1.はじめに
不動産鑑定評価の理論雑誌に『Evaluation』という専門雑誌がある。プログレス(発行者 野々内邦夫 電話03-3341-6573)という出版社が発行している。
その67号が、2018年9月30日付で発行された。
同誌の37頁に、『有料老人ホームの賃料と公租公課の関係』という論文が掲載されている。著者は私である。
貸ビル賃料、一棟賃貸マンションと公租公課の間には強い相関関係が認められる。
有料老人ホームの賃料も賃貸不動産である限り、賃料の重要な必要諸経費である公租公課とは強い相関関係があるのではないかと考え、両者の関係を分析してみた。
以下に、その両者の関係を分析した論文の概要を述べる。
2.使用データ
有料老人ホームの賃料等データは、Jリートの公表データによる。
データ採用の有料老人ホームの投資法人(以下「ヘルスケア投資法人」と呼ぶ)は、
ヘルスケア&メディカル投資法人(平成29年1月31日) ジャパン・シニアリビング投資法人(2017年2月28日)
純賃料 + 必要諸経費 = 支払賃料
還元利回り 直接還元法価格 必要諸経費 減価償却費 公租公課
直接還元法価格 × 還元利回り
純賃料÷還元利回り=直接還元法価格
・還元利回り 4.4% ・直接還元法価格 993,000,000円 ・6ヶ月賃貸事業経費 5,511,000円 ・6ヶ月減価償却費 3,048,000円 ・6ヶ月公租公課 1,774,000円
993,000,000円×0.044=43,692,000円
6ヶ月賃貸事業経費−6ヶ月減価償却費=6ヶ月償却前経費
6ヶ月償却前経費×2=年間経費
5,511,000円−3,048,000円=2,463,000円
2,463,000円×2=4,926,000円
純賃料+必要諸経費=年間賃料
43,692,000円+4,926,000円=48,618,000円
公租公課 ────── = 公租公課割合 年間賃料
年間公租公課 1,774,000円×2=3,548,000円
年間賃料 48,618,000円
3,548,000円 公租公課割合=─────── ≒ 0.073 48,618,000円
7.3%
名称 | 年間賃料 円 | 年間公租公課 円 | 公租/賃料 |
ボンセジュール千歳船橋 | 48618000 | 3548000 | 0.073 |
ボンセジュール日野 | 43674000 | 2416000 | 0.055 |
ボンセジュール武蔵新城 | 36463000 | 1942000 | 0.053 |
アズハイム光が丘 | 85062000 | 7464000 | 0.088 |
アズハイム文京白山 | 78916000 | 5044000 | 0.064 |
ラヴイーレあざみ野 | 175270000 | 9376000 | 0.053 |
グッドタイム不動前 | 97432000 | 5768000 | 0.059 |
ジョイスステージ八王子 | 228230000 | 15972000 | 0.070 |
ニチイホームたまプラーザ | 160276000 | 11180000 | 0.070 |
ニチイホーム中野南台 | 95864000 | 6508000 | 0.068 |
ゆいまーる聖ヶ丘 | 70108000 | 5448000 | 0.078 |
平均 | 0.066 |
6.6%
ヘルスケア年間賃料 Y 年間公租公課 X
Y=17,624,054+14.09X 相関係数 0.82