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2021年(令和3年)3月の丸ビルの償却後総合還元利回りを求める。
分析の仕方は、2017年2月に発売された『改訂増補 賃料<地代・家賃>評価の実際』(プログレス)のP431〜469に論述されている「丸ビルの還元利回り」の分析方法と同じである。
1.丸ビルの支払賃料
丸ビルの2021年(令和3年)3月の賃料は、鑑定コラム2266)の分析により、坪当り64,349円と分かった。
丸ビルの賃貸面積は、22,218.95坪である。
丸ビルの月額賃料は、
64,349円×22,218.95坪=1,429,767,214円
である。
年間賃料は、
1,429,767,214円×12=17,157,206,568円
である。
2.敷金運用益
丸ビルの敷金は、支払賃料の21ヶ月とする。
運用利回りは0.5%とする。
敷金運用益は、
1,429,767,214円×21×0.005 = 150,125,557円
である。
3.丸ビルの総収入
支払賃料 17,157,206,568円
敷金運用益 150,125,557円
共益費(支払賃料に含む) 0円
計 17,307,332,125円
4.必要諸経費
減価償却費を経費に含めない必要諸経費率は、総収入の0.275とする。
必要諸経費は、
17,307,332,125円×0.275=4,759,516,334円
である。
5.丸ビルの純収益(償却前)
丸ビルの償却前純収益は、
17,307,332,125円−4,759,516,334円 = 12,547,815,791円≒125.5億円
125.5億円である。
6.丸ビルの建物の再調達原価
平成14年建築の丸ビルの建築費は、581億円である。
2021年3月の丸ビルの再調達原価は如何ほどになるであろうか。
2021年3月の再調達原価は、次のごとく求める。
国交省発表の東京の2020年1月〜12月のRC造の建設データは、次の通りである。
棟数 2,755棟
延床面積 4,632,319u
工事予定額 159,767,480万円
上記データからu当り工事費は、
159,767,480万円
────────── = 34.49万円
4,632,319u
34.49万円である。
丸ビルは、平成14年(2002年)に建設されている。国交省発表による平成14年のRC造の東京の建築費は、
平成14年(2002年) u当り19.67万円
である。
2002年から2021年3月までの東京RC造の建築費の変動率は、
34.49
──── = 1.753
19.67
1.753である。
丸ビルの再調達原価は、
581億円×1.753 ≒ 1018億円
1018億円である。
7.丸ビルの建物の減価修正
丸ビルの再調達原価は、1018億円と求められた。
この金額から、現在の丸ビルの建物価格を求めるための減価修正はどれ程であろうか。
平成14年(2002年)に建築した。現在までの経過年数は、
2021年−2002年=19年
19年である。
丸ビルの建物の全経済的耐用年数は50年とする。
経済的残存耐用年数は、
50年−19年=31年
31年である。
経年の現在価値率は、
31
──── = 0.62
50
0.62である。
次の減価修正を行う。
中古である 0.8
経年減価修正 0.62
その他 1.0
0.8×0.62×1.0=0.496
現在価値率は、0.496である。
8.丸ビルの建物価格
丸ビルの建物価格は、
1018億円×0.496 ≒ 505億円
505億円である。
9.丸ビルの土地価格
丸ビルの建っている土地は、国交省が発表する地価公示設定地であり、それは千代田5-2(千代田区丸の内2-4-1 住居表示)の当該地である。
2021年1月1日現在のその公示価格は、 u当り3720万円である。
この価格をそのまま土地価格として採用してもよいが、地価公示価格は比準価格と収益価格とを勘案して求められている。
通常は、比準価格が高く求められ、収益価格は安く求められている。
それ故、比準価格と収益価格との均衡を考えて決定される。
つまり、比準価格より少し安い価格が、地価公示価格として発表されている傾向がある。
本件の地価公示価格にも、その傾向があるのでは無かろうかと私には思われる。
公示価格の10%アップの価格修正を必要と判断する。
3720万円÷0.9≒4133万円
アベノミックスに伴う日本銀行の金融の超々緩和によって、市場にお金があふれているが、そのあふれている金は、株式と不動産に廻り、株価の高騰そして都心商業地の地価高騰を引き起こしている。地価公示価格と市場取引価格との間にギャツプが生じている。
この市場取引価格への修正を20%アップとする。
4133万円×1.2≒4960万円
丸ビルの土地価格を、u当り4960万円と判断する。
