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1286)還元利回り0.2%の下落は、地価4.5%の上昇

 鑑定コラム1284)「リートの事務所の還元利回りは4.2%」で、東京都心5区のJリートの事務所ビルの還元利回りは、

            平成26年6月    4.2%
            平成25年6月    4.4%

と記した。

 1年間で、還元利回りは0.2%下がった。

 この還元利回り0.2%の下落は、土地価格にどれ程の影響を及ぼしていることになっているであろうか。

 還元利回りは、

                 純賃料
              ───────   = 還元利回り                       
                不動産価格

である。

 純賃料は、賃料と必要諸経費から求められる。
 不動産価格は、土地価格と建物価格である。

 ここで、還元利回りの算出要因である賃料、必要諸経費、建物価格が一定であるとすると、還元利回りの変動は、土地価格の変動とみなすことが出来る。

 東京都心5区の還元利回り0.2%の下落は、

         0.2%
               ─────   = 0.045                               
                  4.4%

土地価格が4.5%上昇したことになる。

 都心5区に、日本ビルファンドは、33の事務所ビルを所有している。

 その33のビルの土地価格が、本当に、平成25年6月〜平成26年6月の1年間に、4.5%上昇しているのであろうか。

 このことを、具体的に確かめてみることにした。

 33のビルが接面する道路に付設してある相続税路線価で、検討してみることにした。

 相続税路線価は、地価公示価格の8掛で付設されていることから、路線価を0.8で除せば、適正時価となる。

 地価変動率を求めるためには、路線価を0.8で除して計算する必要は無い。
 平成26年の路線価と平成25年の路線価を比較するだけで、地価変動率を求めることが出来る。

 日本ビルファンド所有の33ビルが、どこにあるのか分からない。

 まず、各物件の所在地と所在場所を全て確かめる。

 次いで、その物件が接面する道路の相続税路線価を、平成26年と平成25年の両年のものを路線価図より調べる。

 作業は単純に思えるが、行ってみると大変な時間と労力を費やした。

 加えて、同じ作業の33回の繰り返しで、イヤになってしまった。

 他の仕事を途中に入れて、気を紛らわす気分転換を行い、再度挑戦するということを繰り返して、何とかやり遂げた。

 やり遂げるまでに、丸一日かかってしまった。

 その結果は、

      路線価の価格変動率    1.047

+4.7%の上昇であった。

 調査の結果一覧は、下記である。


  所在区 平成26年6月% 26年路線価u万円a 25年路線価u万円b 変動率a/b
NBF日比谷ビル 千代田区 3.7 1136 1080 1.052
西新宿三井ビルディング 新宿区 4.2 212 205 1.034
三菱重工ビル 港区 3.8 571 535 1.067
芝NBFタワー 港区 4.1 139 134 1.037
NBFプラチナタワー 港区 4.1 167 159 1.050
NBF南青山ビル 港区 3.8 553 529 1.045
NBFコモディオ汐留 港区 4.1 173 166 1.042
虎ノ門琴平タワー 港区 3.8 369 352 1.048
セレスティン芝三井ビルディング 港区 4.2 212 203 1.044
NBF御茶ノ水ビル 千代田区 3.9 129 124 1.040
NBF渋谷ガーデンフロント 渋谷区 3.8 83 82 1.012
NBF銀座通りビル 中央区 3.7 230 210 1.095
新宿三井ビルディング二号館 新宿区 4.2 353 338 1.044
GSKビル 渋谷区 4.5 207 200 1.035
リバーシティM-SQUARE 中央区 4.5 1060 980 1.082
NBF虎ノ門ビル 港区 3.9 584 557 1.048
興和西新橋ビルB棟 港区 4.0 298 278 1.072
NBF新川ビル 西館 中央区 4.7 750 730 1.027
NBF新川ビル 東館 中央区 4.8 750 730 1.027
新橋M-SQUARE 港区 3.8 526 503 1.046
NBF ALLIANCE 港区 3.8 269 250 1.076
四谷メディカルビル 新宿区 4.6 152 147 1.034
NBF渋谷イースト 渋谷区 4.1 113 110 1.027
NBF芝公園ビル 港区 4.5 121 116 1.043
NBF高輪ビル 港区 4.9 119 113 1.053
NBF赤坂山王スクエア 港区 4.0 512 490 1.045
NBF芝公園大門通りビル 港区 4.3 163 155 1.052
住友電設ビル 港区 4.6 165 157 1.051
NBF東銀座スクエア 中央区 4.2 189 183 1.033
パナソニック東京汐留ビル 港区 3.9 758 715 1.060
NBF小川町ビル 千代田区 4.2 298 282 1.057
日本橋兜町M-SQUARE 中央区 4.1 144 139 1.036
龍角散ビル 千代田区 4.6 140 133 1.053
平均   4.2     1.047


 東京都財務局が、東京都基準地価格の分析の結果として、東京都心5区商業地の平成25年7月〜平成26年7月の1年間の変動率を発表している。

 それは、
         5.0%
である。

 それは、下記アドレスのPDFで知ることが出来る。

    
http://www.zaimu.metro.tokyo.jp/kijyunti/26nen/08hendo_ritu_youto.pdf

 東京都心5区のJリートの還元利回り0.2%の下落は、地価4.5%の上昇に相当するという判断は、路線価から求められた変動率と都財務局の発表した地価変動率から検討しても、妥当と云えそうである。

    (2014年11月27日開催の田原塾11月会の講話録に一部加筆して)


  鑑定コラム1284)「リートの事務所の還元利回りは4.2%」

  鑑定コラム1280)「Jリートの取得件数、取得金額が大幅に縮小している」


  

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