2006年11月16日は、2006年のボージョレ・ヌーヴォーの日である。
私にとって待ちに待っていた日であるが、私以外にもワイン好きの人も、そして何でも新しもの好きの人にとっても、待ちに待っていた日では無かろうか。
フランスのボージョレ地方の新酒のワインを飲むことが解禁される日である。
ムッシュソーマより、ボージョレ・ヌーヴォーの新酒会に今年も呼ばれた。 私よりも一回り上の方から、声を掛けられ、呼ばれることは有り難いことである。
11月16日は木曜日であったため、午後1時より横浜青葉台の桐蔭横浜大学法学部で講義をしなければならない。
多くない受講学生に不動産鑑定評価の価格の種類と不動産鑑定評価方式の種類についての講義をし終えて、新酒会の会場である皇居際にあるパレスホテルの地下1階のレストランに急いだ。
今年のボージョレ・ヌーヴォーの味はどんなものであろうかと思いを巡らしていた。
赤い色したワインがワイングラスに注がれた。
グラスを目の高さまで挙げ、色をグラスを通して眺めた。
グラスを口近くに運び、香りを楽しんだ。
ゆっくりと杯を傾け、ワインを口に注ぎ込んだ。
舌で味を確かめ、ワインを喉に流し込んだ。
私はワイン通では無いが、今年のボージョレ・ヌーヴォーの味は少し苦みがあった。
今やボージョレ・ヌーヴォーは、コンビニエンスストアのセブンイレブンやローソンが、幟を立てて売り込んでいる。
日本経済新聞の平成18年(2006年)11月14日の紙面には、ホテルのボージョレ・ヌーヴォーの宿泊プランを紹介する。
東京港区にある「パークホテル東京」は、ヌーヴォー飲み放題のイベント付で、一泊21,500円〜36,000円の宿泊プランをたてた。売れ行きは順調という記事を載せていた。
東京のホテルで、いよいよボージョレ・ヌーヴォーの宿泊プランを考え出してきたのである。今迄はレストランでの飲酒の楽しみ方であったが、ホテル宿泊という利用方法まで出現してきた。
地方のホテルも、宿泊人減、宴会数の減と嘆いているのみでなく、ボージョレ・ヌーヴォー飲み放題のパーティ、宿泊プランを考え、顧客獲得の営業を積極的に行ってはどうだろうか。結婚の披露宴として、土日しか使わない大ホール、小ホールを遊ばしているのはもったいない。
ムッシュソーマは、挨拶で話した。
丁度20年前にボージョレ地方のワイン醸造の農園の組合の方々が、日本人は金持ちだからボージョレの新酒を買ってくれるだろうと、売り込みに来たが、どこの会社も、人も相手にしてくれず買ってくれなかった。
明日は帰ると言ってホテルで悲嘆に暮れていた話を聞いた相馬計二氏は、「儀を見て為さざるは勇無きなり」と、売り込みに持ってきたボージョレ・ヌーヴォーを全部買い上げたのである。
まさに、日本男児ここにありである。
フランス人は「ムッシュ」の敬称で感謝し、村一番のボージョレ・ヌーヴォーをムッシュソーマに毎年送ってくれるようになった。
もし20年前、ムッシュソーマの男気ある行動がなかったら、現在の日本中に広まっているボージョレ・ヌーヴォーは無かったのである。
ボージョレ・ヌーヴォーを語るとき、ムッシュソーマを抜きにしては語れられない。
新酒会の宴もたけなわの頃、ムッシュソーマが師と仰ぐ、来賓の挨拶がある。
元最高裁判所の裁判官の香川保一氏である。裁判官から法務省に出向し、秘書課長、官房長、民事局長を経て、名古屋高裁長官から最高裁裁判官になられた人と聞く。
千葉浦安市がヨットの不法係留に頭を悩まし、不法係留するヨットの杭を撤去した事件で、「撤去は適法では無いが、航行安全上の緊急措置と認められる」として、「航行安全上の緊急措置」という考え方を打ち出し、浦安市側の主張を認めた判決を出した人とも聞く。
ムッシュソーマの法務省時代の上司で有り、若かりし頃、随分と迷惑を掛けた人とムッシュは言う。
香川元最高裁裁判官の今年の話は、アナトール・フランスの言葉を引用した「精神の老成」であった。
ボージョレ・ヌーヴォーに関する鑑定コラムの記事は、下記にもあります。
鑑定コラム248)ボージョレ・ヌーヴォー 2005年
鑑定コラム485)「今年のボージョレ・ヌーヴォーは甘かった(2008年11月)」