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2518) 晴海選手村土地の街区価格の均衡が見られない土地価格鑑定

 2022年11月の下旬の24日、東京都湾岸地区の乱開発を監視する住民団体の連合体である「臨海部開発問題を考える都民連絡会」の第33回総会後に行う講演を頼まれ、講演を行った。場所は、江東区豊洲2丁目2-2-18にある豊洲文化センター第2研修室であった。

 豊洲文化センターには初めて行ったが、交通は東京メトロ有楽町線「豊洲」駅至近である。もう一つの交通は、新橋駅より出ているゆりかもめ東京臨海新交通臨海線「豊洲」駅至近である。

 講演の話の内容は、2021年暮れに判決された晴海選手村土地不当廉売事件の1審判決は間違っており、判決が拠り所としている不動産鑑定評価の何処がどの様に間違っているかについて話した。

 不動産鑑定評価については、全くの知識が無い人が多い事を前提にして、不動産鑑定評価の初歩を説明し、事件内容とどの様に不動産鑑定が係わっており、そしてどの様に間違って不動産鑑定評価がなされているか。それに拠って1審判決の何処がどの様に間違っているのかを指摘し話した。

 1時間半の間に、晴海選手村土地不当廉売事件の何処が、どの様に間違っているかを話終えることは難しく、かなり端折って話さざるを得なかった。

 講演最後に、不動産鑑定評価の街区毎の土地価格を図に示し、街区の土地価格の均衡の無い不自然な土地価格の街区図を示し、こうした鑑定評価の結果の価格の出現はあり得ない土地価格であると説明した。

 不動産鑑定評価の知識の無い人であっても、表通り・メーン通りの土地の方が、背後の土地価格よりも高いと云うことは、それが経済現象であるということは知っている。

 土地価格が隣接地価格と80%も違うとか、メーン通り沿の土地価格が背後地よりも安く、背後の土地価格がメーン通りの土地価格よりも4倍も高い土地価格と鑑定され、それが適正であると認める裁判所の裁判官の考えはまともとは思えなく、判決は経済現象を全く反映しない甚だおかしい判決であると分かるであろうと思い話した。

 下図が晴海選手村土地の鑑定評価された街区の土地価格一覧図である。

 図の右側は、前記した東側にある巾員60メートルの環状2号線の道路である。

 図の上側(北)、下側(南)、左側(西)は、いずれも海で東京湾である。



晴海小学校用地


     A  :  第5-3街区
     B : 第5-4街区
     C : 第5-5街区
     D : 第5-6街区
     E : 第5-7街区
     文 : 選手の食堂で、令和4年1月中央区が東京都から学校用地として売買取得した土地。公共減額として50%の割引価格。


 区画の土地価格として、A・B画地の東側は前記した巾員60メートルの環状2号線(メーン通り)である。他の画地は巾員18〜50mの道路に面する。

 A〜Eの道路条件、位置条件を考えても、同一近隣地域で、2.7万円/u〜10.8万円/uの価格差があり、かつ価格差が逆転している土地価格はあり得ない。

 土地価格は近隣地域の土地価格と代替、競争関係があり、それ等によって均衡して形成される。

 巾員60mの環状2号線(メーン通り)に面するA画地の土地価格が、背後に所在する巾員36m道路に面するC画地の土地価格の1/4の価格にあるということなど、まず現実にあり得ない土地価格水準体系である。

 土地価格は、近隣地域、類似地域にある取引事例と代替、競争によって均衡して形成される。それが市場性という経済合理性要因による価格形成である。

 それ故、上記図にあるごとくの不均衡な地価の形成はあり得ない。あり得ない不均衡の価格付が生じたのは、それは開発法という手法によって土地価格が求められた結果である。

 開発法による価格は、開発法を構成する分譲価格、建築工事費、一般管理費等が適正な価格・数値の場合には適正な価格が求められるが、それ等が一つでも不適正であった場合には、甚だ不適正な価格が求められる欠点を有している。

