○鑑定コラム
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東京駅を丸の内側(皇居側)に出て、駅前広場に出る。駅前広場から皇居を見ると、皇居に通じる広い大きな通りが目に入る。
行幸通りである。
東京駅前広場に面し、行幸通りを挟んで、2つの大きな高層ビルが建っている。
左側のビルが丸ビル(丸の内ビルディング)であり、右側のビルが新丸ビル(新丸の内ビルディング)である。
丸の内は、皇居前に三菱村と云われるごとく三菱地所のビルが建ち並ぶ。
その三菱村の丸の内にあっても、丸ビル、新丸ビルは、事務所ビル土地として最高の場所にあり、ビルも新しく、事務所ビルとして日本一の事務所ビルの双璧であると私は判断している。
その双璧の一つの丸ビルの敷地が、地価公示地法に基づく地価公示地の標準地千代田5-2(千代田区丸の内2-4-1 住居表示) に選定されている。
令和6年(2024年)1月1日の地価公示価格は、1u3680万円である。
平成31年(2019年)より、地価公示価格の鑑定評価書が公開される様になった。
千代田5-2の公示地の鑑定書には、収益価格を求めるために、その土地に鉄骨造36階建(地下4階)延床面積165,143.00uのビルが想定されている。
各階の用途は、下記である。
地下2〜4階 駐車場
地下1階 店舗
地上1〜6階 店舗
地上7〜34階 事務所
地上35〜36階 店舗
レンタブル比は、54.2%若しくは54.3%である。
上記用途の賃料が設定されて、収益価格が求められている。
地価公示価格は、2人の不動産鑑定士によって求められており、その2人の地価公示価格の鑑定書は公開されている。2つの鑑定書をA鑑定、B鑑定とする。
鑑定書が公開された平成31年〜令和6年までの収益価格に採用された賃料一覧は、下記である。
|
平成31年
|
令和2年
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令和3年
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令和4年
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令和5年
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令和6年
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A鑑定
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延床面積 u
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165143.00
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165143.00
|
165143.00
|
165143.00
|
165143.00
|
165143.00
|
有効面積 u
|
89566.04
|
89566.04
|
89592.14
|
89566.04
|
89566.04
|
89566.04
|
月額支払賃料 円
|
1317815184
|
1317815184
|
1337164346
|
1273488364
|
1246408752
|
1220207568
|
u当り単価 円
|
14713
|
14713
|
14925
|
14218
|
13916
|
13624
|
坪当り単価 円
|
48638
|
48638
|
49339
|
47002
|
46003
|
45038
|
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B鑑定
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延床面積 u
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165143.00
|
165143.00
|
165143.00
|
165143.00
|
165143.00
|
165143.00
|
有効面積 u
|
89592.14
|
89592.14
|
89566.04
|
89566.04
|
89566.04
|
89566.04
|
月額支払賃料 円
|
1323531116
|
1345205240
|
1311495984
|
1300969392
|
1287571784
|
1237452148
|
u当り単価 円
|
14773
|
15015
|
14643
|
14525
|
14376
|
13816
|
坪当り単価 円
|
48836
|
49636
|
48407
|
48016
|
47524
|
45673
|
|
|
|
|
|
|
|
平均坪当り賃料 円
|
48737
|
