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2442) 借地権価格が発生していない場合の借地権付建物価格が基礎価格になるのか

 借地権付建物の新規賃料を求める場合、基礎価格は、借地権付価格であるとする考えが、かっては鑑定業界を席巻していた。

 そのことは、日本不動産鑑定協会(現在の日本不動産鑑定士協会連合会)の実務補習(現在は実務修習という)の講義テキストの、借地権付建物価格の賃料の基礎価格の記述の推移を分析すればわかる。

 今でも、そう思い込んで不動産鑑定書を書いている不動産鑑定士がいる。

 その考えに従えば、借地権はあるが借地権価格が発生していない場合の基礎価格は、

    借地権価格0円+建物価格
と云うことになる。

 積算賃料の求める算式は、
    基礎価格×期待利回り+必要諸経費
である。

 借地権価格0円の借地権付建物の基礎価格の期待利回りはどの様にして求められるのか。

 所有権土地価格で形成される期待利回りを採用することは、所有権と借地権とは類型が異なることから、不可である。

 借地権価格0円の借地権付建物の基礎価格に乗じる期待利回りを、理論的でかつ合理的にどの様にして求めるのか、その求め方は確立していない。

 2022年の実務修習・指導要領テキストP350では、借地権付建物の基礎価格として求められた賃料と、自用の建物及びその敷地の価格を基礎価格として求められた賃料とは同じになると解説されている。

 どの様な求め方にすれば、借地権価格0円の借地権付建物を基礎価格にして求める場合の賃料が、自用の建物及びその敷地を基礎価格にして求められる賃料と同じ賃料を求めることが出来るであろうか。

 新規賃料は、積算賃料と比準賃料から決定するのであるが、借地権価格0円の場合の比準賃料を求めるに、同じ類型の新規の賃貸事例が近隣地域、類似地域に3つも4つもあるのであろうか。

 所有権土地建物の賃貸建物事例を事例として採用することは、類型が異なる不動産の事例であって事例の類似性で不可である。

 もし、それを行った場合は、借地権付賃貸建物の賃料と所有権上の賃貸建物の賃料とは同じである事を自ら認識して行うことになり、自己矛盾となり、その不動産鑑定評価は間違っていることになる。

 事実上、賃貸事例比較法の比準賃料は求められ無いことになる。

 これらを考察すると、借地権付建物価格を基礎価格にして求める賃料は、理論として合理性が無い理論と云うことになる。

 理論とは、どの様な条件に合っても適用出来るものであって、一部の場合にしか適用出来無いものは、理論ではない。

 借地権価格0円の借地権付建物を基礎価格にして求める積算賃料が、自用の建物及びその敷地の価格を基礎価格にして求める賃料と同じになる求め方が確立していないことから、借地権付建物を基礎価格にして求める理論は、理論と云えるものでは無い。理論として失当である。

 借地権価格0円の借地権は存在するのかという反論があろうが、地方にあっては、借地権価格0円の借地権は多く存在する。



  鑑定コラム2438)
 「借地権付建物賃料基礎価格についての2022年実務修習テキストの記述」

  鑑定コラム2419)「新規賃料の積算賃料と比準賃料の賃料額の関係について」

  鑑定コラム2290) 「まだ、借地権付建物価格を基礎価格にする不動産鑑定士がいる」

  鑑定コラム2440) 「借地権付建物の賃料を求める基礎価格についての考え方の推移」

  鑑定コラム2430)「ある借地権付建物の賃料評価の鑑定書」



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