○鑑定コラム
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愛知県の春日井市に本社を置くゲオという会社がある。資本金は28億円、従業員1,500名、パート・アルバイト約9,700人を雇用する会社である。
年商940億円を売上げるという。
ゲオという会社の事業内容は、ビデオ、CD、DVD等のソフトのレンタルである。
ビデオ等のレンタル事業で1万1千人を雇用し、事業規模がますます拡大している。ビデオのレンタル事業は、そんなに需要があり、儲かる事業なのかと驚く。
売上高はゲオ発表の連結決算ベースの数値で、
1999年 311億円
2000年 353億円
2001年 422億円
2002年 603億円
2003年 940億円
である。
バブル崩壊で、不景気だ、リストラだ、売上の大巾減だ、倒産だといっている企業世界がある一方、全く逆の元気な企業の世界があるようである。
そのゲオが、実際は連結子会社のゲオグローバルという子会社が行うが、長野県内を営業地盤とするビッグスポットという会社のレンタルビデオ事業部14店を買収するという。(2004年1月21日、ゲオホームページプレスリリース)
売買価格(予定)は985,000,000円という。
これは営業権の売買と思われる。
ビッグスポットのレンタルビデオ事業部の売上高は、公表されていない。
ビッグスポットの正社員の数からレンタルビデオ事業部の売上高を推定する。
ビッグスポットの正社員は72名で、売上高は35億円(2003年3月期)という。
そのうちレンタルビデオ事業部の正社員は51名という。
51人÷72人=0.708
35億円×0.708=24.78≒24.8億円
である。
一方、買収するゲオの売上高と営業利益は次の通りである。(2003年3月期)
売上高 94,060百万円
営業利益 2,695百万円
営業利益率は、
2,695÷94,060=0.0286
2.86%である。
買収されるビッグスポットのビデオレンタル事業部の売上高は24.8億円である。
ゲオの経営にゆだねた場合、同売上高では、
24.8億円×0.0286=0.709≒0.71億円
の営業利益が確保されると考えられる。
投下資本は9.85億円である。
投下資本利益率は、
0.71億円÷9.85億円=0.072
7.2%である。
レンタルビデオ店の投下資本利回りは7.2%である。
営業利益率2.86%であるからといって、投下資本利回りを2.86%で企業買収することなぞ企業買収側は考えない。
その様な低率な投下資本利回りで企業買収する場合は、利回りを考えない特殊な買収要因のある時である。
松下電産が松下電工を子会社化したが、その時の投下資本利回りは2.9%であった。本件レンタルビデオ店の営業利益率にほぼ同じ利回りであるが、松下電産による松下電工の企業買収は、異常な緊急救済の要因によるものと『鑑定コラム』143)「松下電産が松下電工を子会社化」
で述べた。
7.2%の本件レンタルビデオ店の投下資本利回りから見ても、松下電産の2.9%での投下資本利回りは異常な低利回りであることが分かろう。
7.2%の投下資本利回りは、
1/0.072=13.88≒14年
14年で投下資本を回収するということである。
競争の激しい業界である。回収期間14年は少し長いと思われる。10年位が妥当と思われるが。
レンタルビデオ店は、ほとんどが賃借店舗である。所有店舗はあるかもしれないが、ここでは所有店舗は無くゼロと考える。
ゲオの決算書を見ると、2003年3月期の支払っている地代家賃の額は5,792百万円である。
一つの事業会社で年間57.92億円の家賃を払っているのである。
家賃だからと言って「たかが」と侮っていると、積もり積もればこれだけの金額になるのである。この金額を見てもなお「たかが」と侮る人がいるのであろうか。家賃に対する認識を改めて欲しい。
経営者は当然として、土地の価格評価ばかりに目が行き、家賃評価に対しては、全くど素人に近いと思われる不動産鑑定士には、家賃の大切さを再認識して欲しい。但し再認識と言っても家賃評価は、価格評価より数段うえの難しさとスキルを要求されることを知ることが先に必要であるが。
売上高に対する家賃の割合は、
5,792百万円÷94,060百万円=0.0615
である。
レンタルビデオ店の家賃は売上高の6%ということか。
なんだか、以前メルマガと『鑑定コラム』25)に書いた
「「牛どん吉野家の家賃6%」
の吉野家の限度家賃の割合に似た数値である。
店舗売上高と家賃の関係については、私のホームページの『鑑定コラム』18)
「店舗売上高と家賃割合」
の記事がある。そちらを見ていただければ幸いである。貸す人、借りる人、賃料のわからない人、店舗の家賃評価をする人に少し参考になるのではないかと思う。
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