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宅地見込地の土地価格を求める手法の一つとして、開発法と云う手法がある。
その手法は、宅地見込地に宅地造成工事を行って分譲住宅地を想定する。
出来上がった造成後の分譲地の価格を、周辺の類似の住宅地の価格と比較して、造成後更地価格を決定する。
その造成後更地価格より、造成工事費、諸費用、宅地分譲業者の利潤そして開発のリスク等の価格を控除して、宅造する前の宅地見込地の土地価格を算出する方法である。
宅造する前の土地価格を、素地(そじ)価格と云う。
開発法の求め方を簡略にすれば、下記の算式である。
造成後更地価格−(造成工事費+諸費用+利潤+リスク等)=素地価格
上記式をより簡略化すれば、
造成後更地価格−造成工事費等=素地価格
の算式となる。この算式が開発法の基本的な考え方であり、基本算式である。
上記算式の左辺の造成工事費等を右辺に移動すれば、その算式は原価法の算式となる。下記である。
造成後更地価格=素地価格+造成工事費等
この算式の右辺と左辺を入れ替えれば、
素地価格+造成工事費等=造成後更地価格
である。
つまり、開発法は、原価法の逆算の手法ということになる。
開発法の手法は、分譲土地の場合のみで無く、分譲戸建住宅の土地にも適用される。
分譲戸建住宅に適用出来るのであれば、分譲マンションの土地にも適用出来ることになる。
ここでは、分譲宅地の造成後更地価格と素地価格の関係についてのみ述べる。
不動産鑑定評価の書物に、宅地見込地の開発法の鑑定評価の求め方の実例が記されている。
そこに記載されている造成後更地価格と素地価格(宅地見込地)の価格割合を見る。
イ,『例解不動産鑑定評価書の読み方』P271鵜野和夫(清文社1988年)
造成後更地価格 u当り 206,300円
素地価格 u当り 60,000円
60,000円
───── = 0.291
206,300円
ロ,『不動評価読本』P205共著(生江光喜、岡本茂延,米田稠、開 修、 江蔵耕一、橋本達雄、勝木雅治、丸野一夫 商事法務研究会 平成4年)
造成後更地価格 u当り 500,000円
素地価格 u当り 255,000円
255,000円
───── = 0.51
500,000円
ハ,『臨増・不動産鑑定1979・6』P124(住宅新報社 1979年)
造成後更地価格 u当り 123,000円
素地価格 u当り 35,000円
35,000円
───── = 0.284
123,000円
ニ,『臨増・不動産鑑定1980・6』P120(住宅新報社 1980年)
造成後更地価格 u当り 140,000円
素地価格 u当り 44,300円
44,300円
───── = 0.316
140,000円
ホ,『臨増・不動産鑑定1981・6』P51(住宅新報社 1981年)
造成後更地価格 u当り 48,500円
素地価格 u当り 21,700円
21,700円
───── = 0.447
48,500円
上記をまとめると、
イ, 0.291
ロ, 0.510
ハ, 0.284
ニ, 0.316
ホ, 0.447
である。
ハ、ニ、ホの出版年が古すぎるという批判があろうかと思われるが、不動産の経済行為による考え方が、1980年頃と現在と変わるものでは無いことから、その批判は失当である。データ分析の結果が、そのことをはっきりと示している。
割合は50%近くのものと、30%近くに分かれる。
一般的には素地価格は、造成後更地価格の30%前後と認識されている。
上記イ、ハ、ニの平均は29.7%((0.291+0.284+0.316)÷3=0.297)で、それが論証できる。
素地価格が造成後更地価格の30%前後と判断される素地価格は、造成工事が全く行われていない状態の価格である。
造成工事が行われておれば、工事の進捗程度に応じて、素地価格の価格割合は、40%とか50%になる。
上記で開発法の基本算式は、
造成後更地価格−造成工事費等=素地価格
であると述べた。
この算式をよく眺めて欲しい。
基本算式を眺めていると、開発法の欠点が見えてくる。
それは、造成後更地価格を一定にすると、素地価格は、造成工事費等によって変化するということになる。
造成工事費等の中の最大のウエイトを占めるのは、造成工事費であることから、この造成工事費が高ければ、素地価格は安い価格となる。
造成工事費が安ければ、素地価格は高い価格となる。
造成工事費が大変重要であることがわかる。
それ故、それぞれの土地規模の宅地造成工事において、この規模ならば造成工事費のu当り単価はどれ程かの知識を、しっかりと身につけておく必要がある。
そして、開発法の最大の欠点は、造成工事費が造成後更地価格以上になった場合、素地価格は0円若しくはマイナスとなることである。
こうした現象が、開発法では生じるということを充分知っておく必要がある。
この開発法の欠点を知っておかないと、とんでもない価格を求めてしまう場合がある。
市場価格より大きくかけ離れた価格を求めているのにも係わらず、それが求めている本人には全く分からず、求めた素地価格は適正であると主張する。
素地価格が造成後更地価格の10%の価格であったとする。
10%の価格とは、ほぼそれは、売り切るまでに10年等の時間が掛かる別荘地の素地価格の水準である。
一般住宅の素地価格割合は、10%のごとく低率な割合では無い。
それは、上記不動産鑑定評価の書物に記されている評価例の割合から見て、否定される割合である。
つまり一般住宅の素地価格割合10%は、安すぎる水準で鑑定評価されているということになる。
安ければよいというものでは無い。
不動産鑑定評価は、売る側も買う側も損をしない価格を求めるものである。
10%の価格では、売る側が甚だしく損をし、買う側は甚だしく得をすることになる。
そうした価格の鑑定評価額を適正であると判断することは出来ない。
しかし、求められている開発法の価格は間違いですょと指摘しても、なかなか認めようとしない。
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