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6.還元利回り=標準粗利回り×(1−必要諸経費率)の証明
還元利回りを求める算式の1つとして、
還元利回り=標準粗利回り×(1−必要諸経費率)
がある。
上記算式は、どの様にして算出されるのか。その証明を行う。
@ 粗利回り・標準粗利回り
年間賃料収入を、その収入を生み出す土地・建物の不動産の価格で除した利回りを粗利回りと呼ぶ。必要諸経費を含んだ賃料を土地・建物の価格で除した利回りである。
土地に建つ建物が、その土地に許容される容積の建築面積を持つ建物の場合の粗利回りを「標準粗利回り」と呼ぶこととする。
下記算式である。
年間賃料総収入
標準粗利回り= ──────────── ・・・@式
土地価格+建物価格
A 必要諸経費率
必要諸経費率とは、年間賃料総収入に占める必要諸経費の割合である。
必要諸経費
必要諸経費率= ──────────── ・・・A式
年間賃料総収入
B 純収益
純収益とは、年間賃料総収入から必要諸経費を差し引いた金額を云う。
年間賃料総収入−必要諸経費=純収益 ・・・B式
C 還元利回り
還元利回りとは、純収益を土地建物価格で除した割合をいう。
純収益
還元利回り = ──────────── ・・・C式
土地価格+建物価格
D 還元利回りと標準粗利回り、必要諸経費率の関係
C式にB式を代入する。
年間賃料総収入−必要諸経費
還元利回り =─────────────── ・・・D式
土地価格+建物価格
A式を変型する。
必要諸経費= 年間賃料総収入×必要諸経費率 ・・・E式
D式にE式を代入する。
年間賃料総収入−年間賃料総収入×必要諸経費率
還元利回り = ──────────────────────
土地価格+建物価格
年間賃料総収入 年間賃料総収入
= ──────── −──────── ×必要諸経費率・・・F式
土地価格+建物価格 土地価格+建物価格
年間賃料総収入
─────────── は、標準粗利回りであることから、F式は、
土地価格+建物価格
還元利回り=標準粗利回り−標準粗利回り×必要諸経費率・・・G式
となる。
G式を変型すると、
還元利回り=標準粗利回り(1−必要諸経費率) ・・・H式
となる。
即ち、還元利回りは、
還元利回り=標準粗利回り×(1−必要諸経費率)
の算式で求められることになる。
7.標準粗利回り算式
@ 標準粗利回りの算式
標準粗利回りは、下記の算式であると、前記した。
年間賃料総収入
標準粗利回り= ──────────── ・・・@式
土地価格+建物価格
そして、上記標準粗利回りの算式より、下記算式が導き出される。
標準粗利回り
u当り賃料×12×共益費修正率×運用償却額修正率×空室率修正
×経年賃料修正率×容積率×賃貸面積率
=─────────────────────────・・・A式
土地単価+建物工事費単価×容積率×償却修正率
A 標準粗利回りの算式の証明
上記@式からA式への変換成立を、下記によって証明する。
最初は、新築の建物で保証金の授受のない簡単な条件で考える。
イ,標準粗利回り@式の分子の「賃料収入」
賃料収入 = 賃料単価 × 12 ×共益費修正率× 建物の賃貸面積
建物賃貸面積は、土地面積に容積率を乗じたものに賃貸面積率を乗じたものである。
建物賃貸面積 = 土地面積 × 容積率 × 賃貸面積率
よって賃料収入は次式に書き替えられる。
賃料収入=賃料単価×12×共益費修正率×土地面積×容積率× 賃貸面積率
ロ,標準粗利回り@式の分母の「土地価格+建物価格」
土地価格 = 土地単価 × 土地面積
建物価格 = 建物工事単価 × 建物面積
建物面積 = 土地面積 × 容積率
であるから、分母は次式に置き換えられる。
土地価格 + 建物価格
=土地単価 × 土地面積 + 建物工事単価 × 土地面積 × 容積率
=土地面積 ×(土地単価 + 建物工事単価 × 容積率)
上記で求められた分子、分母より、標準粗利回り算式は、次の式に置き換えられる。
標準粗利回り算式
賃料単価×12×共益費修正率×土地面積×容積率×賃貸面積率
= ────────────────────────────
土地面積 ×(土地単価 + 建物工事単価 × 容積率)
ここで、分子、分母の土地面積は消去されるから、利回り算式は次式となる。
賃料単価×12×共益費修正率×容積率×賃貸面積率
算式 = ────────────────────────
土地単価 + 建物工事単価 × 容積率
ハ,賃料収入は賃料のみでなく、保証金の運用益、償却額があり、かつ空室率も考えなければならない。新築以外の建物の場合、経年に伴い賃料は下落することから、その賃料修正も考えなければならない。
これら要因による修正を分子に行う。
保証金は一般的には 賃料の何ヶ月分として金額が決められ、それに金利を乗じると運用・償却額が求められるから、u当り賃料×12に、修正率を乗じることによって処理出来る。
空室の発生は賃料の修正であり、空室率修正率をu当り賃料×12に乗じることによって処理出来る。
建物が古くなると、その経年に応じて賃料が安くなる傾向がある。これもu当り賃料×12に修正率を乗じることによって処理出来る。
保証金の運用償却額、空室率、経年賃料減額の各修正率を、それぞれ運用償却修正率、空室修正率、経年賃料修正率とし、u当り賃料×12の賃料を修正する率とするならば、分子は次の式に書き替えられる。
u当り賃料×12×共益費修正率×運用償却額修正率×空室率×容積率×賃貸面積率×経年賃料修正率
一方、分母の建物価格は経年に伴い建物価格は安くなり、この経年に伴う建物減価を償却率とすれば、建物工事単価×容積に償却修正率を乗じることで処理出来る。
