるとして地代鑑定書を書く人も書く人である。

 私の云っていることが分かるであろうか。
 当鑑定コラムの読者に不動産鑑定士がいたら、今迄にその様な地代鑑定書を書いたことはなかろうか。
 弁護士の方は、裁判でその様な地代鑑定書を見たことはなかろうか。

 手許にある4件の地代鑑定書は、全てその様な地代鑑定書である。

 家賃評価においては、企業収益の経営配分利益等の把握が難しいことから、生半可な知識でもってでは収益分析法はやらない方が良いが、地代評価においては、家賃収入からの収益分析法はやらなければならない手法である。


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  鑑定コラム1319)「地代の基礎価格は、更地価格である」

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