 不適正な使い方によって、市場性を全く無視した上記図のごとくとんでもない価格を導き出す鑑定手法と云うことが良く分かろう。

 上記図の土地価格の状況をより分かり易く説明すると、画地Aの接する東側の環状2号線(メーン通り)を銀座中央通りとみなす。

 左側背後にある画地C・Dの接する道路が、銀座中央通りの背後にあって銀座中央通りと並行に走る並木通りとみなす。

 鑑定評価は、並木通りに接する画地C・Dの土地価格(u当り単価、以下同じ)が、銀座中央通りに接する画地Aよりも2.8倍〜4倍高い土地価格ということである。

 現実にあっては、銀座中央通りの土地価格は、令和4年地価公示価格によれば、中央5-23(中央区銀座7丁目9-19 住居表示)でu当り3820万円である。

 並木通りの土地価格は、令和4年地価公示価格によれば、中央5-53(中央区銀座8丁目6-20 住居表示)でu当り1350万円である。

 中心通りである銀座中央通りの方が、背後脇通りである並木通りよりも土地価格は遙かに高い。

 これが、世間一般の土地価格形成の常識の土地価格の在り方である。

 然るに、晴海選手村土地鑑定価格にあっては、並木通りの土地価格の方が、銀座中央通りの土地価格よりも高いと云っているのである。

 上記図のあり得ない不均衡な土地価格付が生じた開発法採用による土地価格の求め方が、根本的に間違っている事が、上記図の街区土地価格が出現していることによって証明されている。

 こうした各街区の土地価格水準に何も疑問を感じずに適正価格であると主張する不動産鑑定の専門家の存在に甚だ疑問が生じる。そのことに疑問すら投げかけない裁判官の節穴にも驚く。

 上記街区価格はとても均衡している土地価格とは云いがたい状態である。

 「文」の土地は、晴海選手村のど真ん中にある晴海5丁目の学校等用地である。

 この土地は、オリンピック終了後の令和4年1月に買い戻し特約登記付で、東京都から中央区に99.5億円(u当り592,386円)で売買された。

 この金額は50%公共減額した価格と云うことから、減額する前の土地価格は、
        592,386円÷0.5=1,184,772円≒118万円
u当り118万円ということになる。

 選手村のど真ん中にあり選手の食堂建物敷地として利用されていた土地が、u当り118万円である。

 時間差があるとはいえ、画地A〜Eの土地価格が2.7万円/u〜10.8万円/uということは、無茶安と云うことが良く分かるであろう。

 この無茶安の価格が適正な価格であると主張する不動産鑑定士、不動産鑑定会社、その価格が適正であると判決する一審判決は、いささかおかし過ぎるではなかろうか。

 都有地を食い物にしょうとする行為に、裁判所が積極的、消極的いずれにしろ加担することは許されることでは無い。加担することを避けることは当然のことでは無かろうか。


 上記銀座中央通りの地価公示地中央5-23と並木通りの中央5-53の位置関係については、令和4年相続税路線価で場所が図示してあることから、それを見れば分かります。

 下記アドレスで見ることが出来ます。

https://www.rosenka.nta.go.jp/main_r04/tokyo/tokyo/prices/html/18011f.htm

 上記のアドレスをドラッグコピーして、自分宛のメールにアドレスをコピー貼り付けして、自分宛にメールを送信して、自分宛に来たメールの中の青字等カラー文字のアドレスをクリックすれば、繋がります。



  鑑定コラム2386)「晴海選手村土地不当廉売事件の都側の鑑定評価は地価公示法違反である」

  鑑定コラム2532)「東京オリンピック晴海選手村土地価格の田原講演と新聞『臨海かわら版』」

  鑑定コラム2533)「地価公示価格等と規準しない土地の不動産鑑定評価額は不適正であるとする判決」


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