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1852)判例に見る店舗明渡立退料

 店舗の明渡立退料の判例として、下記の判例がある。

  「建物明渡請求事件(東京地裁昭和60(ワ)12454号、昭和62.7.22 判例時報1275-81)」

 この判例は、営業店舗(判決例の場合は畳屋営業)の明渡立退料についてであるが、次のごとく判示する。

 「単に算定される借家権の価格を対価として支払えば足りるというのでなく、近傍に新たな賃借建物を求めるとすれば(建替え後の建物を賃借する場合も同様)そのために要する権利金、保証金等の出費、新家賃と現家賃との差額、畳屋営業に必要な造作があればその費用等、建替え後の建物を買い取る場合は買い取り資金の不足に対する手当て等についての完全な補償を必要とし、被告が解約を合意することによってその営業上、生活上いかなる損失をも受けないことが要件となるものと解すべきである。」

と判示する。

 「単に算定される借家権の価格を対価として支払えば足りるというのでなく」と判示していることから、明渡立退料は借家権価格が含まれることは当然と云う考えが伺える。

 そして、借家権価格のみでなく、「近傍に新たな賃借建物を求めるとすればそのために要する権利金、保証金等の出費、新家賃と現家賃との差額、畳屋営業に必要な造作があればその費用等について完全な補償を必要とし」と言う。

 近傍に新たな賃借建物を求めるとすれば、その建物への移転費用がかかる。

 移転先店舗の造作費が掛かる。

 判決は、移転費用、移転先店舗造作費の補償も必要としている。

 そして、それら費用については、「完全な補償」が必要と判示する。

 この判決から、営業店舗の明渡し立退料は、

        イ,借家権
        ロ,移転補償費(同等店舗の造作費を含む)

の合計金額によって求められることになる。

 そしてその金額は、明渡立退者が、営業上、生活上いかなる損失を受けない金額である。


  鑑定コラム1851)
「土地収用委員会裁決と最高裁判決」

  鑑定コラム859)「明渡し立退料の鑑定」

  鑑定コラム836)「店舗明渡し立退料には移転先店舗の造作費は必要である」

  鑑定コラム1231)「立退料考1」

  鑑定コラム1264)「立退料考 2」

  鑑定コラム1274)「立退料考 3 借家権価格割合」

  鑑定コラム1287)「立退料考 4 価格控除方式」

  鑑定コラム1348)「東京弁護士会での講演レジュメを書き終えて」

  鑑定コラム1853)「鑑定基準の云う不随意の立退要求より生じる借家権価格」

  鑑定コラム1854)「借地権価格、借家権価格は「現在価値」で鑑定基準の統一を」

  鑑定コラム2124)「差額賃料の3年分は借家権価格ではない」


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