49137
|
48873
|
47509
|
46764
|
45356
|
u当り賃料は、月額賃料を有効賃貸面積で除して求める。坪当り賃料はu当り賃料に3.30578を乗じて求める。平均賃料は、A鑑定、B鑑定を足して2で割った平均賃料である。
A鑑定、B鑑定の平均賃料は、坪当り賃料で、
平成31年 48,737円
令和2年 49,137円
令和3年 48,873円
令和4年 47,509円
令和5年 46,764円
令和6年 45,356円
である。
令和6年(2024年)の丸ビル敷地上に想定された事務所ビルの賃料は、坪当り45,356円である。
2024年3月の三菱地所の決算書から分析された三菱地所が賃貸している丸の内地区の賃貸ビルの平均賃料は、坪当り42,866円(鑑定コラム2741)と求められた。
丸ビル敷地に設定された地価公示千代田5-2に想定された36階建の事務所等ビルの賃料は、坪当り45,356円である。
両賃料の開差は、
45,356円
────── = 1.058
42,866円
5.8%である。
東京駅前の丸の内地区の1等地にある丸ビル敷地上に想定した建物の賃料が、丸の内地区の平均賃料の5.8%高にしか過ぎないということは、いささか賃料としては、安すぎるのでは無かろうか。
鑑定コラム2744)で記したが、不動産仲介業者の47株式会社が運営する「officee」というホームページには、有楽町・霞ヶ関の事務所賃料の平均は、坪当り47,700円と記されている。
丸ビル敷地上に想定した地価公示の建物の賃料は、有楽町・霞ヶ関の事務所賃料の賃料よりも安いという事になる。
その様な事は無いであろう。
日本経済新聞社のオフイスビル賃貸料の2024年春調査である『東京・横浜・大阪のオフイスビル賃貸料』では、「丸の内〜大手町」の賃貸料は、既存賃貸ビルで「24千円〜60千円/坪」(日本経済新聞 2024年5月3日)である。
上限値の賃料は、坪当り6万円である。
丸の内〜大手町の既存ビルの上限値の賃料のビルは何処かと考えれば、それは、丸ビル、新丸ビルをおいて無いでは無かろうか。
不動産鑑定士は、土地建物の価格の評価だけを行う職業では無い。建物の賃料、土地の地代を評価する職業でもある。
地価公示価格を鑑定し、妥当性を検討している不動産鑑定士の分科会は、公示地上に想定する最有効使用の建物の賃料について、議論検討しているのであろうか。
丸ビル土地上に想定した新築ビルの賃料が、有楽町・霞ヶ関の既存ビルの賃料よりも低額にあると云うことなど、信じがたいことである。
A鑑定、B鑑定の各階賃料を見ると、下記である。賃料は円/uである。
階 用途 A鑑定 B鑑定
35階〜36階 店舗 10,500円 12,600円
7階〜34階 事務所 14,200円 13,700円
1階〜6階 店舗 12,100円 14,200円
地下1階 店舗 13,100円 16,800円
地下2〜4階 駐車場
店舗賃料より事務所賃料の方が高い。
事務所利用の方が店舗利用より賃料が高ければ、店舗利用を止めて事務所利用によるのが、最有効使用の原則では無かろうか。
日経のオフイス賃料調査で、丸の内〜大手町の賃料は坪当りで2.4万円〜6万円と発表されている。
平均値は、下限値と上限値を足して2で割った4.2万円とするのが、簡便で、かつ、最も客観性のある求め方と云える。
そして、丸ビルの立地、品等は、丸の内地区にあって100棟のビルにあって、優れた方の2.5%の範囲に入るビルと判断する。
と判断出来れば、社会現象、物理現象、経済現象は、どうした訳か知らないが正規分布に従って生起する事(研究している学者もその原因がどうして生じるか分からない。)から、正規分布を利用して丸ビルの賃料を推定する事が出来る。
出現率5%(良い方の出現率2.5%+悪い方の出現率2.5%=5%)は標準偏差の1.96倍である。
変動係数を0.322とすれば、平均賃料は4.2万円であるから、標準偏差は、
42,000×0.322=13,524
である。
丸ビルの賃料は、
42,000円+13,524×1.96=68,507円≒68,500円/坪
と求められる。
日経のオフイス調査の賃料より、容易く丸ビルの賃料を推定する事が出来る。
こうした論理的に容易く推定され、求められる賃料の指摘に対して、充分耐えられる賃料設定にしなければダメであろう。何故そうした賃料を求めようとしないのか。
1階〜6階の賃料12,100円/u(A鑑定)、14,200円/u(B鑑定)、7階から34階の賃料14,200円/u(A鑑定)、13,700円/u(B鑑定)の算出根拠不明の支払賃料が、適正であると認め、主張する方がどうかしている。
鑑定コラム2741)「丸の内地区のビル賃料はu当り12,967円(2024年3月)、過去最高」
鑑定コラム2743)「丸ビルの賃料は坪6万9920円 2024年3月」
鑑定コラム2744)「「officee」という不動産仲介業者の丸の内募集賃料」
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