最高裁で、不動産の価格・賃料に関する重要判決が、最近、相次いでいる。
建物の固定資産税に関する判決と、サブリースの賃料減額についての最高裁の判断が示された。
建物の固定資産税の判決
については、後日論述することにして、サブリースの賃料について少し述べてみたい。
平成15年10月21日最高裁第3小法廷は、平成12年(受)第123号建物賃料請求事件で、サブリース契約で保証した賃料自動増額特約による賃料を減額することは、容認出来ると認めた。
判決文は、「本件契約は、建物の賃貸借契約であることが明らかであるから、本件契約には、借地借家法が適用され、同法32条の規定も適用される」と判示する。
そして、「本件契約には本件賃料自動増額特約が存するが、借地借家法32条1項の規定は強行法規であって、本件賃料自動増額特約によってもその適用は排除することが出来ない」と過去の最高裁の判例を示して再判示する。
原審東京高裁の判断には判決に影響を及ぼすことが明らかな法令違反があるから、審理を尽くせといって東京高裁に差し戻してしまった。
補足意見として、藤田宙靖裁判長裁判官は、サブリース契約について否定説のいう次の2つの主張、
@典型契約としての賃貸借契約ではなく、「不動産賃貸借あるいは経営権を委譲して共同事業を営む無名契約」と解すべきであるという主張
A「ビルの所有権及び不動産管理のノウハウを基礎として共同事業を営む旨を約する無名契約」と解すべきであるという主張
に対して、「それらはサブリース契約を締結するに至る背景の説明にとどまり、必ずしも充分な法的説明とはいえない」といい、かつ「複合契約として両立し得る」ものであり、「通常の建物賃貸借契約の場合と取り立てて性格を異にするものは無い」と説き、否定説を切り捨てる。
紛争解決の方法は「民法及び借地借家法によって形成されている賃貸借契約の法システムの中においても、しかるべき解決法を十分にできる。さらに事業によっては民法の一般法理、すなわち信義誠実の原則あるいは不法行為法等々の適用を、個別的に考えて行く可能性も残されている」と言及する。
サブリース契約を「通常の賃貸借契約とは異なるカテゴリーに当てはめるよりも、法廷意見のような考え方に立つ方が、一方で、法的安定性の要請に沿うものである」と結論する。
2003年6月12日に地代等の増額自動改定特約を最高裁が認めないという小法廷の甲斐中判決が出されていたことから、「地代等」の「等」に家賃が含まれると解釈されうるため、ビル賃料のサブリースの増額自動改定も否定され、賃料減額請求の最高裁の判断が示されることは充分予測された。
このことについては、本『鑑定コラム』の109)
「地代等の自動増額改定特約を最高裁は認めず」
の記事で紹介している。
私も東京地裁でサブリースの自動増額改定は借地借家法違反であるという考えに立って、ビル賃料減額の賃料鑑定を行った。
この私の鑑定に対して、相手側代理人弁護士より激しく批判された苦い経験を持つが、今回の最高裁の判示で、高裁段階で滞留しているサブリースに伴う賃料減額請求事件は、ほとんど終了の方向に向かうのではなかろうか。
本件の一審での賃料鑑定は、減額された適正な継続賃料評価を著名な不動産鑑定士の方が行っていると聞く。最高裁は、その判断を支持したのである。
上記記事に引用した鑑定コラムは、下記をクリックすれば繋がります。
『鑑定コラム』109)
「地代等の自動増額改定特約を最高裁は認めず」
『鑑定コラム』142)
「建物の固定資産税の判決」
『鑑定コラム』1831)
「アパート収益とIRR値」