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2827) 能登半島地震後1年 石川県津幡町住宅賃料51%アップ、内灘町26%アップ


 2024年1月1日の午後4時10分ごろ、石川県志賀町で震度7を観測する地震が発生した。令和6年能登半島地震である。

 あれから1年過ぎた。

 家賃に能登半島地震の影響はどの様に顕れているのか。

 石川県の住宅家賃を調べてみた。

 家賃データは、公益社団法人全国宅地建物取引業協会連合会(以下「全宅連」と呼ぶ。)が運営するホームページ『ハトマークサイト』(https://www.hatomarksite.com/analytics/stat/rent/)の賃料統計データの「賃料相場」による。

 石川県の2025年1月(2025年1月27日調査)の賃料は、下記である。

 (平均賃料を表示しております。(単位:万円) ※()内は徒歩10分以内の登録件数(単位:件))
物件番号 地域 ワンルーム count 1K・1DK count 1LDK・2K・2DK count 2LDK・3K・3DK count 3LDK・4K・4DK count 4LDK? count
                           
17201 金沢市 3.59(1) 1 3.18(15) 15 4.63(15) 15 5.53(12) 12 8.6(3) 3 11.5(1) 1
17202 七尾市 - 0 - 0 - 0 - 0 12.2(0) 0 - 0
17203 小松市 4.09(0) 0 3.53(1) 1 4.3(4) 4 5.04(3) 3 5.14(0) 0 5.47(1) 1
17204 輪島市 - 0 - 0 - 0 - 0 - 0 5(0) 0
17206 加賀市 3.99(3) 3 3.33(6) 6 4.06(2) 2 4.58(11) 11 5(0) 0 5.47(1) 1
17207 羽咋市 - 0 - 0 5.55(0) 0 - 0 - 0 - 0
17209 かほく市 - 0 4.35(0) 0 5.7(1) 1 7.75(1) 1 - 0 - 0
17210 白山市 5.2(0) 0 3.28(3) 3 4.34(2) 2 5.5(0) 0 - 0 7.25(1) 1
17211 能美市 2.5(0) 0 3.23(0) 0 4.32(1) 1 5.28(0) 0 13.5(0) 0 - 0
17212 野々市市 2.95(4) 4 3.58(5) 5 4.28(0) 0 5.14(1) 1 10(0) 0 6.5(0) 0
17361 河北郡 津幡町 - 0 3(2) 2 5.07(4) 4 4(0) 0 - 0 5.5(0) 0
17365 河北郡 内灘町 - 0 3.84(2) 2 4.74(0) 0 7.67(0) 0 - 0 - 0
17384 羽咋郡 志賀町 - 0 - 0 - 0 15(0) 0 - 0 - 0


 2DKの面積を40uとして、金沢市の2DK賃料単価を求めると、金沢市の2DKの月額賃料は、46,300円であるから、u当り賃料は、
       46,300円÷40u=1,158円
である。

 同様に石川県の他市町の2DK賃料を求めると、下記である。

       金沢市   1,158円/u
             小松市      1,075
             加賀市   1,015
             羽咋市      1,388
             かほく市    1,425
             白山市   1,085
             能美市   1,080
       野々市市  1,065
             津幡町   1,268
             内灘町      1,185

 輪島市の賃料データは無い。

 輪島市の2DKの賃料データは、保存してある過去のデータを調べて見ると、
           2020年1月  月額45,000円(u当り1,125円)
           2021年1月  月額45,000円(u当り1.125円)
とあるが、それ以降の賃料データは無い。

 石川県内の2DK賃料の一番高い市町は、かほく市のu1,425円である。次いで羽咋市の1,388円である。

 2023年1月、2024年1月、2025年1月の全宅連が発表している「賃料相場」の賃料単価を記すと、下記である。

^変動率は、2025年1月賃料/2024年1月賃料の割合数値である。

地域 2023年1月 2DK 円/u a 2024年1月 2DK 円/u b 2025年1月 2DK 円/u c 変動率c/b
金沢市 1170 1128 1158 1.027
七尾市 1188 - - -
小松市 990 993 1075 1.083
加賀市 975 943 1015 1.076
羽咋市 1090 - 1388 -
かほく市 1225 - 1425 -
白山市 1065 1308 1085 0.83
能美市 1098 975 1080 1.108
野々市市 1213 1105 1065 0.964
河北郡 津幡町 1078 838 1268 1.513
河北郡 内灘町 1285 938 1185 1.263
羽咋郡 志賀町 995 955 - -
羽咋郡 宝達志水町 1175 - - -
平均       1.136

 2024年1月〜2025年1月の1年間で石川県の2DK家賃の平均変動率は、1.136である。13.6%の上昇である。

 金沢市は2.7%の上昇である。

 変動率の最も激しいのは、津幡町の51.3%、内灘町の26.3%の上昇である。

 津幡町、内灘町の2町には、一体何があったのであろうか。

 一方、白山市の2DK賃料は、17%下落している。

 激しい家賃上昇を示した津幡町は、金沢市の北側に隣接し、富山県にも隣接する町であり、人口は37,512人(令和6年12月31日現在)である。

 大相撲の新大関になった大の里の出身地である。

 そして私の大学の先輩で、先輩・後輩として親しくおつきあいをさせてもらっている弁護士から最高裁判事になられた中川了滋弁護士の出身地でもある。

 史蹟としては、木曾義仲上洛途中の源平の戦いの一つの「倶利伽羅峠の戦い」があった町である。

 その戦いは、「倶利伽羅落とし」として、平家物語に記述されている。

 その平家物語の「倶利伽羅落とし」ついては、鑑定コラム2731)で、インターネットの図書館である青空文庫が、岩波書店が発行している岩波現代文庫の 「現代語訳 平家物語第七巻 尾崎士郎訳」を、ネット公開しており、その個所を転載したが、再度その部分を下記に再掲する。

