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1.はじめに
賃貸建物の支払賃料総額と公租公課(固定資産税、都市計画税)の間には密接な関係がある。
北海道恵庭市を例にして、恵庭市に設定されている商業地の地価公示価格の収益還元法採用の支払賃料総額と土地建物の固定資産税のデータから、賃貸ビルの支払賃料総額とそのビルの土地建物の公租公課の関係を分析し、両者の間に密接な関係があると云うことを証明する。
2.支払賃料収入額と公租公課の関係
支払賃料収入額と公租公課の関係については、拙著『賃料<地代・家賃>評価の実際』P73(プログレス 2005年)で、分析され、関係が強いことが証明されている。
割合でいうと、公租公課の支払賃料総額に占める割合は、貸事務所ビルにおいて、「平均値10.1% 標準偏差1.80」と分析されている。
そしてP75では、年間賃料が少ないほど公租公課の占める割合は高くなり、年間賃料1億円以下では、公租公課の占める割合は11%であり、50億円では7.3%であると分析し、年間賃料と公租公課割合の関係を下記のごとく述べている。
年間賃料 公租公課割合
1億円以下 11%
1〜8億円 10%
10億円 9.7%
20億円 9.1%
30億円 8.5%
40億円 7.9%
50億円 7.3%
鑑定コラム2333)で記したが、日本の不動産会社の雄の一つである三井不動産が運営する日本ビルファンド投資法人の所有する75件の賃貸ビルの賃料収入に対する公租公課の占める割合は、2021年6月決算では8.1%であった。
地方都市部に所有する賃貸ビルの賃料収入に対する公租公課の占める割合は、9.8%であった。
3.データ
3年前程より地価公示地の鑑定書が公開される様になった。商業地の地価公示地の場合には、収益還元法が必ず行われている。
公示地の土地上に最有効使用の賃貸建物が想定され、周辺賃料より比較して、妥当と思われる賃料、そして必要諸経費によって収益価格が求められている。
そこに使用されている支払賃料収入総額、そして必要諸経費の中の土地・建物の固定資産税・都市計画税の数値を採用する。
前記したごとく、北海道の恵庭市商業地の地価公示価格の公開鑑定書に記載されている収益還元法のデータを例として分析する。
令和3年1月1日時点の恵庭5-1〜5-6の地価公示地の収益還元法データによる支払賃料総額及び土地建物の公租公課は下記である。
|
支払賃料円
|
公租公課円
|
公租公課割合
|
恵庭5-1
|
23986980
|
2700400
|
0.113
|
恵庭5-2
|
4194048
|
438000
|
0.104
|
恵庭5-3
|
5821728
|
598400
|
0.103
|
恵庭5-4
|
4202496
|
452900
|
0.108
|
恵庭5-5
|
22680000
|
2755400
|
0.121
|
恵庭5-6
|
15198336
|
1772600
|
0.117
|
平均
|
|
|
0.111
|
恵庭市の商業地の賃貸ビルの支払賃料に対する公租公課の割合の平均は、
11.1%
である。
4.グラフ
上記データを、縦軸に支払賃料総額(円)、横軸に公租公課(円)をとって図示すると下図である。
5.回帰式
上記グラフを見ると、支払賃料総額と公租公課に間には、右肩上がりの線型代数の相関関係があると見てとれる。
Y:支払賃料総額(円)
X:土地・建物の公租公課(円)
として、上記データよりXYの関係式を求めると下記である。
Y=590,223+8.321X
相関係数 0.998
上記グラフに関係式を示すと、下図である。
相関係数が0.998であるから、公租公課と支払賃料の間には密接な関係があると認められる。
公租公課の金額より求められる支払賃料総額の信頼度は高いと判断される。
この関係を利用すれば、賃貸ビルの土地建物の公租公課が分かれば、その公租公課をXに代入すれば、その賃貸ビルの年間支払賃料が求められる。
その求められた年額の支払賃料を12で割れば、月額の賃料が求められる。
それを賃貸面積で除せば、u当り賃料が求められる。
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