8ヶ月前程に東京弁護士会から所属弁護士の研修の一つとして、「借家権と立退料」、即ち明渡立退料についての講演を頼まれていた。
講演も近くなり、そろそろ講演のレジュメを提出しなければならないと思い、改めて東京弁護士会からの「ご講演要旨」という書類に目を通した。
そこには、レジュメは単に講演内容の小項目の列記のみではダメで、項目ごとに要旨を説明するようにとある。
そして、裁判例や他人の意見、論文を引用する場合には、その出典先の掲載誌、書物名を記載せよとある。
東京弁護士会の講演要旨に従い、項目の内容についてそれぞれ説明していけば、それは一つの論文になる。これは論文を提出せよと云うことと同じではないのかと思った。
それならば、一つの論文を書いてしまえと考えた。
講演レジュメを簡単に考えていた私は、急遽、明渡立退料について、不動産鑑定評価ではどの様にして求めているのかを論述する論文を書き上げることにした。
論文一つを書き上げるには、一日、二日で出来上がるものでは無い。
日にちを費やして、A4サイズで20頁の明渡立退料についての論文を書き上げた。
何とか提出期限前に東京弁護士会に提出することが出来た。
その論文の中には、借家権の求め方について新しい考え方、求め方を入れた。
それを東京弁護士会の講演で、初めて発表したい。
明渡立退料の幾つかある求め方の手法には、全て具体例を付けて説明した。
その中で、トラブルが多くよく問題になる、飲食店の明渡立退料の求め方も、実際の鑑定評価例を出して、具体的に記した。
研修に参加して私の講演を聴いた弁護士が、代理人弁護士として、飲食店の明渡立退料の裁判を引き受けた時には、即、参考になるのでは無いかと思う。
明渡立退料の20頁の論文を書き上げる間、不動産鑑定評価の仕事は中断していた。
来るであろうと予想はしていたが、案の定、家賃の鑑定評価の依頼者である弁護士から、公判期日が近づいていますが、鑑定の進み具合はいかがでしょうかと催促が2件入ってしまった。
大急ぎでそちらの方に取りかかっている。
鑑定コラム1852)「判例に見る店舗明渡立退料」
鑑定コラム1853)「鑑定基準の云う不随意の立退要求より生じる借家権価格」
鑑定コラム2124)「差額賃料の3年分は借家権価格ではない」
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