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1302)再度云う Jリートの利回りを家賃評価の期待利回りに使うな

 Jリートの還元利回りは、家賃評価の期待利回りにはなりえない。

 このことについては、鑑定コラム1104)「Jリートの還元利回りは賃料評価の期待利回りにはならない」(2013年7月27日) で述べた。

 その理由として、2つを挙げた。

 1つ目は、Jリートの公表されている還元利回りは、収益価格から求められた利回りであるということである。

 家賃評価の基礎価格は、土地建物の積算価格であり、収益価格を基礎価格にはしない。
 収益価格と積算価格とは、同じ不動産価格の範疇にあるが、全く性質の異なる価格である。

 収益価格から求められた利回りは、収益価格を求める時に使うものであり、性質の異なる積算価格に使うものでは無い。

 即ち、Jリートの公表されている還元利回りは、収益価格に対応する利回りであって、積算価格に対応する利回りではない。

 2つ目は、Jリートの純収益は、キャッシュフローの純収益であるということである。

 その純収益には減価償却費が含まれている。

 それ故、求められる還元利回りは、減価償却費の割合相当が含まれた利回りである。

 一方、家賃鑑定の純収益は、減価償却費が含まれない純収益である。

 それ故、使用する期待利回りは、減価償却費が入っていない利回りである。

 Jリートの還元利回りを、家賃評価の純賃料を求める期待利回りとして採用し、基礎価格に乗じて純賃料を求めると、その純賃料は、減価償却費が含まれた純賃料となる。
 
 積算賃料は、

     純賃料+必要諸経費

の算式で求める。上記必要諸経費には、減価償却費が含まれている。

 減価償却費が含まれる純賃料に、減価償却費が含まれる必要諸経費を加算して積算賃料を求めると、その求められた積算賃料には、減価償却費がダブルで入っていることになる。

 この積算賃料は不可であろう。

 ならば、Jリートの公表されている還元利回りから、減価償却費相当の割合を差し引いて、それを期待利回りとして、その期待利回りで積算賃料を求めればよいではないのかという主張は当然ある。

 そうした期待利回りで、積算賃料を求めている賃料鑑定書を見かける。

 しかし、そうしたことを行ったとしても、Jリートの収益価格の利回りという要素をぬぐい去ることは出来ないから、その行為も不可である。

 Jリートの収益価格の要素とは何かと云えば、それは、

      Jリートの収益価格 > 積算価格

という要素である。

 鑑定コラム1104)では、上記2つの点しか述べなかった。

 もう一つ致命的な不可要因がある。それを述べる。

 それは以下の要因である。

 Jリートの賃料は、新規契約した賃料というものは、極少なく、ほとんどが継続している賃貸借契約の賃料である。

 その賃料から求められる純収益は、継続賃料の純収益である。

 継続賃料の純収益から求められた還元利回りは、継続賃料の要素を持った利回りと云うことになる。

 つまり、Jリートより求められた還元利回りは、継続賃料の還元利回りということになる。

 積算賃料は新規賃料であり、期待利回りは新規賃料によって求められた利回りである。
 
         基礎価格×期待利回り(新規賃料によって求められた利回り)

 上記算式によって求められた賃料が、積算賃料である。

 この期待利回りに、継続賃料で求められた利回りを使用することは、不可であろう。

 この要因を全く考えずに、Jリートが発表している還元利回りのデータを20件、50件とか中には100件近くのデータを集め、その平均を求め、その値を期待利回りに採用している賃料鑑定書も見受けられる。

 酷な言い方であるが、その賃料鑑定書の期待利回りは、的はずれも甚だしく適正な期待利回りとは云えない。求められた賃料は、論理的に正当性は無い。

 その賃料鑑定書は、賃料鑑定失格の鑑定書である。


  鑑定コラム1104)
「Jリートの還元利回りは賃料評価の期待利回りにはならない」

  鑑定コラム1202)「不動産ファンド運営会社の戸惑い」

  鑑定コラム1460)「銀座の土地が坪2億円で取引された」

  鑑定コラム1678)「継続賃料利回りは期待利回りにはならない(その1)」

  鑑定コラム2545)「Jリートの還元利回りは新規賃料を求める期待利回りにはならない」


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