 平家物語が伝える倶利伽羅峠の戦いとはどういうものか、平家没落の端緒となった倶利伽羅峠の戦いを知ることも無駄では無かろう。

****


https://www.aozora.gr.jp/cards/001529/files/60798_75893.html
現代語訳 平家物語第七巻尾崎士郎訳

「倶利迦羅落し」


 礪並山(となみやま)をはさんで向い合った源平両家の軍勢は、その間、僅か三町という近さに対陣しながら、一向に動き出す様子がなかった。

 源氏も進まず平家も進まず、源氏が、弓の精兵十五騎をくり出し、上矢の鏑を平家の軍に射こめば、平氏も又同じ十五騎で、十五の鏑を返すという有様である。

 源氏が三十騎出すと、平家方も三十騎、源氏が五十騎になると平家も五十騎、源氏方は、一時でも時をかせぐつもりだから、はやる将兵を戒めて、勝負をさせない。

 平家はこんな術策があろうとは夢にも知らず、便々と日の暮れるまで、このばかばかしい戦いを続けているのであった。

 やがて、いつかあたりも暗くなり、人の姿も定かには見えなくなった頃、北南より廻った搦手(からめて)の一万余騎が、頃は良しと倶利迦羅堂前あたりで落ち合い、箙(えびら)をたたき、一度にどっと鬨(とき)の声を挙げた。

 これに呼応するかのように大手の木曽勢は、日宮林の六千余騎、松長の柳原、茱萸(ぐみ)の木林の一万余騎も、どっとばかりに鬨の声をあげる。

 四万余騎の鬨の声は夕闇の山々にこだまして、頭上に何千という雷が落ちかかってきたようであった。

 慌てたのは平家である。

 「確かに囲りは岩石ばかりで、搦手から廻られるとは思ってもみなかったのに」
 とぼやいたところで後の祭であった。

 腹背に敵をうけて逆上した平家の軍勢は「帰せ、帰せ」という、必死の下知も何のその、もう命が惜しいばかりに、後へ後へと泡を喰くらって逃げ出した。

 ところが後は、名にし負う倶利迦羅谷が、闇黒の口をあけて待っている。

 先の者が見えなくなるから「ああ後に道があるのだな」とばかり我もわれもと、谷を目がけて押寄せるので、さしもに深い谷も、みるみるうちに人と馬とで埋まってしまった。

 子は親の後を追い、弟は兄を追い、それぞれ家来は主の後を追うというわけで、あらかたの平家の軍勢が、倶利迦羅谷の露と消えた。

 中には、平家方の主だった侍、上総大夫判官忠綱、飛騨大夫判官景高、といった一騎当千のつわものも含まれていた。

 大力を以て聞えた瀬尾太郎兼康(せのおのたろうかねやす)は生捕となり、火打城で裏切った平泉寺の斎明威儀師も捕われ、即刻、首をはねられた。

 七万余騎の平家勢の内、辛うじて助かったのが二千余騎、大将維盛、通盛も、漸く命だけは助かって加賀国に逃げのびた。

 翌くる日義仲の許へ、奥州藤原秀衡のところから、駿馬を二頭送ってきた。

 一頭は黒白毛、一頭は連銭葦毛(れんせんあしげ)の、二頭とも稀に見る逸物であった。

 義仲はそれに銀の鞍をつけ、白山神社へ戦勝のお礼のために神馬として遣わした。

 倶利迦羅谷の一戦に大勝を博した木曽勢は志保山に廻った。

 十郎蔵人の軍の様子が気にかかったので、四万余騎の中から、特にえりすぐった二万余騎を引連れて、援軍にかけつけた。

 途中、氷見(ひみ)の湊(みなと)を通るとき、折からの満潮で、深さが見当つかない。

 義仲は、咄嗟(とっさ)に鞍を置いた馬十匹を水の中に追い放った。

 水は丁度、鞍と端(はし)と[#「鞍と端と」はママ]すれすれのところで、無事に十匹は向う岸に着いた。これをみてすかさず、二万余騎が、どっと湊を渡った。

 志保に着いてみると、行家の軍は、平家側に散々てこずって疲労の色が甚しく、一息入れているところだった。

 義仲は、新手二万余騎を、平家の三万余騎の真中へ突入させた。

 先刻からの激戦で疲れている上に、新手の敵の勢に、平家方も、ここを先途と戦ったがついに空しく攻め落された。

 平家の大将、三河守知度は、この戦で討死した。

****


底本:「現代語訳 平家物語(下)」岩波現代文庫、岩波書店
   2015(平成27)年4月16日第1刷発行
※著者名は、本来は「尾※(「山+竒」、第3水準1-47-82)士郎」です。
入力:砂場清隆
校正:みきた
2022年6月26日作成
青空文庫作成ファイル:
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