分母は次の式に書き替えられる。
土地単価 + 建物工事費単価 × 容積率 × 償却修正率
以上の分子、分母をまとめれば、
標準粗利回り
u当り賃料×12×共益費修正率×運用償却額修正率×空室率修正
×経年賃料修正率×容積率×賃貸面積率
=─────────────────────────────────
土地単価+建物工事費単価×容積率×償却修正率
と求められる。
以上により、標準粗利回り@式からA式の変換は証明される。
8.必要諸経費率
必要諸経費率は、賃料総収入に占める必要諸経費の割合である。
下記算式で求められる。
必要諸経費
──────── = 必要諸経費率
賃料総収入
必要諸経費に減価償却費を含めたものが、償却後必要諸経費であり、求められる必要諸経費は、償却後必要諸経費であり、それを利用して求められた期待利回り、還元利回りは、「償却後期待利回り、償却後還元利回り」である。
一方、必要諸経費に減価償却費を含め無いものが、償却前必要諸経費であり、求められる必要諸経費は、償却前必要諸経費であり、それを利用して求められた期待利回り、還元利回りは、「償却前期待利回り、償却前還元利回り」である。
必要諸経費率は、減価償却費込みで、おおよそ下記の割合である。
ショッピングセンター 32.3%(著書P75)
貸事務所 36.4%(著書P72)
丸ビル 35.3%(著書P468)
27.5%(減価償却含まない P468)
賃貸マンション(日本賃貸住宅投資法人)
44.0%(鑑定コラム1647 *注)
賃貸マンション 35%(著書P99)
賃貸アパート 38%(著書P99)
*(注) 物件管理委託費5.9%が含まれる。
9.具体的数値例による算式の証明
@ 設例建物とその予想賃料等の条件
次の設定条件とする。
イ,土地面積と価格
土地面積150u、土地単価200万円/u、土地価格200万円×150u=3億円
ロ,建物面積と価格
建物面積は容積500%にあり750uとする。
建物の再調達原価は、u当り250,000円とする。
築10年を経ているとする。
全経済的耐用年数を40年とする。
現在価値率は、
40−10 30
──── =─── =0.75
40 40
0.75である。
建物価格は、
250,000円×0.75=187,500円
総額 187,500円×750u=140,625,000円
である。
ハ,賃料はu当り5,000円で、賃貸面積は525uである。
保証金は月額賃料の10ヶ月とする。保証金の償却はないものとする。
共益費はu当り750円とする。
空室率は5%とする。
A 設例建物の賃料収入
上記建物で設例建物の賃料収入を求める。
イ,賃料 5,000円 × 525u × 12 = 31,500,000円
ロ,保証金運用益 5,000円 × 525u × 10ヶ月 × 0.02 =525,000円
(注)運用利回りは2%とする。
ハ,保証金償却額 0円
ニ,共益費 750円×525u×12= 4,725,000円
ホ,小計 36,750,000円
ヘ,空室率 5%
ト,合計 36,750,000円×(1−0.05)= 34,912,500円
B 設例建物の標準粗利回り
上記、@Aより設例建物の利回りを求める。
年間賃料収入
標準粗利回り=───────────
土地価格 + 建物価格
34,912,500
=────────────── = 0.0792
300,000,000 + 140,625,000
設例建物の標準粗利回りは7.92%である。
C 標準粗利回り算式による求め方
上記設定建物の粗利回りを標準粗利回りの算式に当てはめて求める。
a,土地単価 u当り 2.000,000円
b,建物工事費 u当り 250,000円
187,500
c,償却修正率 ──── = 0.75
250,000
d,u当り賃料 5,000円
750
e,共益費修正率 ──────= 0.15 …… 1.15
5,000
525,000
f,運用償却額修正率──────────≒0.01449 ……1.01449
31,500,000+4,725,000
(注)分母は、(支払賃料+共益費)とする
g,空室率修正 0.95
h,経年修正 経年修正は無いとする 1.0
750
i,容積率 ── = 5.0
150
525
i,賃貸面積率 ── = 0.7
750
上記諸数値を算式に代入する。
5,000×12×1.15×1.01449×0.95×1.0×5.0×0.7
標準粗利回り=───────────────────────= 0.0792
2,000,000+250,000×5.0×0.75
標準粗利回りは7.92%である。前記Bの粗利回りと同じ0.0792の数値が求められた。これで標準粗利回りの算式が妥当であると立証出来た。
10.還元利回り
必要諸経費率を37%とする。標準粗利回りは7.92%と求められた。
還元利回りは、
還元利回り=標準粗利回り×(1−必要諸経費率)
の算式で求められる。
上記算式に数値を代入すれば、
還元利回り=7.92%×(1−0.37)
=4.9896≒5.0%
還元利回りは5.0%と求められる。
(3回目終わり (4)に続く)
鑑定コラム1977)「講演「還元利回り・期待利回りの求め方」の内容(4)」
鑑定コラム1974)「講演「還元利回り・期待利回りの求め方」の内容(1)」
鑑定コラム1975)「講演「還元利回り・期待利回りの求め方」の内容(2)」
鑑定コラム1817)「千葉県不動産研究会での正規分布・回帰分析の講演」
鑑定コラム1679)「2017年千葉県不動産研究会の講演」
鑑定コラム1978)「講演「還元利回り・期待利回りの求め方」の内容(5)」
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