第91回箱根駅伝は、青山学院大学の初優勝で終わった。
青山学院大学の初優勝の最大の立役者は、箱根の山登りの5区を、圧倒的速さと時間で駆け登った神野大地である。
その栄光に隠れているが、駒沢大学の5区を走った選手の悲劇を見逃すことは出来ない。
駒沢大学の5区走者は、昨年も5区を走り、その時は区間3位の記録であった。
その経験もあることから、今年も5区の走者になったのであろう。
駒沢大学は優勝候補ナンバーワンであったから、監督は、今回も区間3位程度の走りを予定して、駒澤大学の優勝を考えていたのではなかろうか。
4区の時点では、駒沢大学は1位を走っており、2位とは約40秒近くの差をつけていたことから、前評判通りの競走展開であった。
しかし、駒澤大学の5区走者は、5区を走り始めて10km付近で、2位の青山学院大学の選手に抜かれ、ゴール手前3km付近で、走りがおかしくなった。
フラフラとよろめき、前かがみで地面に手を付けるように倒れた。
立ち上がろうとするが、すぐに立ち上がれなかった。
生まれたての子馬が、立ち上がっても、すぐに倒れてしまうごとくの状態になってしまった。
低体温症と脱水の症状が出た。
ゴールの100メートル手前付近でも、そしてゴールテープの直前でも倒れた。
ゴールテープはふらつきながら何とか切ったが、切ると同時に路上に倒れ込んだ。
すぐ医師による介抱がなされたと思うが、駅伝をテレビ観戦している者の一人として、この痛々しい姿は目にしたくなかった。
主催団体、監督、出場大学、競技関係者達ょ、何とかしてくれと言いたくなる。
低体温症等による選手のフラフラ状態については、鑑定コラム398)「最悪の2008年の箱根駅伝」で述べた。
また再び同じ事を繰り返す箱根駅伝を見せつけさせられた。
監督、競技関係者、主催団体、出場大学達は、何も勉強していなく、防御・対処方法すら全く考えていない。
勝つことばかり考えて、身体の健全な状態による競走であるということを忘れ去っている。
低体温症を甘く見るものではない。怖い症状である。
死亡することも充分ありうるのである。
万一、選手の一人が低体温症で死亡したら、大変な事になろう。
関係者の処罰は厳しく、警察、検察が放置しておかない。
箱根駅伝は、当分開催出来なくなるであろう。
駒沢大学の監督は、
「山の下で汗をかいて山の中で冷えて低体温症と脱水症状を併発したのではないか?」
と言っている。
原因がわかっておれば、その対策をとって措くべきではなかったか。
薄いランニングシャツとパンツで、冬の箱根を走ることを当然と考えている方がどうかしている。
今迄はそうして走ってきたからという言い訳は通用しない。
走れば体が熱くなるから大丈夫であると思っていたら、大間違いである。
自分の体の中で生じる熱量よりも、低い気温で奪われる熱量の方が多かったら、走れば走るほど体温は低くなり、低体温症を発症する。
意識障害が発生する。
私は、小学生、中学生の頃、木曽川上流沿いの田舎で育った。
夏は木曽川で泳いでいた。
夏とはいえ、木曽川の上流の水は冷たい。
少し長く泳いでいて、陸上に上がると、唇は紫色になり、口は上と下がガクガクし始め、体はガタガタ震えてくる。
中学の上級生が、そうした下級生を見ると、すぐ大きな岩に腹這いになっておれと教えてくれる。
河原の大きな岩は、夏の日光を浴びて温かくなっている。
それら岩に腹這いになって、冷えた体を温めるのである。
甲羅干しをしばらくしていると、体の震えは収まる。
私も中学生になった時には、下級生の唇が紫色になり、体が震えだした時には、岩に腹這いにさせた。
今から思えば、それは低体温症にかかりそうな時であったのか、低体温症の症状の前兆だったのではないかと思われる。
今回は箱根の冬は晴れていた。
晴れた日ばかりでは無い。
雨の日、雪の日もあろう。
その時は、一体どうするのか。
繊維の研究は進んでいると思う。
その気になれば、軽くて動きやすい低体温症を防ぐ冬季ランニングウエアの開発は充分出来るであろう。
箱根駅伝で、低体温症を防ぐ冬季ランニングウエアのお披露目をすることだ。
選手が、そのウエアを来て走る姿がテレビで映し出されれば、多くの人は購入して走るであろう。
スポーツウエア会社、繊維会社は、新しい需要が出来、市場が開拓されることになる。
箱根駅伝のスポンサーにもなってくれるであろう。
箱根駅伝は、健全な身体を蝕む競技であってはならない。
鑑定コラム398)「最悪の2008年の箱根駅伝」
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