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1731)22,000uの土地を路線価の1割増で?

 国有地売却のうまい話として、鑑定コラム1729)で記事を書いた。

 その記事の中で、関東財務局の事例を紹介したが、その事例の中の小山台住宅に関するうまい話の例では、「路線価の1割増しで財務省から医療機関に話が持ち込まれている。」という架空の話の持ちかけの事例がある。

 小山台住宅の土地面積は、22,244.59平方メートルである。

 22,000uの土地を、路線価の1割増で売却すると云う話である。

 この話の文言を聞くだけで、それがインチキで詐欺の話であると分かる。

 路線価というのは、相続税路線価をいい、各土地が面する道路にu当り価格が付設してある。

 土地を相続した場合、その土地の前面道路に付設してあるu当り土地単価で相続税が計算されるのであり、その価格が予め公表されているのである。

 その路線価は、周辺の標準的土地価格として国土交通省が毎年発表する地価公示価格の0.8掛けした数値である。

 地価公示地の価格は、その地域の土地利用されている土地の標準的規模の画地を選定し、周辺地域の土地の取引事例と比較して、地域の標準的土地価格を表示している。

 標準的規模は、住宅地にあっては、およそ200u程度である。

 地価公示価格は、周辺の取引事例と比較して求められていると云うことから、適正時価と云うことになっている。

 路線価は、その0.8掛けで表示されるが、その土地面積は、公示地が地域の土地利用の標準的規模の画地であり、その土地価格であることから、路線価の価格の土地規模も路線価付設されている地域の標準的な土地面積の価格ということになる。

 品川区小山台2丁目の22,000uの土地の前面道路に付設されている路線価が、仮に、u当り410,000円であったとする。

 路線価は地価公示価格の0.8掛けであるから、その1割増ということは、

       0.8×1.1=0.88

である。

 地価公示価格は、前記したごとく適正時価と云うことであるから、0.88と云う価格割合は、1.00よりも低い割合であることから、時価よりも安いと云うことになる。

 金額で現せば、適正時価は、

      410,000円÷0.8=512,500円/u

である。

 路線価の1割増は、

      410,000円×1.1=451,000円

である。

     512,500円 > 451,000円
 
となる。

       451,000円
           ────── = 0.88                                    
              512,500円

 適正時価よりも▲12%安い。

 「国有地の22,000uの土地が、時価よりも12%安く手に入れば、時価で売却したとしても、12%の利益となる。売り主は国であるから心配ない。これはよい話では無いのか。」

と思うであろう。

 しかし、この話には大きな落とし穴がある。

 路線価のu当り410,000円の価格は、地域の標準的規模である200u程度の画地の単価である。

 話を持ちかけられた土地の規模は、22,000uである。

 200uの土地の単価と、22,000uの規模の土地単価は同じであろうか。

 「否」である。

 22,000uの規模の土地を小口化して、戸建住宅地にすれば、道路敷地として提供することによる宅地面積の減少、水道・下水道・道路等の造成工事費がかかる。

 その潰地、宅地造成工事費を考えれば、その土地の価格は、410,000円の1/3程度の価格となる。

      410,000円×1/3≒137,000円

 u当り137,000円程度の価格である。

 マンションとか老人ホーム等の一画地利用の場合は、戸建住宅地利用より土地利用の効用増加があることから、戸建住宅の場合の1/3の価格よりもアップする。効用増に依るアップを考えても半値程度の土地価格である。

 半値とすれば、

      410,000円×1/2=205,000円

u当り205,000円である。

 こうした土地価格水準になるにも係わらず、「路線価の1割増」と云って、u当り451,000円の価格で話を持ちかけることは、そこに人をだまくらかしてポロ儲けしょうとする意思が隠されていることになろう。


  鑑定コラム1729)
「財務省の国有地売却のうまい話への警告」

  鑑定コラム130)「サッポロビール埼玉工場売却と地積大修正率」

  鑑定コラム1425)「造成後更地価格と素地価格の関係」
 

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