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1.丸ビルの償却後土地還元利回り
丸ビルの償却後総合還元利回りは、鑑定コラム2603)で、2.11%と求められている。
この利回りから、丸ビルの償却後土地還元利回り、償却後建物還元利回りを求める。
償却後土地の還元利回りをXとする。
償却後建物の還元利回りは、
X + 償還基金率相当
とする。
償還基金率とは、耐用年数n年の建物の取得価格を、n年後に再取得るために、年利率rで年末に一定額を償却額とし積立てる場合に使用す率が償還基金率である。
経済的耐用年数n年で再取得することは、価格をn年で償却することと同じと判断してもよい。その平均償却率は1/nである。この平均償却率1/nを利率にして求めれば、再取得価格を求めることが可能である。
丸ビル建物の残存耐用年数は29年である。平均償却率は
1/29 = 0.0345
0.0345である。
この0.0345を償還基金率を求める利率とする。
利率0.0345、期間29年の償還基金率は0.021である。
建物の還元利回りは、X+0.021である。
不動産鑑定評価基準(以下「鑑定基準」とする)は、還元利回りの求め方として4つの手法を示す。
その内の一つとして、土地建物の各個別還元利回りから総合還元利回りの求め方を示すが、それは、土地建物価格と総合還元利回り及び土地建物各個別還元利回りの関係を表すことでもある。
「(ウ)土地と建物に係る還元利回りから求める方法
この方法は、対象不動産が建物及びその敷地である場合に、その物理的な構成要素(土地及び建物)に係る各還元利回りを各々の価格の構成割合により加重平均して求めるものである。(平成26年改正鑑定基準 国交省版 P30)」
鑑定基準は、土地建物の価格の構成割合と云うが、それぞれの価格と考えても同じである。
上記鑑定基準の規程より、総合還元利回りと土地建物価格、土地建物各個別還元利回りの間には、次の関係式が成立する。
土地価格×土地還元利回り+建物価格×建物還元利回り
─────────────────────── = 総合還元利回り
土地価格+建物価格
鑑定コラム2601)で、丸ビルの土地価格は4907億円、建物価格は478億円と求められている。
4907億円×(X) +478億円×(X+0.021)
──────────────────────────=0.0211
4907億円+478億円
これを解けば、
X=0.0192
である。
土地の償却後還元利回りは、1.92%である。
建物の償却後還元利回りは、
1.92%+2.1%=4.02%
である。
2.丸ビルの土地年間利益
上記から、2023年3月時の丸ビルの償却後土地還元利回りは1.92%と求められた。
丸ビルの2023年3月時の土地価格は、2023年1月1日の地価公示価格を修正し、4907億円とした。
丸ビルの土地の年間利益は、
4907億円×0.0192=94.2144億円≒94.2億円
である。
3.丸ビルの土地の月額坪当り利益
年間94.2億円は、月額坪当りに換算するとどれ程になるであろうか。
月額坪当り利益を以下で求める。
丸ビルの土地面積は、10,027uである。
9,421,440,000円÷10,027u=939,607円/u
月額では、
939,607円/u÷12=78,301円/u
である。
坪当りでは、
78,301円/u×3.30578=258,846円
である。
丸ビルの月額坪当りの利益は、258,846円と求められる。
4.丸ビルの土地の公租公課
丸ビルの土地は、地価公示地千代田5-2の設定土地である。
地価公示価格の鑑定書は、平成31年からネットで公開されるようになった。
千代田5-2の地価公示価格の鑑定書もネットで公開されている。
その公開鑑定書の収益還元法の章を見ると、必要諸経費が記載されている。
必要諸経費の中の土地公租公課(固定資産税・都市計画税)を見ると、金額は、
2,541,643,000円(査定額)
とある。
土地の公租公課は、25億4164万3千円である。
査定額とあるが、それは建物の利用内容等で特別に土地公租公課が減額される場合の要因は考え無いということであろうと思われ、課税額は当該土地の標準的な土地公租公課の金額と判断する。
土地公租公課の月額坪当りの金額は、前記と同様に求めると、下記である。
丸ビルの土地面積は、10,027uである。
2,541,643,000円÷10,027u=253,480円/u
月額では、
253,480円/u÷12=21,123円/u
である。
坪当りでは、
21,123円/u×3.30578=69,828円
である。
丸ビルの月額坪当りの土地公租公課は、69,828円と求められる。
5.丸ビル土地の利益/丸ビル土地公租公課の算式による倍率
丸ビルの土地利益は、丸ビルの土地公租公課の何倍になるのか。この側面から丸ビルの土地利益を考える。
上記分析より、
丸ビルの月額土地利益 坪当り258,846円
丸ビルの月額公租公課 坪当り 69,828円
と求められた。
(丸ビルの月額土地利益/丸ビルの月額公租公課)の割合を求めると、
258,846円
─────── = 3.71倍
69,828円
(9,521,440,000円÷2,541,643,000円=3.71倍)
丸ビルの土地利益は、土地公租公課の3.71倍である。
6.終わりに
地代を求めるのに、公租公課倍率法という簡便法がある。
住宅地の地代は、その土地の公租公課の3倍等の地代が妥当として、地代を求める方法である。
その方法で考察すると、丸ビルの土地利益は、土地公租公課の3.71倍であるから、理に適った土地利益であるということになる。
賃貸建物の土地利益が、妥当の利益であるかということを、土地の公租公課から分析検討する方法も有り得るという例示である。
年間25.41億円の土地公租公課を支払きれる土地ということは、さすがに日本のトップにある土地である。その土地の経済力に改めて驚嘆する。
(追記) 2023年6月23日 鑑定基準の還元利回りの求め方の項目部分を追記する。
鑑定コラム2603)「地価上昇の限界 償却後利回り2% 丸ビルの償却後利回り 2.11%(2023年3月)」
鑑定コラム2601)「2023年3月 丸ビルの償却前還元利回りは2.41%」
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