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33)知識企業の価格は売上高の18%

 KPMGコンサルティング(アメリカの大手コンサルティング会社)は、日本の朝日監査法人系のコンサルティング会社である朝日アーサーアンダーセンを買収し、KPMGの日本法人と統合する。(日経2002.6.14)

 買収金額は約25億円(1970万米ドル)で、統合会社の年間売上高は200億円になる見通しという。
 従業員は朝日アーサーアンダーセンが700人、KPMGが300人であり、1000人の従業員となる。

 買収される朝日アーサーアンダーセンの年間売上高は不明であるが、従業員一人当たりの売上高は同じと考えると、頭割りで計算すれば、
       200億円×(700人÷1000人)=140億円
と推定される。

 投下資本に対する売上高倍率は、
       140億円÷25億円=5.6倍
である。

 知能・知識を売り物とする企業組織の価格の売上高に対する割合は、
       1/5.6 = 0.178 ≒ 0.18
18%である。
 
   この割合を使って売上高3000万円の不動産鑑定事務所の市場価格を求めれば、
       3000万円×0.18=540万円
である。

 540万円が、3000万円の売上高のある不動産鑑定事務所の市場価格と言うことになる。
 この事務所の資本金が1000万円であったならば、その不動産鑑定事務所の価値は、資本金を大幅に割り込んでいることになる。

 不動産鑑定の試算価格の種類風に云えば、
    資本金の1000万円が積算価格
    売上対比の540万円が収益価格
で、収益価格が現在の市場価格と言うことになろうか。

 売上規模が異なり、またコンサルティング業と不動産鑑定業とは少し業種を異にしており、数値の適用に批判があるかもしれないが、知識業種と見れば無関係とは言い切れない。
 
   一方、この知識企業の価格は売上高の18%と求められた数値は、営業所や工場を多く持つ企業の「本社ビルはどうして建てることが出来るのか」という命題を解くヒントを与えてくれるかもしれない。

 丸の内や新宿など、都心に大企業の本社として一棟のビルが使用されているのが多い。その本社ビルでは生産も小売りも行っていない。収益が得られていない。にも関わらず、何故存在出来るのであろうか。

 それは地方の工場、営業所の利益によって賄われているからということになるが、それだけでの理論では根拠薄弱で理論説明にはならない。

 「本社ビルはどうして建てることが出来るのか」の命題を解くヒントを一つ考えたい。

 地方に工場、営業所を持つ売上高5000億円の企業が、東京に本社ビルを持っているとする。
 売上高5000億円の企業の本社の適正人員がどれだけか、私は知らない。
 とりあえず400人とする。
 一人の本社社員の人件費を年間600万円とする。これの5倍を本社費用とする。
     600万円×400人×5=1,200,000万円
 120億円が本社費用である。

 売上高の2.4%(120億円÷5000億円=0.024)である。

 企業の本社というのは、企業の経営管理、企画運営等を行う知能・知識集団である。
 このことはコンサルティング会社と同じ知識企業の一つと考えられうる。
 120億円の本社費用相当を、本社即ち知識企業の売上高と見なすことが出来る。

 知識企業の売上高の18%が市場価格であるから、
   120億円×0.18=21.6億円≒22億円
が本社の市場価格である。

 この22億円のうち半分が人材の価値と考え、残り半分が本社の不動産に属する価値と考える。

 不動産配分利益は、
     22億円×1/2=11億円
である。

 これが本社機能集団のうちの不動産に配分される利益であり、それは即ち年間賃料と言うことになる。

 この不動産配分利益即ち賃料を8%の粗利回り(グロス利回り)で還元すれば、
     11億円÷0.08=137.5億円≒138億円
である。

 本社機能集団の所在するビルは一棟で138億円と求められる。2つのビルに分散していれば
    138億円÷2=69億円
である。
 69億円のビルを2棟持つことが出来るということである。

 以上が都心で多くの林立する「本社ビルが何故存在することが出来るか」の命題に対する一つの仮説理論の説明である。

 甚だ荒っぽく詳細な裏付けのデータ分析が必要であるが、「命題」を解く一つのヒントになるのではなかろうか。


 上記に関連した鑑定コラムに、下記のがあります。

  鑑定コラム119)都心に本社ビルを何故建てることが出来るのか

  鑑定コラム670)「都心に本社ビルを何故建てることが出来るのか」という講義

  鑑定コラム1254)「桐蔭横浜大学は祝日でも講義がある」

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