丸ビルの土地面積は、10,027uである。
4960万円×10,027u=49,733,920万円
≒4973億円
丸ビルの土地価格は、
4973億円
である。
10.丸ビルの土地建物価格
丸ビルの土地建物価格は、下記である。
土地価格 4973億円
建物価格 505億円
計 5478億円
11.丸ビルの粗利回り
粗利回りとは、年間賃料総収入を土地建物の価格で除した割合である。
年間賃料総収入
──────── = 粗利回り
土地・建物価格
丸ビルの年間賃料総収入は、173億円である。
丸ビルの土地建物価格は、5478億円である。
丸ビルの粗利回りは、
173億円
────── =0.0315 ≒ 0.032
5478億円
3.2%である。
12.丸ビルの償却前総合還元利回り
丸ビルの償却前純収益は、125.5億円である。
丸ビルの土地建物価格は、5478億円である。
総合還元利回りは、
純収益
───────── = 総合還元利回り
土地・建物の価格
の算式で求められる。
算式に、純収益、土地・建物の価格の数値を代入すれば、丸ビルの総合還元利回りは求められる。
下記である。
丸ビルの償却前総合還元利回りは、
125.5億円
────── = 0.0229
5478億円
2.29%である。
13.丸ビルの減価償却後総合還元利回り
丸ビルの減価償却後総合還元利回りを求める。
丸ビルの減価償却費を経費に含めない必要諸経費は、
17,307,332,125円×0.275=4,759,516,334万円≒47.6億円
である。
これに建物の減価償却費を加算する。
建物価格は、505億円である。
残存経済的耐用年数は、31年である。
減価償却費は、
505億円
───── ≒ 16.29億円
31
16.29億円である。
減価償却費を含めた必要諸経費は、
47.6億円+16.29億円=63.89億円
である。
丸ビルの総収入は、17,307,332,125万円≒173.07億円である。
純収益は、
173.07億円−63.89億円 = 109.18億円
109.18億円である。
丸ビルの土地・建物価格は、5478億円である。
前記した総合還元利回りを求める算式に数値を入れれば、下記である。
109.18億円
────── =0.0199
5478億円
丸ビルの減価償却後総合還元利回りは、
1.99%
である。
14.総合還元利回りのまとめ
丸ビルの2021年3月の総合還元利回りをまとめると、下記である。
減価償却前還元利回り 2.29%
減価償却後還元利回り 1.99%
減価償却後還元利回りが2.0%を切る状態は、金融の過剰性流動性が限界に来ている状況を示す。平成バブルの時は、2.0%を切って平成バブルが発生した。経済の目に見えない自律調整機能が稼働した。
現在は黒田日銀の異次元の金融の超超超緩和政策が続いており、金余り現象が引き続き続いている。しかしそれも無期限にいつまでも続くわけではない。
過剰流動性の危険信号の状態にあるということに変わりは無い。
丸ビルの総合還元利回りの分析推移をまとめて記せば、下記である。
償却前還元利回り 償却後還元利回り
2015年3月 2.55% 2.28%
2016年3月 2.51% 2.23%
2017年3月 2.33% 2.04%
2018年3月 2.23% 1.93%
2019年3月 2.21% 1.93%
2020年3月 2.21% 1.91%
2021年3月 2.22% 1.99%
上記分析から、償却後還元利回りが2%を切った2018年以降、地価下落がいつ起きても不思議で無かったが、地価はなかなか下がらなかった。
2021年1月の丸ビルの土地に設定されている地価公示価格千代田5-2は、u当り3720万円(前年はu当り3760万円)となり、それまで上昇し続けてきた土地価格はやっと下落した。
地価公示千代田5-2の土地価格の推移は、次の通りである。
平成28年1月1日 u当り3280万円 (-)
29年1月1日 u当り3490万円 (+6.4%)
30年1月1日 u当り3570万円 (+2.3%)
31年1月1日 u当り3680万円 (+3.1%)
令和2 年1月1日 u当り3760万円 (+2.2%)
令和3 年1月1日 u当り3720万円 (-1.1%)
地価下落が始まった。
上記分析の還元利回りは、一つのメルクマールとして使えるのではなかろうかと私は思い、情報発信する。
鑑定コラム2266)「丸ビルの賃料は坪当り64,349円(2021年3月)」
鑑定コラム2123)「丸ビルの償却後総合還元利回りは1.91%、過剰流動性の危険信号(2020年3月)」
鑑定コラム1380)「丸ビルの賃料の推測」
鑑定コラム2268)「日経丸の内・大手町オフイス賃料と丸ビル賃料 (2021年3月)」
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