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223)オンワード樫山の2つの海外の企業買収

 日本を代表するアパレルメーカーの一つのオンワード樫山が、海外の2つの企業買収を行い、経営権を握った。

 一つは、イタリアの婦人靴メーカーのイリス社の発行済み株式の60%を取得し経営権を握った。(2005年7月7日 オンワード樫山HPプレスリリース)

 買収価格は6.3億円という。
 イリス社の2005年4月期の売上高は約24億円という。
 60%に相当する売上高は、
      24億円×0.6=14.4億円
である。

 買収価格に対する売上高の倍率は、
      14.4億円÷6.3億円≒2.3倍
である。

 靴製造販売会社の経営がどういうものなのか、私には知識は全く無い。
 以前、新宿の高度商業地の一等地に店舗を構える靴販売店の賃料改訂の争いで、継続賃料の評価をした程度が、靴店舗と私との唯一の接点しかない。

 イリス社がどの様な婦人靴店の会社か私は全く知らないが、オンワード樫山が経営権を握ることを狙った企業であるから、有名ブランドを持つ婦人靴メーカーであろう。

 イリス社の営業利益率がどれ程か全く分からない。
 売上高と買収価格のみしか分からないが、靴店の企業売買の際には、本件の売上高倍率が、高いのか低いのか分からないが、一つのデータになるのでは無かろうかと思う。

 もう一つの企業買収は、英国のジョゼフグループの買収である。(2005年5月16日 オンワード樫山HPプレスリリース)

 同HPによれば、ジョゼフグループはファッションブランド「ジョゼフ」で、ロンドン、パリ、ニューヨーク、東京など世界の主要都市で店舗展開している企業という。

 年間売上高は2004年で141億円という。
 オンワード樫山の買収価格は約170億円という。

 オンワード樫山のホームページによれば、日本のファッション市場は成熟化し、これまで消費をリードしてきた団塊世代、団塊ジュニア世代のライフステージが変化しつつあるという。

 どの様に、その2つの世代が変化しつつあるのか、私には分からないが、とにかく変化しつつあるらしい。

 その変化を先取りし、オンワード樫山は 「ブランド軸経営」を推進し、ブランドイメージを鮮明にすることによって、市場において圧倒的競争優位性を確立する経営方針で行くと述べる。

 そうした経営方針によって、グローバルブランドである「ジョゼフ」を持つジョゼフグループ企業を買収した様である。

 私は前記イリス社と同じく、「ジョゼフ」というブランドがどれ程のものか全く知らない。

 売上高141億円の企業を、その20%も超えて170億円の金額で買おうとするのであるから、余程のブランド価値が有る利益率の高い良い会社であろう。

 ここで全く勝手に、私の独断で、オンワード樫山の購入価格170億円の価格を推定分析してみたい。

 ブランドは無体財産であり、その価値については経済学者や証券関係者が知恵を絞り、ブランド価値を求めようとしている。
 同類型の他の企業の業績と較べて、比較優位している部分をブランド価値と判断しているのであるが、ブランド価値というものは目に見えるもので無く、そのブランドによる売上確保、利益が生み出されなければ、価値など無いであろう。

 そしてブランドといっても、それを維持、修正工夫する努力を継続して行かなければ、その効用は薄れ、価値は無くなるものである。

 ファッション業界の競争が激しい時代である。
 ブランド価値によって売上、収益が20年間維持され続けるものとは考えがたい。と云って5年程度の寿命しか無いというものでも無かろう。
 10年間程度の期間が寿命と考えて良いであろう。

 ジョゼフというブランドを持つ会社の年間売上が141億円有るものとすれば、

      141億円÷10年=14.1億円

 「ジョゼフ」というブランド価値を14.1億円と査定する。甚だ荒っぽい求め方であるが、ああでもない、こうでもないと考えても、その客観性が立証されない求め方をしても仕方ない。単純に上記のごとく売上高を寿命期間で割るという考え方で求める。

 オンワード樫山の2005年2月期の単独決算は、
     売上高   197,230百万円
     営業利益   17,984百万円
である。営業利益率は9.1%である。

 ジョゼフグループをオンワード樫山が企業買収するのであるから、被買収企業の営業利益率は、少なくとも買収するオンワード樫山の利益率と同じ割合は、最低でも要求されるであろう。
      141億円×0.091=12.83億円

 次に投下資本を何年で回収するか。
 これは経営者の考えの最も重要なものである。
 飲食店は5年程度、アパートは20年程度である。
 ブランドを持つファッション会社の投下資本回収期間は、上記期間のほぼ中間の12年程度とする。

      1÷12年=0.083

 前記で営業利益は12.83億円と求められた。
      12.83億円÷0.083=154.5億円≒155億円

 この価格にブランド価値14.1億円を加算する。
      155億円+14.1億円=169.1億円≒170億円
 
 オンワード樫山のジョゼフグループの買収価格170億円を、上記のごとく価格推定する。

 但し、この価格推定は、前記したごとく私の勝手な独自の判断によるものであり、実際の価格決定とは大きくかけ離れている可能性が有ることを了解しておいていただきたい。
 又、価格の求め方が正しいという保証は無い。
  

 日本企業の海外企業の買収の記事は、下記鑑定コラムにも有ります。
 鑑定コラム  56) 「古河電工のアメリカ工場買収」
 鑑定コラム  177) 「発電所の売買利回り5%」

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